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第5話 仲直りの準備

 双子の片割れの声がリリーには届かなかった。フィリーは涙を流して、肩を震わせている。マーロンは自分の一言で事態を招いたのだとオロオロしている。

 どうしよう…。リリーはコンテストに出ないって言ってた。あれが冗談で言ったとは、絶対に思えない。コンテストまであと少しなのに。2人ともあんなに頑張って練習してたのに。こんな仕打ちない! 二人を仲直りさせないと…。でも、どうやって?コンテストまで時間もあまりない。それまでにリリーを見つけて、フィリーと仲直りさせるのは難しい。 

 どうすればいい?あ、そうだ!あたしにだって、できることがあるわ。一か八かも知れないけど、こうするしか方法はない。

「フィリー、絶対にコンテストに出るのよ!」

 フィリーの肩をつかんで強く言った。フィリーは体をビクンとさせた。

「グス、もう無理だよぉ。リリーがいないと、ファイラの舞は踊れない…」

「大丈夫、ちゃんと仲直りすれば、リリーはきっと!!」

「そ、そうマロよ!リリー姫だって許してくれるマロ」

「で、でも、もうコンテストまで時間ないし、リリーは許してくれないよ…」

 声が震えている。諦めているみたいだ。

「とにかく、コンテストには絶対出るのよ。あんなに頑張ってたじゃない!」

「でも、僕…リリーの考えてることが分からないよぉ」

 涙目で訴える。

「そんなことない。あなたはリリーのことを1番分かってる。それにね、リリーもあなたのことを1番分かってるはず。そうでしょ?」

 フィリーに優しく問いかけた。フィリーはあたしの顔をじっと見つめて、

「ほんとだよね?じゃあ、リリーは…コンテストに出てくれるよね!?」

 フィリーは顔を上げて聞いてくる。あたしはそれにきっぱり答えた。

「ええ、絶対。あなたたちはラストだったわね??」

「う、うん。そうだけど…」

「じゃあ大丈夫。あたしが何とかする。コンテスト頑張りましょ!マーロン、付いてきて!!」

「わ、分かったマロ」

 マーロンの返事を聞くなり、あたしは走り出した。




 人通りの少ない所に来た。

「マレーヌ、どうするマロ?リリーはどこかに行っちゃったマロよ」

 立ち止まってマーロンが言った。

「あたしは最強魔術師マリア・ピアニコの子孫よ!魔歌だけがとりえじゃないのよ!」

 腰に手を当てて、鼻を鳴らす。マーロンはぽかんと口を開けている。やっとの事で口を開いた(既に開けてるから、声を出したかな…)。

「魔歌だけがとりえじゃないと言われても…。どうするマロ?」

「あのね~、“魔術”があるでしょ!」

「ほうほうマロ。それでマレーヌは魔術使えるマロか?」

 頷いたのはいいけど、その後の言葉にムッとした。

「使えるに決まってるでしょ!毎日毎日練習してたの」

「へぇ~、じゃあどんな魔術を使うマロ?」

 やっと本題にたどりついた。時間がないのに、もう!

「ビデオレターの魔術よ!名前はあたしが考えたの」

 我ながら、素晴らしいネーミングセンスよね♪

「この魔術はその名のとおり、ビデオレターみたいに映像を遠くの人に見てもらえるの!しかも、録った物を見るじゃなくて、生放送みたいにその時やってることを見れる高度な魔術なのよ!」

「すごいマロ!ビデオレターというよりテレビの生放送マロ!それで、どうやって2人を仲直りさせるマロ?」

 マーロンの軽いツッコミにドキッとしたけど、それを悟られないように言った。

「ふふーん、とにかく鏡を2つ用意してくれる?」

「え~っと、ちょっと待つマロ」

 とリュックの中を探し始めた。そして、2つ小さな手鏡を取り出した。

「OK、ちょうどいいわね。じゃあ、会場に戻るわよ!」

「えぇ、それだけマロ?仲直りはどうなるマロ?しかも、ここにくる必要あったマロ?」

 また、軽いツッコミを無視し、マーロンにウィンクをして宣言。

「まぁ、見てなさいって!それと、魔歌変更よ!」

 マーロンから手鏡を奪い取り、ドレスの右上のポケットに突っ込んだ。会場に直行!



「あぁ、マレーヌさぁん!」

 フィリーがパタパタと歩み寄ってきた。

「待たせちゃったね、ごめん」

 軽く謝って、受付に近寄っていく、

「すみません、110番のマリアンヌ・ピアニコですけど…」

「はい、110番ですね。お2人のエントリーでしたね。どうぞ、バッジです。必ずつけて、出場してくださいね。時間まで、会場周辺でお待ちください」

 受付の人からバッジを貰い、マーロンとフィリーの所に戻った。マーロンにバッジを渡して、自分につける。

「マレーヌさん…、どうなったんですか?」

「え~っと、とりあえずあたしの番まで待ってて」

「えぇ、リリーはいないんですか?」

 困惑状態のフィリー。マーロンが、

「大丈夫マロ。マレーヌに作戦があるらしいマロ。オイラも知らないけど…」

 しぼった声で言った。あたしは自身ありげに、

「心配しないで、りりーはきっと来るはず。あたしを信じて、ね?」

 微笑んでみせた。

「う、うん」

 半信半疑な返事だったけど、フィリーは信じてくれた。


「さぁーー、始まりました~、不死鳥パレード最大のイベント、ファイアー・ワン・コンテスト!」

《わぁーーーー》

 大歓声に包まれて、コンテストの幕が開いた。コンテスト前はバラバラだった人たちが、会場に集合して一体となっている。

「すごい盛り上がりね」

 隣で見ているマーロンに話しかけた。

「そうマロね。マレーヌ、本当にできるマロ?」

 不安げな答えが返ってきた。

「大丈夫よ、魔歌変更はあたしが決めたんだから」

 そう、魔歌変更をして練習したのはわずか数十分。どんなメロディーか鼻歌で教えて、1度合わしただけだった。

「違うマロ。フィリー王子達の事マロ。本当にできるマロか?」

 マーロンがフィリーを見ながら言った。フィリーはステージから離れた椅子に座っってボーっとしている。あたしは本音を言った。

「絶対にできるって訳じゃないわ。そこで、魔歌が大切になるの。でもね、正直言って、魔歌が上手くいくか分からない。今回の魔歌は初めて歌うから自信ないのよね~」

 マーロンが反論しそうだったので、すかさず、

「大丈夫だってば。言ったでしょ、あたしはマリアの子孫なの。魔歌は得意中の得意よ。今までたっくさん練習してきたわけだし!」

 と笑顔で言った。マーロンはあきれたのか、感心したのか分からないけど、黙ってしまった。あたしは出番までゆっくり観覧する事にした。

 コンテストは老若男女、初出場や常連出場者など、色々な人がいた。ジャンルも様々で、歌にダンスにお笑いに得意芸にと、みんな思い思いに披露していた。集まった人々は心から楽しんでいるようだった。マーロンもすっかり楽しんでいるようでほっとした。でも、フィリーは周りを見渡して、ため息をつくの繰り返しだった。早くあたしの出番にならないかな…。早くしないと、フィリーまで出たくないって言い出すかも…。

「マレーヌ、もうそろそろ控え室に行くマロ」

 マーロンに声をかけられたので、足を運ばせた。控え室前で足を止めた。

「おっと、忘れてた。マーロン裏回るわよ!急いで」

 ササッと裏に回った。回ったのは、魔術を使う為だ。ポケットから2枚の手鏡を取り出した。マーロンに手鏡を2枚とも渡して、魔術ノートを左下のポケットから取り出し、ぱらぱらめくった。魔術ノートには今まで習った魔術や効果、準備物、呪文をびっしり書いている。

「いくわよ…。――真実を撮る鏡となれ!」

 片方の鏡を指さした。すると、鏡に向かって黄色の光が飛び出した。

「こっちはっと…。――真実を映し出す鏡となれ!」

 もう片方の鏡にも同じことが起こった。でも、光はオレンジ色だった。

「黄色のほう貸して」

 マーロンから黄色の光を受けた鏡を貰って、あたしの顔を映して見せた。すると…。

「わぁ、マレーヌの顔が映ったマロ~!」

 マーロンから驚きの声が漏れた。あたしは少し微笑んだ。最後にもう1つ魔術をかけなくちゃ。

「んじゃ、マーロンが持ってる鏡をリリーに届けるわよ」

 深呼吸して、魔術ノートを見なくてもできる魔術を唱えた。

「―――風よ、品を使者へと届けよ!」

 フワッと風が吹いたかと思うと、マーロンが持っている鏡が浮き、西の方向へと飛んでいった。これでリリーの元に届くわね。

「さっ、控え室で待つわよ~」

「えぇ?分かったマロ…」


 控え室で20分ほど待っっていると、出番になり、呼び出された。

「マーロン、ギターは出来る所だけでいいから」

 こそっと声をかけた。

「大丈夫マロ。マレーヌにしっかり合わせて、優勝狙うマロ!」

 マーロンが拳をグッと握った。やる気満々みたい。あたしも負けてらんない!!



 優勝目指して!双子の仲直りの為!あたしは魔歌を歌ってみんなに笑顔、元気、感動を届けるの!!



 

 いかがでしたでしょうか?



 感想などいただけたら光栄です!!




 夏休みも後2日と迫りましたね。


 私は今日、宿題が終わりました。。。ぎりぎりセーフです。


 みなさんは楽しい夏休みが過ごせたでしょうか??



 新学期に入ると、更新率が落ちるかもしれませんが頑張っていきます!



 最後まで読んでいただきありがとうございましたペコ




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