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第4話 ケンカにケンカ


 不死鳥パレード当日です!!


 何が起こるか分からない、ドキドキの幕開けです。



 感想お待ちしております~~


 どうぞごゆっくり♪

               ~不死鳥パレード 当日~

 「Ah~、Ah~」

 ボイトレ(ボイストレーニング)ルームで今、あたしは魔歌の練習に取り掛かった。まずは、発声練習をやっているけど…。起きたのが8時で焦りまくった。ただでさえ、時間が無いから7時に起きようと思ってたのに…。急いで朝食を済ませ、タンクトップとミニスカートというラフな格好で練習を始めた。

 コンテストは4時から中央ステージである。中央ステージは中央広場にあるから、そのまま中央ステージと名づけられている。中央広場は普段、人々の憩いの場や市場としても使われているらしい。

 そんなところで、パレードが行われるのだから、すごい騒ぎになるだろう。また、中央ステージでは、コンテストの前にも色々なことをするらしい。だから、2時には練習を切り上げて、屋台を見て回ったり中央ステージで行われることを見ておこうと思う。こんな体験初めてだから、めいいっぱい楽しまなくちゃね!

「よしっ。発声練習はこんなもんでいいか」

「マレーヌ、オイラも一緒に出てもいいマロか?」

 マーロンが突然切り出してきた。

「へ?マーロンも一緒に歌うの?ハハハ、無理でしょ~」

 あたしはマーロンが歌っている姿を想像して言った。しかし、マーロンがモジモジしてるから、あたしはもう一度(今度は真剣に)聞き返した。

「マーロン、あなたにはちょっと無理じゃない?一緒に歌うのは…。それに全く練習してないのに…」

「ち、違うマロ。オイラが歌うなんてとんでもない」

 マーロンが慌てて言った。そして、続けた。

「オイラは魔歌に合わせて演奏するマロ」

「え?演奏って、何使うの?」

 すると、マーロンが愛用のリュックから小さなギターを取り出した。

「これマロ!このギターは妖精界フェアリーワールドのギターなんだマロ」

 なぜか、自慢げに言ってるんだけど…。ズバッというけど、あまり自慢する所ではない。

「オイラ、暇さえあればいつも弾いてたマロ。オイラ、妖精界フェアリーワールドでも結構有名なんだマロ。上手いって評判マロ!それに、マレーヌの魔歌はいつも聞いてるから、上手くできる自身あるマロ!!」

 とまた自慢口調。でも、そんなに言うから、上手なのかな?

「ちゃんと、魔歌に合わせて弾けるのね?へましないのよね?練習だって、全然してないのよ?あたしも、マーロンも…」

 マーロンに確認する。当の本人は余裕にギターを弾いていた。

 “ジャララン”

「任せるマロ!さぁ、さっさと練習始めるマロ~」

「もぅ、マーロン、ちゃんと聞いて。あたしにとってはこんなこと初めてなんだよ!?マーロンは妖精界フェアリーワールドでやったことあるのかもしれないけど、あたしは…」

「ごめんマロ…。そうマロよね、マレーヌは人前で、しかも誰が見てるのかわからない中で、歌うマロね」

 あたしが強く言い過ぎたせいで、マーロンがしょぼんとした。しかし弱々しいけど、でもはっきりした口調で語り始めた。

「オイラは、マレーヌの力になりたいマロ!オイラは何もできないお供じゃないマロ。マレーヌの中ではただのお供って言う感覚だったかもしれないけど、オイラはマレーヌの特別なお供になりたいマロ。家族や兄弟みたいに支えてあげられるお供になりたいマロ」

 マーロンはそんな風に思っていたんだ。あたしは、マーロンをただのお供って目線で見ていたのかもしれない。彼の言葉で今、そう気付かされた。マーロンは涙が出そうになるのを堪えながら、

「オイラ、いつかマレーヌの魔歌にオイラのギターを合わせるために頑張ってきたマロ。オイラは決して軽い気持ちでコンテストに出ようと言ったんじゃないマロ」

「マーロン、ありがと。それからあたし…ごめんなさい。マーロンはずっとあたしのそばで支えていてくれたもんね。」

 マーロンの頬を一筋の涙が落ちる。あたしもいつの間にか涙を流していた。

「あれ?涙が…、えへへ。マーロン、一緒にコンテスト出よう!でもって、優勝しよ!あたしとマーロンの素敵なハーモニーで泣かせちゃいましょ!!」

そして、2人合わせて笑った。




「いらっしゃ~い」 「これください」 「きゃ、こぼしちゃった」

 色々な声が聞こえる。四方から聞こえる声は、どれも喜びや楽しさの声だった。

 あたしたちは練習をきりあげて会場に来た。あたしとマーロンはかなり息ピッタリで意外にも早く練習を終えることが出来た。

「マーロン、このパレードすごく楽しいパレードみたいね」

「み~んな楽しそうマロ。マレーヌ、オイラも何か食べたいマロ」

 とマーロンが辺りをキョロキョロ見渡している。

「はいはい。じゃあ、あの『火の王国名物・ピリ辛ポテト』食べよっかな~」

「オイラが買って来るマロ~!」

 とちゃっかりあたしの財布を持って『ピリ辛ポテト』を買いに行った。

(もう、マーロンったら。とりあえず、座るところ見つけに行こ~っと)

 探してみると、誰も居ない席があった。行こうとしたその時、

「お嬢さん、かわいいですね」

 え?かわいい?まさかナンパ!?くるっと後ろを振り返ると、黒いローブを着た女性が立っていた。

「パレード限定であなたみたいな可愛い娘にコレ、配ってるの」

 持っていたかごから取り出したのは、

「香水ですか?」

 小さなビンにはいった黒い液。黒といっても、透明な黒ね。

「はい。炎を燃やした後に出てくる灰の成分と特殊なハーブを混ぜ込んだ、香水です。無料で配布しております。さぁ、どうぞ」

「ありがとうございます」

 あたしの両手の上にチョコンとのった香水。中の液体が太陽の光を受けて、キラッと反射する。顔を上げると、女性はもう居なくなっていた。はや!背伸びして、見てみるけど、人が多すぎて分からなかった。

 まぁ、いいか。あっと、席とらなくちゃ!急いでさっき見つけた、席に向かって走り出す。

 “どんっ”

「きゃっ!」

 誰かにぶつかってしまった。

「すいません、だいじょうぶですか?」

 ぶつかり声をかけられたのは、(これまた)白いローブを着た女性。こんな日にローブって暑いでしょ!!

「いえ大丈夫です。こちらこそ、すいません…。あ、香水が…」

 返事をしたときに、自分の横に割れたビンが転がっているのに気付いた。ビンは無残にもバラバラになり、液体がその周りに広がっている。鼻にかかるのは独特の強めの香り。ハーブにしてはきつい香り。頭がボォッとしてくる。

「ごめんなさい。」

 小さな声で謝る女性。その声に我に返った。女性は慌てて、ビンのかけらを拾おうとする。

「あぁ、大丈夫ですよ。危ないし…」

 あたしが落ち着いて言った。しかし、女性は細く白い指で丁寧にビンのかけらを拾い集めた。そして、こぼれた液体の上で手をふると、液体はすっかりなくなってしまった。周りに広がっていたかおりもすーっと消えていった。

 今のは、魔術だろう。そこまでしなくてもいいと思うけど…。

「本当にごめんなさい。お詫びといったらあれなんですけど…」

 すっと魔術をかけた方の手を差し出して、あたしの左手の中に何かを入れる。そのまま、すくっと立ち上がり一礼して、走り去っていった。あらら、行っちゃった。あたしのほうも、悪かったのになぁ。 あたしも立ち上がり、ほこりをはらい、左手を広げる。左手に収まっていたのは、真っ白いハーブだった。

「マレーヌ、遅くなったマロ~。ん、どうしたマロ?」

 とマーロンがピリ辛ポテトを持って走っていや、飛んできた。

「えぇと、なんでもない。遅かったわね」

 平静を装い、ポケットにハーブを入れた。

「だって、すごい人気だったマロよ~」

「名物だったみたいだしね。とりあえず食べましょ」

 幸いなことに、席は空いたままだった。

「う~ん、いい香りマロ~」

 とマーロンは一本手にとってしげしげと見る。あたしは手に取り、ヒョイッと口に放り込む。その名のとおりピリッとした辛味があった。この味は癖になりそうだわ~。マーロンも気に入ってどんどん食べている。

「あら、そんなに食意地を張ってるのはマレーヌ姫に、お供のマーロンかしら?」

 後ろでからかうような声がした。声の主は…

「リリー!フィリーも!どうしてここに?」

 黒いマントに身を包んでいるリリーとフィリー。不思議に思ったけど、フィリーに先を越された。

「街を一周してきたから、休憩しに来たんだ」

 小声でぼそぼそっと行った。

「大変だったわよ、ホント。ったくぅ、開会式だけ出ればいいかと思ったのに…」

 とリリーはブツブツ独り言を言い始めた。リリーとフィリーは開会式のときに、火の王国の代表者と一緒に“ファイラの舞”を踊っていた(開会式を実際に見たわけでなく、ボイトレルームのテレビ中継で見た)。2人とも真ん中の方で生き生きと踊っていて、凄くカッコ良かった。しかし、なぜかリリーの機嫌が悪いみたいだ。

「リリー、どうしちゃったの?」

 フィリーにこそっと耳打ちした。

「うぅ、実はね、舞をするのは開会式のときだけって言われてたんだ。だけど、主催者の人が街一周、代表者と一緒に踊って来いって言われて…。練習するつもりでいたのにって、リリー機嫌悪くしちゃったんだ」

 と説明してくれた。

「フィリー王子が怒らしたんじゃないマロね」

 マーロンがボソッと呟いた。もぅ、マーロンめ!フィリーが涙目にぃ~~。

「マーロン、ひどいよぉ~。僕のせいじゃないのにぃ」

 そんなフィリーにリリーが、

「フィリーめそめそしないの!あぁ~、もうイライラする!あんたはすぐにそうやって泣き出すんだから」

 鋭く言い放った。これ、ヤバイ雰囲気かも…。

「そんな、泣いてないよ。リリー…そんなに怒らないでよ!」

 フィリーが意外にも強く言った。

「いっつも怒ってばっかりで、もっと優しくしたっていいじゃないか!」

 今まで溜まっていた気持ちを吐き出すように言った。

「何なの!?怒らしてるのは誰よ!?いっつもあんたじゃない!」

 リリーも負けていない。言い争いが激しくなりそう。止めなくちゃやばい!!

「ちょっと、2人ともやめて!」

「もういいわ。あたし、あんたなんかコンテスト出ないから!」

「…い、いいよ!!ぼ、僕だってリリーとなんか…出ないもん!」

 あたしの止めも空しく、2人はそんなことを言い合う。リリーは本気で言ったらしい。でもフィリーは流れのままで言ったらしく、言った後にオロオロしている。

「ね、ねぇリリー、フィリー、もうちょっと考えない?今まで2人で頑張ってきたんでしょ?」

「そうマロ。こんな簡単に諦めるなんて、絶対駄目マロ…」

 あたしとマーロンが説得しようと試みた。しかし、

「フィリー、あんたには失望したわ」

 リリーがそう呟いた。フィリーはハッと顔を上げた。今にも涙が零れそう。

「…じゃあね」

 リリーの別れの言葉。そう言い残して、リリーは走り去って行った。

「リリー!待ってー!」

 叫ぶ弱弱しい声は届かなくて…。涙が地面に滲む。








 

 最後まで読んでいただきありがとうございましたペコリ

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