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優しい始末屋時々貸します

作者: 風連
掲載日:2016/01/29

どんな時にも、終わりはくるだろう。

来てから、手もつけられず、ましてや入る事も出来ないって、なに。

ひとりっ子で、マザーコンプレックスが、ネクタイ締めてると、成人式に親戚の叔母さんから言われた我が父親は、三年たっても、あの家を片付ける事が出来ないでいた。

で、この俺が行く事になった。

住めってさ。

一筆書いもらった。

《何を捨てても文句を言いません。》って、のをね。

お婆ちゃんは、気丈な人で、なんでもやってたし、好奇心の塊だった。

何せ、奥の六畳には、グランドピアノが、置いてある。

広いんだか狭いんだか、わかんない、部屋だが、弾いてるのは見た事ない。

白いカバーが、かかっていて、その下に漫画を持って潜り込むのが、子供の時は楽しかった。

二階の八畳を寝室にした。

下で寝起きしたら、二階が魔窟になっちゃいそうだったからだ。

半年かけて、お婆ちゃんの諸々を片付けた。

短歌をやっていて、短冊がごっそり出てきたが、デジカメのメモリー行き。

水彩画や絵手紙なる物も、同時進行でメモリーに入れたが、出さない絵手紙ってなんの意味あったんだろう。

律儀に本物の葉書に描いてあったから、郵便局で、書き損じ葉書として、手数料払って、新しいのに変えてもらった。

俺だと、死ぬまで有りそうな量になってたから、封書用切手なんかに、拡散させた。

陶芸教室の作品も、グランドピアノのカバーの上で、デジカメに。

かなりの量を一遍に撮れて凄いし、白いカバーがレフ板の役割を果たしてくれた。

ここに残ってるのは、親戚中で貰い手のつかなかった物ばかりなので、大鉈を振ってやった。

紙類は、ゴミに出し、陶芸教室の皿やらカップは、近くの幼稚園のバザー行きに。

下の六畳がようやく空いた。

台所用品は、いらないのを少しづつ、捨てて行ったので、なんとかサッパリした。

応接間の長椅子やゴツいテーブルなんかは、アウターなんかと、リサイクル屋に。

革ジャンなんかがあって、意外と売れる。

昔の人らしく、椅子にカバーをしていたので、下から出てきたゴブラン織りは、擦り切れたりもしていなかった。

型落ちしてるテレビも、台ごと売った。

で、今流行りのリノベーションにやっと手が出せる。

台所と襖で区切られていたので、まず戸を取っ払い、ピアノの部屋に建具を引っ越し。

絨毯も、売ったから、下の畳が出てる。

ここに、ウッドカーペットを引くと、フローリングの部屋ができた。

周りが砂壁なので、縦縞の布を貼った。

まあ、鋲で留めただけだが、結構大変だった。

天井には、昭和な和室用の傘付き照明。

安いけど、見た目は鉄に見える軽いシャンデリアを下げた。

まあ普通の今時のテレビと台を入れる。

その横に、暖炉風の温風ヒーターを置いた。

これが、炎が燃えてる様に見えるパネル付きだった。

鉄の薪ストーブ風で、中々良いのだ。

俺の好きなアウトドア専門店の長テーブルと

、長椅子を買う。

来客用にも一人がけを三脚。

木と金属の組み合わせで、俺好み。

ステンレスのカップや見た目より軽い今時の陶器の皿なんかを買った。

水やりは、ヤバそうなので、作り物の観葉植物を幾つか。

これが、いい味を出してる。

丸まって、長い筒に入っていた、古い映画のポスターを額に入れて、飾ってみた。

群像と多頭建ての馬車が描かれている。

中々、躍動感もあり、気に入った。

台所は、三畳しかなかったので、とにかく余分な物は、売るか捨てて、歩く所を確保。

ゴミ箱兼用のワゴンを、入れた。

何せ、分別しなきゃいけない時代だから、区分けしてゴミを入れられないと、ヤバそうだったからだ。

ガス台を取っ払いIHコンロにしてから、オーブン兼レンジも入れて、電気のアンペアを上げた。

使うたび、ブレーカーが落ちてちゃ、ドライヤーも使えないしね。

間接照明のスタンドも買ったし。

冷蔵庫の白って、なんなんだか。

思い切って、レンガ風壁紙を貼った。

ついでに、汚れの目だった流しの扉にも貼って、脇の壁には、軽くて貼れる多色の煉瓦で、統一感を出してみた。

やりすぎると、重くなるので、加減した。

もちろん、床や柱も地味に磨いたし、そっちの方が重労働だった。

劇的に変えたのは、玄関周りだ。

草刈りなんてしたくないから、雑草対策に重点を置いた。

伸びすぎた木は、丸坊主だ。

ガラスの引き戸ととび石は、好きだから、これは生かさないとね。

ガラス戸は内側に、ステンドグラス風のシールをし、とび石の周りは草が生えないけど水は通す、特殊な砂で固めた。

その上に、白い小砂利まいた。

その辺に転がっていたプランターをひっくり返して、適当に並べ、ソーラータイプの庭園灯を組み合わせた。

デカすぎて持て余していた壺も雨が入らないように蓋をして、重しに石を乗せて、並べてみた。

花なんかなくても、庭って出来るんだなと、自己満足。

まあ、玄関周り以外は、徐々にやっていこう。

あの縁側をウッドデッキにするのは、まだ先送りした。

玄関周りが落ち着くと、隣の竹山たけやまさんが、やってきた。

興味あるみたいだ。

「ボンの仕事は良いな〜。」

子供の時のあだ名のボンと、呼ぶのは今では、竹山さんだけだった。

俺も褒められて、調子に乗った。

居間と台所も見せてやった。

お婆ちゃんの短歌がテレビのモニターで見られる事に、驚いていたが、歳からいって、そういう世代なんだろう。

そこから、とんでもない事が起きた。

お片づけの依頼だ。

竹山さんちを、助けてやったのだ。

竹山さんは、30年分の俳句がとんでもない事になっていた。

俳句の同人誌、山ほどを見た事があるかな。

本当に山だったのだ。

竹山さんのだけをスキャンして、ひとまとめにして、コピーしたのをバイダーにまとめたのと、メモリーでテレビで見られようにしてあげた。

お礼を断ったら、商品券を押し付けられた。

もうそれ以上、断れなかったから、ありがたく受け取って、中身にビックリ。

フェンス付きフラワースタンドを、プレゼントして、奥さんのガーデニングの花々を、飾れる様にしてあげた。

ついでに、それを玄関脇に設置して、横の壁の年季の入った部分を隠す様に設置してあげたら、玄関周りが、華やかになった。

スチール製なので、水やりにも強いし、花との相性も良かったから、奥さんからは、手作りのお菓子を頂いちゃった。

懐かしい味のガトーショコラ。

寄せ植えの多肉植物の鉢もくれたのだが、これが良かった。

あまり陽の当たらない玄関脇でも、平気だったし、相性が良かったのか、伸びるし、花まで咲いた。

それから竹山さんが、仲立ちして近所のお年寄りのお手伝いをする事になった。

竹山さんは、ふざけて、俺の事を童話の靴屋を助ける小人になぞって、うりこんでいたのだ。

つまり、草むしりや買物代行なんてのじゃなくて、趣味の後片付け専門の便利屋さんになっていた。

友人でパソコンにも強い本田ほんだ裕司ゆうじも巻き込み、仕事に精を出すと、大学をいつの間にか卒業していた。

今日は、マンション住まいの中川なかがわさんちの、居間の横の和室を洋室に変えて、そこに電動ベッドを奥の部屋から移動した。

これは、重くて大きくて、年寄りには、動かせられない代物だ。

中川さんは、生活の場をコンパクトにまとめたかったのだ。

やっぱり、和歌やらがあって、それのまとめも、やってあげた。

料金は竹山さんが言っておいてくれるので、ちゃんと頂ける。

俺は他ではしないが、竹山さんちでは、あれこれアドバイスして、庭なんかをサッパリさせてやったりしている。

大抵、伸びすぎた庭木が、こんもり森になっているからだ。

丸刈りにして、光と風を通してやるだけで、新しい庭になったみたいだ。

しなびていた花が、蘇りもしたしな。

俺は、儲けで、小さな会社の社長兼小間使になった。

社員は本田1人で、俺より態度がデカい。

俺たちには、仕事だが、竹山さんは、なんだか未だに靴屋の小人扱いで、お爺ちゃんお婆ちゃん達に、時々貸してやってるんだ、なんて言ってる。

「ボンは、昔から優しかったからな。」

って、言われると、照れくさい。

ホームページを立ち上げて、仕事も順調だし、好きな事して暮らしが立ってる。

有限会社『BON』は、お年寄りの味方だ。

時々、漫画を持ってグランドピアノの下に入って、まったりすると、お婆ちゃんが探しに来る気がするけどね。

今は、ここまで。

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