人狼シリーズ~雪葬
原案 とある狼好き様です。
第四次世界大戦で彼女の心は傷ついていた。
体も下半身をうしなった、アンドロイド。
名前は、MI-KI。
プロトタイプだが、戦場へ送り込まれた。
そこで、彼女は下半身を失くし、東京都市の国立病院に運ばれた。
医師は言った。
「もう戦えません。それよりも、戦いは終わってます。」
季節は冬だった。
静かに雪が降っていた。
「そう。」
白い、モビルスーツ姿のMI-KIはそう言い、
「終わったのね、戦争。」
がらっ
病室の扉が開かれ、シンと明日香が姿を現した。
「MI-KI。」
シンは言った。「僕らとくらさないか?」
MI-KIは戸惑った。
プログラムにインストールされていない。
「MI-KI。」
明日香が言った。「今、理性を失った人狼を<狩る>のに人手がいるのよ。」
明日香は横須賀基地のリーダーだった。
「どうして、私を?」
白いシーツの上で上半身を起こした、MI-KIが怪訝そうに尋ねる。
すると、シンが、
「なんか似てるんだよ、俺と君。」
「似てる?」
「そう。」
「そう。」
暫く病室に沈黙が訪れ、
「それでは、私たちはこれで。」
そう告げ、医師と看護婦は席をはずした。
「似てるんだよ。」
放射能の影響で、頭が狼、体が人間となったシンが言う。「俺が戦いで記憶を失って、人狼にもなってしまって、かろうじて、明日香のいる、横須賀基地まで辿りついたときのように。」
「・・・・・・」
MI-KIはうな垂れ、「私はもう戦えないし、下半身を失ったわ。」
「だから」
緑の制服姿の明日香が言った。「もう、一人で戦わないで、皆で戦いましょ。」
「・・・・・・。」
MI-KIはゆっくりと顔をあげた。そして、
「それが、私の今度の任務なら。」
「任務じゃないよ。」
シンが言った。「君の意思に任せるよ。」
「それなら」
MI-KIは答えた。「人間の言うことには、私たちアンドロイドは従わなければならないから、そうする。」
「MI-KI---」
明日香とシンは顔を見合わせ、それから、
「前言却下。」
明日香が言った。
「何。」
MI-KIが尋ねる。
「貴女はもう、戦わなくていいわ。」
「どうして。」
「これは人間と人狼の事件だから。」
しんしんと、雪は降り積もる。
そして、ゆっくり、とMI-KIは顔を明日香に向けた。
「どうして。」
「貴女の使命は第四次世界大戦で終了。」
明日香は断言し、「後は私たちとのんびり暮しましょ。」
微笑む明日香。
「---それが」
MI-KIは言った。「命令なら。」
「命令じゃないよ。」
シンは言った。「君の思うとおりにすればいい。」
「・・・・・・プログラミングされていない。」
ぽつり、とMI-KIが答える。
「そう。」
シン。
「そう。」
MI-KI。
ややあってから、彼女は窓の外の雪を見た。
それから、
「お願いがあるの。」
MI-KIは言った。
「何?」
明日香。
「私をあの雪の中へ葬って。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
明日香とシンは言葉を失った。
アンドロイドが自分の<意思>を言うとは---
「戦争が終わったのなら、私は眠りたいわ。」
ため息をつく、MI-KI。
ややあって、
「そうなの?」
シンが尋ねる。
「うん。」
MI-KIは答えた。「疲れたわ。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
第四次世界大戦の余波はあちこちに広がっていると、シンと明日香は気づいた。
「---それが望みなら。」
シンは重い表情で答えた。
「ええ。」
MI-KIが答える。「今度こそ、やっと眠れるわ。」
「MI-KI---」
明日香が答える。「---いいわ、そうする。」
「ありがとう。」
MI-KIは初めて笑った。
ショートの銀髪を揺らし、
「もう、戦わなくていいところへ葬って。」
それが。
MI-KIが望んだ最期の意志。
そして。
MI-KIは一人、外を見つめ、
「雪がきれい。」
そう呟いた。
それが、MI-KIの最期の台詞だった---
それから、MI-KIはどうなったて?
雪の降る日にバッテリーを切り、雪の中に葬られた。
これで。
彼女の本当の雪葬が終わった。
久しぶりのノベル。超短編ですけど、感想をお待ちしております
(__)ペコリ