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女王の拳

 殴られた直後、エレベータのドアが開いた。


 居住フロアに向かう次の階の人間が、その不穏な光景に乗り込もうとした足を止める。


「おかまいなくー」


 おーイテ。


 ケイは、血の味のする唇を指で拭いながら、新しい乗り手にフォローした。単なる痴話ゲンカですよ、的な空気を演出しようとしたのだ。


「あ……いえ……」


 女性兵士数人が、足を引っ込めた。ジョウと彼を見比べる目が、あきらかにドン引きだ。


 シューッと、ドアが閉まる。


 結局、エレベータは二人きりのままだった。


 顔の売れた撃墜女王が、エレベータで男を殴っていた!


 明日の噂のネタを、提供してしまったかもしれない。


 せめて、色っぽい尾ヒレがつくといいのだが。


 そんなことを、ケイが真面目に考えていると。


「ばっ…かじゃねぇのか!?」


 居住エリアまで、もう少し。


 沈黙を引き裂いて、ジョウが吐き捨てるように言った。


 どうやら、噂の心配ではないようだ。きっと、彼のことが理解できないのだろう。


 うーん。


 キツイ一発に、酔いも吹っ飛ばしたケイは、苦笑にならないように笑ってみた。


「男なんて、バカな生きものさ。気に入った女を口説けるなら、パンチくらい安いもんだ」


 彼は、自分に正直に生きるようにしている。明日死ぬ心配をするくらいなら、いい女と朝を迎えて死んでやる、くらい思っていた。


「だから、あたしを口説いたって、自慢にもならないぜ」


 書記官でも、口説いてろよ。


 殴ったことで、怒りの波は引いたのか、ジョウは今度はブルーが入ってきたようだ。情緒不安定でない前線の兵士などいない。


 たとえそれが、撃墜女王であったとしても。


「ばかだなぁ……いい女なんだから、自慢に決まってるだろ?」


 ブルーにつけこんで、唇の一つでも奪おうとしたら――もう一発、ブン殴られた。


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