装備創造
目を覚ますとそこは見渡す限り木で覆い尽くされていた。
「ここが異世界か。ここだけ見ると地球と変わらないな。でも、神様はどうやら注文通りの場所に送ってくれたらしいな。」
ざっと周りを見渡しても何の気配もない。これなら十分に能力の練習ができそうだ。
「よし。まずは何か作ってみよう。でも、どうやって作るんだ?」
すると頭の中に能力の使い方が浮かんできた。なるほど、使おうとするとやり方がわかるってこういうことか。
「どうやら作りたいもののイメージをすればいいらしいな。まずは剣でも出してみるか。」
そう言って頭の中に剣をイメージしてみる。形はよくRPGの初期装備であるような、飾り気のない貧相な剣だ。最初だからこんなもんでいいだろう。
「武器創造、剣。能力の付与は無し。」
そうすると目の前にイメージした通りの剣が出てきた。感動的だな。
早速持ってみると、案外軽い。イメージの時に俺が持てるようにっていうのも考えたからだろう。
「よし。次は魔法だな。ぶっちゃけこれがしたくてこの能力を選んだもんだからな。他の部分はおまけみたいなもんだし。」
あっちにいた頃はトリップものとか西洋が舞台のRPGが大好きだったからな。ケータイでネット小説読みまくったもんだ。授業中にも読んでたもんだから、周りからひそかに『空想ジャンキー』とか言われてディスられてた…いいんだ、別に。もうあっちには戻れないし、本当に自分の力を手に入れたんだから…。
「ま、そんなことより魔法だよ、魔法。何がいいかな?俺の初魔法だ。慎重に決めよう。」
とはいえ、周りが木ばっかりだからあまりでかいのは無理っぽいな。定番のファイヤーボールなんてもってのほかだろう。来ていきなりここの森を焼き払う気はない。
「じゃあここは無難に風魔法といきますか。
魔法創造、ウインドカッター。」
唱えると目の前に風が圧縮された感じがして、そのまま一気に前方に行ったかと思うと目の前の木々が5本薙ぎ倒された。今度はもっと規模を大きくしてみよう。
さっきより少し強力に、と念じながら同じくウインドカッターを放つ。すると今度は10本薙ぎ倒された。これだけ木が倒れるとちょっとした地震が起きた。これぐらいでまずはいいだろう。
「そうだ、探査魔法の類も作っておかないと。気配を感じるなんてできないし。」
これは大事だ。何せ平和な日本から来たからな。命のやり取りなんてしたことない。敵性生物なんかを事前に見つけられる魔法は必要だ。いつも発動できるように作らないと。
それと、いちいち口頭で言わないと発動できないようだとだめだろうな。中世ヨーロッパくらいの世界観だったら戦争とかもあるだろうし、来る前に神様に聞いてみたらこの世界には魔物がいるらしいし、そうでなくても口に出さないとなにも作れないっていうのは不便だ。
何も言わずにイメージだけでまた剣を作ってみる。さっき作った剣と比べても変わりはない。これなら大丈夫そうだ。
「つくづく便利だな、この能力。あ、鑑定みたいな魔法も欲しいな。こっちのことほとんど知らないもんな。」
探査魔法と鑑定魔法。この二つは戦うにしても、普通に生活するにしても便利だ。あっちで読みまくったトリップ小説でもこの魔法は地味に便利だったように思う。
そうと決まればさっそく作ってみよう。…できた。とりあえず探査魔法から使ってみて、半径100メートルくらいの範囲で動物や魔物を検索してみる。頭の中に範囲内の地図が浮かんできた。該当するものがあればその地図に反応があるように作ってある。今は何の反応がないので、本当に周りに生き物はいないのだろう。
鑑定魔法は、とりあえずさっき伐採した木についてた木の実に対して発動してみた。すると、
ポランの実
特徴:一般的な食用果実。たいていの気候や場所で育つため、世界各地で見られ、売買される。
毒性:無し
というようにステータスとも思える情報が脳裏に浮かんできた。試しにさっき俺が作った剣を見てみると、
ショートソード
材質:鉄
重さ:100g
攻撃力:15
耐久値:100%
特徴:平均的なショートソード。一般兵が持つような剣。
という結果になった。材質が鉄なのに重さが100gっていうのは俺が難なく振り回せるように軽くしたせいだろう。耐久値と攻撃力が見えるのがいいな。対人戦のときとか役に立ちそうだ。
次に俺を鑑定してみると、
木村俊樹
種族:人間
HP:100
MP:測定不能
という結果になった。MPが測定不能なのは能力を注文した時に回数制限なしでといったせいだろう。それにしてもほかに比べて表示される項目が少ない。特徴がでないっていうのは少し痛いな。もし交渉事とかになったら役に立ちそうだったのに。後で街とかに行ったとき、他の人も見てみるか。
「HPの値から考えるとあまり身体能力は強くなさそうだな。身体能力増加の魔法も作っておくか。もちろん常時発動で。」
身体能力向上の魔法、|身体強化≪フィジカルブースト≫を作って、自分にかけてみた。すると体が一気に軽くなり少し跳んでみると軽く10メートルほど跳ぶことができた。その状態のまま鑑定で自分をもう一度見てみると、
木村俊樹
種族:人間
HP:2500
MP:測定不能
付与魔法:身体強化
身体強化:付与した生物の身体能力を格段に上げる。HPも上昇する。常時発動型。
どうやら基本は種族とHP、MPだけだが、魔法が付与されてたりするとそれが分かるらしい。この分だとどこかの団体に所属していたらその所属までわかりそうだ。魔法の効果もわかるのもうれしいな。対処がしやすい。
「次はちゃんとした武器が必要だな。このショートソードでもいいけど、せっかく自分で何でも作れるんだからいいものを作りたいし。」
そうなるとやっぱり違和感がないのは剣だろうな。で、折角だから最強の剣を作ろう。魔剣や聖剣と比べても遜色がない、いや、それ以上の剣を。
「となるとまずは材質からだな。そうだな、やはり最強の金属と名高いオリハルコンだろ。持つ本数もそうだな、7本ぐらい作ろう。そしてそれら全てに違った能力を付けるのがいいな。」
本当なら、一本だけ持っていた方が楽だし、その一本にたくさんの能力を付ければいいと思うけどそこはロマンだ。周りから『あの7本の剣は!』とか言われたいんだ。
「これからの行動方針もはっきりさせとかないとな。これだけの力、無計画で使うにはリスキーすぎるし、行動原理をはっきりさせないと下手すれば討伐隊とか編制されるかもしれん。」
ま、そうなったらそうなったで面白そうだけどな。それよりも剣だ、剣。
「材質はオリハルコンで、絶対切断属性とかどうしようかな?全部につけるか?けど付ける能力次第ではいらなかったりするだろうしな。」
試しに絶対切断属性を持った、オリハルコン製の剣を一本作って、鑑定してみる。
ショートソード
材質:オリハルコン
重さ:100g
攻撃力:10000
耐久値:100%
特徴:オリハルコン製のショートソード。耐久値がほとんど減らない。刃こぼれもしない。
おかしい。絶対切断属性はどこにいった?オリハルコンで強い剣をイメージしたから、攻撃力ははんぱないし、耐久値もほとんど減らないらしいけど。もしかして特殊効果を付けるのは魔法の領域なのかな?
そう思って、どんな効果も付与できる魔法、付与を創造して、絶対切断属性をさっきの剣に付けてみると、
ショートソード
材質:オリハルコン
重さ:100g
攻撃力:10000
耐久値:100%
付与効果:絶対切断属性
特徴:オリハルコン製のショートソード。耐久値がほとんど減らない。刃こぼれもしない。
絶対切断属性:どんなものでも切り裂くことができる。
成功だ。付与するのはやっぱり魔法であってたな。きっとこの分だと攻撃力や耐久値も操れそうだ。
そうやっていろいろと実験していき、ついに7本の最強の剣を作り上げることに成功した。これだ
ザ・デストロイ
材質:オリハルコン
重さ:0g
攻撃力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:絶対破壊属性
特徴:7魔剣の一本。刃こぼれせず、壊れもしない。
絶対破壊属性:触れたものをすべて破壊する
ザ・アクセル
材質:オリハルコン
重さ:0g
攻撃力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:神速
特徴:7魔剣の一本。刃こぼれせず、壊れもしない。
神速:自身のスピードを音速にする。
ザ・ミミック
材質:オリハルコン
重さ:0g
攻撃力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:突然変異
特徴:7魔剣の一本。刃こぼれせず、壊れもしない。
突然変異:刀身を自由な形に変えることができる。
ザ・クリアー
材質:オリハルコン
重さ:0g
攻撃力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:透明
特徴:7魔剣の一本。刃こぼれせず、壊れもしない。
透明:刀身を透明にする。
ザ・チャーム
材質:オリハルコン
重さ:0g
攻撃力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:魅了
特徴:7魔剣の一本。刃こぼれせず、壊れもしない。
魅了:刀身を抜いたままにしておくことで周囲の生物に幻覚を見せる
ザ・バランサー
材質:オリハルコン
重さ:0g
攻撃力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:選択
特徴:7魔剣の一本。刃こぼれせず、壊れもしない。
選択:切りたいものだけを切り、それ以外の物は通過する。
ザ・シールド
材質:オリハルコン
重さ:0g
攻撃力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:盾
特徴:7魔剣の一本。刃こぼれせず、壊れもしない。
盾:周囲に膜状の盾を生成する。形や規模、強度は本人が決められる。
あと、防具も必要だと思って作っておいた。
奈落の軽鎧
材質:オリハルコン
重さ:0g
防御力:測定不能
耐久値:測定不能
付与効果:全属性魔法耐性 斬撃無効 打撃無効 衝撃無効 鎧内空調最適化
全属性魔法耐性:すべての属性の魔法攻撃を無効化する
斬撃無効:斬撃を無効化する
打撃無効:打撃を無効化する
衝撃無効:鎧を突き抜ける衝撃を無効化する
鎧内空調最適化:鎧内部の環境を人間が過ごしやすいようにする。たいていの環境に適応できる。
…ちょっと装備がチートすぎてしまった。この鎧着てれば戦場にそのままいても無傷で生き延びられるな。剣もえらいことになってしまった。ガチで一人で国が落とせるな、これ。ま、後悔してないけど。
ちなみに装備の色は全部黒だ。さすがにラインや装飾には赤とかが使われているが、基本的に黒がベースだ。中二病とか言うなよ。色はともかく、効果の方はガチで生き延びるためには必要なんだから。
「よし。装備も整ったし、人里に下りるか。」
こうして俺は人のいるところまで歩みを進め始めた。