第1話 新境地と過去
ついに火の王国に到着!!
そしてマレーヌの過去も明らかに!?
ごゆっくりどうぞ♪
「ふぅ~、なんとか火の王国についたわね~」
「散々な目に遭ったマロ!!」
「本当!なんだったのかしら、あの変な人たちは!?」
なんで散々な目にあったかって言うと…
☆ ☆ ☆
まだ風の王国の領地にいた頃。街から離れた森の中。火の王国に行くにはこの森を通過しないといけない。そんな森での出来事。
「もうそろそろ、昼食にする?」
スクーターでゆっくり走っていたときにあたしは声を掛けた。
「ご飯マロ~~☆」
丁度いいところに切り株を見つけたのでそこで食事することにした。切り株に布を敷き、持ってきたパンやサンドイッチを広げた。バターの香ばしい香りが食欲をそそる。コップに水を注ぎ、
「「いただきま~す」」
と手を合わせ、手を伸ばしたとき、
「待て待て、待てーい!」
野太い男の声がした。声のしたほうを見ると、見るからに変な3人組が居た。
「お嬢ちゃ~ん、そのパンとサンドイッチオレらに全部ちょうだ~い」
がっしりした豚っ鼻の男が猫なで声で言った。待てと言ったのもこの男だろう。
「…あんたたち何か用?これから食事だから」
あたしは軽くあしらった。せっかく食べられると思ったのに!!
「あ?オレ様の名前は…」
「誰もあんたの名前なんか聞いてないわよ!」
勘違いな男だ。食と書かれたダサいTシャツは大きなお腹のせいでパッツパツ。
「いや、聞けよ。オレ様の名は、コッペ・ラハだ!」
黄色い長靴をダダンと踏み鳴らす。ポーズまでつけてる。そして両隣の二人が、
「おらはチョーウだ」
「おだはナノレスだ」
格好が同じ二人はきっと双子だろう。左右の泣きぼくろ以外顔は瓜二つ。二人とも黄緑と黄色の服を着ている。黄色の魔女帽をかぶって、可愛い感じもする。まぁ、変な3人組だってコトは変わりないけど。あたしは声に出して3人組の名前を言ってみた。
「…、コッペ・ラハにチョーウにナノレス?」
「コッペ・ラハって逆さに読むと『ハラペコ』マロ」
あたしは少し考えてパッとある言葉が浮かんだ。
「3人合わせると…『超ハラペコなのです』じゃん!!うける~、どんだけお腹空いてるの!!」
あたしとマーロンは吹き出してしまった。
「わ、笑うんじゃねぇ!いいからそれ全部よこせ!!」
「よこすだ!」 「よこすだ!」
ハラペコ3人組がじりじり近づいてくる。
「ちょっと近づかないでよ!あんた匂うのよ!」
ツンと鼻につく匂い。
「おらか?」
「違う!」
「おだか?」
「違う!」
「オレ!?」
「そうよ、あんたよ!!」
あたしは鼻栓をして顔をしかめる。マーロンなんか天狗みたいに鼻が長いから両手で覆い隠している。
「あんた、何日お風呂入ってないのよ!」
「え~と2ヶ月くれぇだな!」
自慢げに言うコッペ・ラハ。
「うげぇ。マーロン、やっちゃっていい?」
「問題ないマロ~」
気楽に言うマーロン。悪臭に顔をしかめているけど。
「よしっ、いくわよ!―――風よ、嵐のように吹き荒れ悪事を飛ばせ!」
”ゴォーーーーーー”
嵐のような風が吹きたて、周りの木々やあたしの服も髪も音を立てる。マーロンは食事の上に伏せて、お気に入りの麦わら帽子が飛ばないよう、両手で押さえている。ハラペコ3人組はとぼけた顔で辺りを見渡す。すると、フワリ。3人組の体は浮かび、風と共に飛ばされていった。最後に捨て台詞を残して…
「覚えてろよぉーーー!」
「「「ハラペコ、グーーーーーーー‐‐‐」」」
☆ ☆ ☆
こういう訳。ほんっと散々な目に遭った~。あいつらは一体何者だろう?変人なのは分かってるけど…。
「こんにちわ!身分証明書を出していただけますか?」
突然の声。ここは入国ゲートだった。他国に入るときは、入国ゲートを通って入国手続きをしなくちゃならない。じゃないと犯罪になるからね。手にしていた証明書を手渡す。メモをとりつつ、係員が質問を始める。
「風の王国からこられたのですね。ええと、マリアンヌ・ピアニコ様に、マーロン・D・ムーケ様ですね?」
「はい、そうです」
「おわ!ってことはあなた様は風の王家の者でしたか!?」
めちゃめちゃ驚いてるし…。
「そうですけど…」
「はっすみません。なんの御用事で?」
「んっと、なんていったらいいのかな?」
「魔歌探しの旅ってところマロ」
マーロンが補足する。係員は素早くパソコンを打ち込み」、
「そうですか。それではこちらの入国証を。紛失しないようにお願いいたします。後、こちらを」
渡されたのは入国証と何かのパンフレット。
「ありがとう。これは何ですか?」
「こちら、火の王国で年に1度開かれる、不死鳥パレードのパンフレットになります」
「へぇ~パレードとかあるんだ~」
係員がにこやかに頷く。
「では、お通り下さい。スクーターにお乗りの場合、速度には気をつけて下さい」
「は~い。行くわよ、マーロン」
「待ってマロ~」
胸を躍らせながらゲートを通った。
「へぇ~、ここが火の王国!素敵~」
そう、目の前に広がったのは赤とピンクの家並み。家の外壁は淡いピンク。屋根は真っ赤。道路は茶色というより、赤茶色。まさに『火』って感じ。行き交う人々は活気溢れている。車や馬車が列を成している。
「さぁ、火の城まで飛ばしていくわよ」
「スピードの出しすぎには注意って言われたばっかマロ!」
「わかってるって!」
☆ ☆ ☆
スクーターで走ること20分。赤を基調とした大きな城に着いた。
「風の城と同じの大きさね~」
「王様に挨拶しに行くマロ!」
「そうね。さっさとマリア・ピアニコの魔歌、探し出すわよ!!」
門の前まで来ると、門番に足止めされた。
「お前たち何者だ?」
「何のようでここに来た?」
槍を片手に遠させまいとする。面倒だけど、これが彼らの仕事だからね。
「あたし、風の王国から来ました。マリアンヌ・ピアニコです」
「お供のマーロン・D・ムーケマロ。王様に挨拶をしに来たマロ」
あたしたちが名前を名乗ると、顔色を変えて後ろでごにょごにょし始めた。
「…マリアンヌ・ピアニコって」
「…風の王家じゃねぇか?」
丸聞こえなんだけど…。そんなことも知らずに、前を向きさっきと違う態度で、
「「マリアンヌ様とお供様どうぞ」」
声をそろえて言った。
中に入って案内され、王室の大きなドアの前に立たされた。
「こちらに王様と王妃様がおられます。わたくしはこれで」
ゴクンと息を呑み、
「さぁ行くわよ…」
「マレーヌ、ドレスのチャックは閉めた方がいいマロ」
うんうんと頷き、アタフタとチャックを閉める。
「マレーヌ、焦り過ぎマロ。落ち着くマロ」
大きく深呼吸をし、ゆっくりドアを開ける。王室は鮮やかな赤茶色の大理石を敷き詰めた豪華な部屋だった。シャンデリアはなく、ランプを使用している。そう思えば、廊下・階段もランプやたいまつだった。火の王国だから火を使う方がいいのかな?
それはともかく、奥には横に広がる階段。1番上に玉座があって王様と王妃様が座っている。
「あたしはマリアンヌ・ピアニコと申します。こっちはお供のマーロンです」
「そうかそうか、ピアニコ…。風の王家のものではないか。いやぁ~遥々とようこそ!」
「マリアンヌさんって先日15歳になって誕生パーティを開かれたのよね。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
なんだかこの2人面白い。2人のペースで流されてる気がする…。自然と笑顔になるけど。
「うむぅ、マリアンヌ姫そなたどうして我が火の王国に?」
「あら、あなた知らないの?この子はこの世界の魔歌を探して旅しているのよ」
「ふむ、それは大変だの~」
息ピッタリだなこの2人。会話がどんどん進むもの。そしてあたしは本題にもっていくことにした。
「それで…、魔歌、ありますか?」
「魔歌かぁ、マリア・ピアニコの魔歌、うぅ~む何処にあるのだろう…うぅむ…」
「もしかしてないマロか?」
ずっと話に入れなかったマーロンが口を出した。王様がまたうめいて、
「んん、何処にあるのかわからぬのだ。かなり昔に納められた魔歌で、城に納められた訳ではないのだ。探すように命じるので、少しの間待って下さるか?数日掛かるかもしれぬから、部屋を手配させよう」
「分かりました…」
あたしはちょっとがっかりして返事をした。
「メイドー、この子に部屋まで案内してちょうだ~い」
王妃様が声をあげると、メイドが1人現れた。
「ご案内します。どうぞこちらへ」
「あっはい。お願いします」
あたしは微笑んでメイドの後に続いた。マーロンも慌ててついてくる。
部屋まで案内したメイドはこう言った。
「ここがマリアンヌ様のお部屋になります。お食事は時間になると、お届けしますね。何かありましたら、お部屋のお電話をお使いください。失礼します」
そのまま、仕事に戻っていった。あたしはズカズカと部屋に入り、ベッドに腰を下ろした。
「ふぅ~、やっと着いたと思ったのに、肝心の魔歌の居場所が分からないなんて…」
「まぁ、そんな簡単に見つかるわけないマロ。ほら、マレーヌ荷物マロ」
マーロンは気楽に言うと、自分の小さなリュックからあたしの荷物を詰め込んだキャリーバッグを取り出した。あたしはそれをベッドの横に置いた。
そして、ポケットから小型の機械を取り出した。これは通話機能、メール機能、カメラ機能、メモ機能など多種の機能がある機械だ。名前は『マイコン』(マイコンピューターというそのまんまの名前)。マイコンで何をしようかというと、
「風の王国に連絡しとくわね。」
あたしのマイコンはタッチ式のスライド型。最新型で高性能だから、すごく便利。あたしの生活にマイコンは必須だわ。アドレス帳を開いて、風の王国をタッチする。すると、発信中となってすぐに通話中の画面になった。
「もしもし?あたしマレーヌだけど…」
『マレーヌ様ですか!?リアですぅ。お久しぶりです!』
「リア?全然久しぶりじゃないわよ。まぁいいけど…。とりあえず火の王国についたわ。でも、魔歌はどこにあるかまだ分からないって」
『そうですかぁ。マリア・ピアニコ様の魔歌となるとそう簡単に見つかりませんよねぇ』
リアの声が耳に残る。なんだか体が浮かぶようなフワフワした声。リアって不思議だねぇ。
リアってきしゃな体してるのに意外としっかりしてて、みんなから好かれてるし。
お姫様みたいな外見してるし。
リアって名前はマリアから2文字取っただけだし。
なんだか違う意味で憧れる。ん?リア…マリア…マリアンヌ。あれぇ、すっごい名前が似てるんだけど!ややこしぃ。あたしの名前は、両親がマリアみたいな偉大な人になってほしいって願いがあるらしいけど…。
「ねぇリア?関係ないけどさ、リアの名前ってどういう意味でつけられたか知ってる?」
ふと、疑問が浮かんだので聞いてみた。リアとは長くおしゃべりをしていない。あたしの話し相手って限られてたからな…。昔はあんなだったから…って違う違う。
『どうしたんですか?急に』
「え?えっとリアってマリア・ピアニコと名前似てるじゃん?あたしもマリアにちなんでつけられたから、どうしてかな~って」
あたしは素っ頓狂な声を出してしまった。リアは気にせず、昔話のように語った。
『私が田舎住まいなのは知っていますよね。昔、私の村にマリア様が訪れたそうです。祖父母が幼いころに会ったようでして…。マリア様に憧れたんでしょうね。私の名前は祖父母がマリア様にちなんでつけられたらしいです』
リアの声はどことなくしんみりしていた。たぶん、祖父母はもう他界していたはずだ。ちょっと悲しい想いさせちゃったかな?
『マレーヌ様、どうされました?』
「ううん、ありがと。教えてくれて。とりあえず、お父様とお母様に伝えておいてね。よろしく。なんかあったら、また連絡するわ、バイバ~イ」
『かしこまりました。応援しております!!失礼します』
通話を終えた。リアの村にマリア・ピアニコが行ったんだ~。リアの住んでいた村は分からないけど、きっと幸せなところだったんだろうな。リアがあんな雰囲気だから、村の人も家族も周りの人々がいい人たちばかりなのかも。
「マレーヌ、どうだったマロ?」
「リアに伝えてもらったわ。ちょっと話もできたし」
「そうマロか。リアさんは昔からマレーヌと仲良かったマロね。なんだか、楽しそうに話してたマロ~」
「そう?まぁ、リアと話してると、体がフワフワ~ってなるのよ。不思議と眠くなってきたし…。マーロン、あたしちょっと寝るから…」
長旅の疲れがどっと眠気となって押し寄せてきた。マーロンの返事を聞かないうちに、寝息を立てた。
★ ★ ★
『ワーーイ』 『キャ~~』
どこからともなく、楽しそうな声が聞こえてきた。
「はれ~ここどこ?」
目をこすりながら、回りを確認する。ぼやけた視界に映ったのは、
(公園?)
あたしがいたのは小さな公園。しかも、見覚えのある公園。水色のブランコに緑色の滑り台、大中小の鉄棒、オレンジ色のジャングルジム。
(ここって…)
そう思った瞬間、1人の男の子がこっちに向かって走ってきた。ぶつかる!避ける暇もなく、男の子とぶつかった。と、思った。しかし、あたしの体を通り抜け、笑いながら走っていった。疑問に思ったあたしはすぐ、自分の体を見た。ちゃんと体はあるけど、透けてる!?パニックになり、辺りをキョロキョロ。鬼ごっこをしている子供たちの体は透けていない。
(どうして?)
もっとよく見ようと、ブランコをこいでいる1人の女の子を見た。え、あれって…。そんなわけないと思ったけれど、間違いない。その女の子は、紛れもなく“あたし”だ。6~7歳の“あたし”みたいだ。小さな“あたし”は鬼ごっこをしている子供達を羨ましそうに見つめている。
「あっ、思い出した」
ふとよみがえったのは寂しい記憶。今になってこんな記憶を思い出すなんて。2度と思い出したくなかったが、リアと話していた途中にふと脳裏をよぎったのだ。
そんなときに“あたし”がブランコから降りて鬼ごっこをしている子供達に歩み寄って言った。不安そうだけど、決心のついた眼差しだった。行っちゃ駄目!手を伸ばして叫んだが、届くはずがなかった。これはあたしの記憶。変える事などできるはずがなかった。
「ね、ねぇ…」
“あたし”が男の子に近づいて言った。
「わ、私も一緒に遊んでもいい?」
手を後ろでゴソゴソさせながら、勇気を振り絞って呟いた。その途端、楽しく遊んでいた子供達が、立ち止まって小さな“あたし”をじっと睨んできた。あたしも小さな“あたし”もびくっと体を震わせた。子供達はヒソヒソ話をしていやそうな目で睨んでいる。
目、目、目、め、め、メ…
怖い、こわい、こわい、こわイ、コワイ、コワイ、――--‐‐
“あたし”が声を掛けた男の子が口を開いた。
「お前は駄目だよ!母ちゃんが言ってたもん。お前に怪我させたら連れてかれるって」
小さな“あたし”は目にいっぱい涙を溜めている。それなのに子供達は容赦なく、”あたし”にきつい言葉を投げつけてくる。
「お前なんか、自分ちのメイドと一緒に遊んでればいいんだよ!」
「そんな高級な服着て、私たちに見せ付けてるんでしょ!」
「そうよ、そうよ。あんた、自分がお金持ちだからっていい気にならないでよ!」
きつい言葉に合わせて、「そうだ、そうだ」とか、「あっち行けよ」と言って“あたし”を傷つける。小さな“あたし”は体を震わせて涙を流している。
やめて、やめテ、ヤメテ、ヤメテ、ヤメテ、ヤメt――――ーー-‐
《お前なんか大嫌いだー!》
あたしの心に、小さな“あたし”の心にグサリと音を立てて突き刺さる。
ネェ、アタシ何カ悪イコトヲシタノ?ネェ、ドウシテ?
こんな悲しい過去があったなんて!!
と書きながら思いました…。。。
最後まで読んでいただきありがとうございましたm(;.;)m
次回もよろしくお願いします♪