ライオット
「上手く逃げ切れてたようだな」
あの狼もどきは追ってきてはいない様だ。狩りをする動物は長く走れないと聞いた事があったが、助かった。小一時間ほど休憩をはさんで、体力もそこそこ戻ってきた。それにしても左腕が痛い。跡とか残るのかね?とりあえずは移動だ。
「ギルドに行かなきゃどうしようもねーから、とりあえず街に向かおう...」
森を出るには、直進をすれば出られる筈だ。
〜2時間後くらい〜
「あ〜、やっと出れた゛〜」
森を出ると、そこには辺りいっぱいに草原が広がっていた...
「街まだかよ〜ふかふかのベッドで寝たい」
これである。悠は面倒くさがり屋の豆腐メンタルなのだ。だが、運が良いことに遠くに馬車が走っているのを見つけた。
「おーーーい!止まってくれ〜〜」
声が届いたのか、馬車が止まったのでそこまで歩いて行く。
(テンプレでいうとここで可愛い子と出会うイベントが起こるんだけど、どうなるのかな)
「おい坊主こんな所で何やってんだ?」
(oh...おっさんでした)
「いや〜実はですね気がついたらあの森の中に居たんですよ。自分でも何が何やら...それに狼みたいな動物に襲われちゃって」
「襲われたぁ?っておい、坊主腕が血まみれじゃないか!」
「はい、幸運な事に大きな血管が損傷してなかったおかげで助かりました」
「おい、これを使え」
と、言って手渡されたのは緑色の液体の入った瓶だった。
「あの、これは...?」
「知らねぇのか?ポーションだよ。高級品だが知らなねぇってこたぁねーだろ?」
「記憶を失ってしまっているので...」
「お、気がついたら森の中にいたんだっけな?なるほど、悪い事を聞いちまったな」
「いえ、あまり気にしないでください。こちらこそポーションを頂いてしまって申し訳ないです。」
「おう、気にすんな。俺は商人なんだが、納入より少し多く仕入れちゃってよ。それよりぐびっと一気に飲んじまえ」
「ありがとうございます」
蓋をあけてみると、お茶の様な匂いがした。言われた通りに一気に飲み干す。
「ぐはっっつ、ぅうぇぇぇぇええええ」
(なんだこれは!人間の飲む物じゃないぞ!一言で言うなら、とてつもなくまずい。詳しく説明すると、ブラックコーヒーよりも苦く、レモン以上の酸味、砂糖のような甘み、海水のような塩味、そして辛い、旨味どこ行った...この全てが自己主張をしているにも関わらず、不味さの観点から見ればどれもが生かされている!!これを作り出した奴は間違いなく天才だ。...才能の無駄遣いだ。)
「がはははは!悪い悪い、これすっごく不味いんだわ」
「そういう事は、先に言ってくれると嬉しかったのですが...」
その時違和感を感じ、怪我をした腕を見てみると血は付いてるもののある筈の傷が無かった。
「どうだ?まっずいけど効果は凄いだろ?」
「はい...驚きました」
「とりあえず乗るか?リードルフっつう街へ行くんだが、見た所記憶喪失で色んな事を忘れてんだろ?教えてやるよ」
「え、いいんですか?」
「ああ、良いってことよ!丁度暇だったからよ、話し相手な欲しかったんだ」
「では、よろしくお願いします。」
「今更ながら俺はライオットって言うんだ。よろしくな」
「私は...」
(馬車が移動手段らしいから、読み物とかでよくある中世ヨーロッパ風なのかね。それなら名前も変えた方が良いな)
「私はユーリです。よろしくお願いします」
まだ街には着きません笑
次話では世界観の説明になります。その次にはギルドに登録されると思います。