表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/40

第11話 無理しないで



 大きなベッドに小人の彼が眠るのはどう見ても不釣合いだ。


 昨夜、あたしは彼を抱きかかえて泣き叫んだ。

 マーロンは死んだ。もう2度と話すことも笑うこともできない、そう思った。


 しかし、息をしていることに気がついた。


 真っ青な顔。すでに衰弱しきった体。それでも確かに呼吸をしていた。

 アイリスに連れられ、医者に見てもらった。衰弱しきっているが、心臓は規則的に動き、血液も全身に流れ、特に異常はないと言われた。しかし、


「これから何が起こるか予測がつきません。できるだけ、離れないように」

 

 不安は募る一方だった。


 もしかしたら回復するかもしれない。もしかしたらこのまま目を覚まさずに…死んでしまうかもしれない。


 


                       ☆ ☆ ☆



 すっかり明るくなった昼下がり。


 今日はストポの撮影を休み、何度も何度も昔の思い出を繰り返している。


「早く起きなさいよ?」


 度々マーロンに話しかけ、ずっと傍にいる。

 マーロンといたのは昨日の事なのに、何年も前のことのよう。


 穏やかな表情で眠るマーロン。もう死んでしまったのではないかと、何度も涙を堪えた。

 でも、ちゃんと空気を吸っている。心臓を鳴らしている。肺から全身に酸素を、心臓から全身に血液を循環させ、懸命に生きている。


 マーロンも水の王国であたしが倒れたとき、こんなに苦しい思いをしていたのかな?



                    ☆ ☆ ☆




 午後3時を告げる鐘が鳴る。マーロンを見つめながら、そっと口ずさむ。


『きれいな声ね』

「クレマチス…どうしたの?」

 開けっ放しのドアからクレマチスが入ってきた。ふわふわの体があたしの膝にのる。

『マーロンの様子は…?』

「ずっとこのまま…」

 あたしはじっとマーロンを見つめる。

「ねぇ、クレマチス。マーロンは目を覚ますの?起きて、もう1度笑ってくれる?」

『もう…そんなに弱気なら、マーロンだって起きないわよ?

 あなたが信じて待ってくれるから、マーロンは頑張るものよ』

「…そうだよね。マーロンは絶対に起きてくれる」

 しっぽをパタン、パタンと振るクレマチス。なぜか、安心感を抱かせてくれた。



 一時、黙ってマーロンを見守る。日差しが部屋の中に差し込み、暖かな空間を生み出す。

 小鳥のさえずりも微かに聞こえる。時が止まっているようにも感じる。


『マレーヌ、気分転換に外の空気でも吸ってきたらどう?』

 静かな沈黙を破り、クレマチスがすすめる。

 でも、そんな気分ではなく、マーロンを1人きりにしたくないと言ったら、

『私が付き添っておくから…。ずっと座ってて疲れたでしょ?無理しちゃだめよ。少しゆっくりしてきなさい、ね?』

 すごく迷ったが、クレマチスの言うとおりにした。

 


 1人で色々と考えたかったし、マーロンと少し離れて気を落ち着かせないと…。



                    ☆ ☆ ☆



 城の中を当てもなく彷徨い、結局外に出てきた。

 アイリスはストポの撮影で城にいない。双子や3つ子ちゃんたちにも出会わなかった。

 

 城の敷地内をため息混じりでぐるりとまわる。

 顔を上げると、ロイヤルガーデンの手前まで来ていた。昨日この辺りでモダンと遭って、マーロンはあんな目に…。


「…何してるの?」

 後ろから声がした。振り返ると、バジル君がじょうろを片手に持ちこちらに歩み出てきた。

「あ、うん、何かしてるわけじゃないけど…」

「ふーん」

 意外にもあっけない返事で、とりあえず頷いておいた。

 バジル君たちもマーロンが倒れたことは知っている。5人とも心配してくれてたし、さすがに深く聞いてくることはなかった。


「…これから水遣りに行くんだけど…」

 バジル君が気まずそうに切り出してきた。一度あたしを見て、じょうろに視線を落とす。

「え~っと、一緒に行ってもいいのかな…?」

 バジル君の様子からしてそんな感じだったので一応尋ねた。

 思ったとおり、バジル君はぎこちなく頷いて、スタスタと歩き出した。




「これ全部自分で育てたの?!すごいね~」

「うん、まぁ…」



 うぅ、会話が続かない。

 重い空気が続いたので話しかけてみた。けれど、いつも無口なバジル君だから簡単に続くわけもなかった。


 水やりをするバジル君の後をそのまま黙ってついて行く。

 花も当然あるけど、薬草がたくさんある。微かな香りに安心している自分がいた。



 何も話さずに誰かといるのも、いいものだなと思ったその時、


「ローズさんのことは知ってますか…?」

 とバジル君が水を汲みながら尋ねてきた。

 広いロイヤルガーデンには一定の距離に水汲み場があり、今のところで3つ目くらい。

 ずっと黙って水遣りをしてきた今、なぜこのような質問をしたのだろう。

「う、うん。バ、バジル君は知ってるの?」

 質問したのだから当然知っているだろうけど…。

「アイリス姉さんの姉」

 何の抵抗も感じず、さらりと答えるバジル君。

「…僕は知ってるんだ。アイリス姉さんとローズさんは、僕たちとは別の母さんから産まれたってこと」

「! 」

「他のみんなは知らない。僕だけに母さんが言った」

 淡々と、どことなく寂しそうに語る。そして、


「僕は深い事情を知りたいとは思わない。

 でも、その話を聞いてからアイリス姉の様子を時々、気をつけて見てた。

 アイリス姉はいつも明るくて、僕も含めてきょうだいみんな大好きなんだ…」


 じょうろに水が溜まり、バジル君が蛇口をひねり、水を止めた。


「だけど時々、ふと、どこか遠くを…悲しそうに見つめる。きっとローズさんのことを思ってるんだなって。ほかに思うことはあるだろうけど…。

 無理してるんだ、アイリス姉は。僕らに心配させたらいけないって。お姉さんがいなくなって、人に甘えちゃいけないって」


 あまりにもまっすぐ目を見て話すものだから、あたしも視線を外すことができなかった。


「大切な人に心配かけたくない気持ちは分かる。僕だってそうだから。

 だからこそ、甘えてほしい。こんな僕らだけど頼って欲しいんだ。まぁ、これはディルの受け売りでもあるけど…」

 と続けて、近くの植物に水をあげた。


「ふぅん。ディルになんて言われたの?」

 少しからかってみた。バジル君が水遣りを続けたまま、

「溜め込まないで、自分に話せ。頼ってくれていいんだぞって…」

 ぶっきらぼうに答えた。

「ディルはバジル君のことが大好きなんだね、きっと」

「…」

 あたしの言葉に、頬を染めて、顔をちょっぴり傾けた。


 しばしの沈黙。 

 

 そして、水遣りの手を止めたバジル君があたしの方に向き直る。


「マレーヌさんもだよ。無理しないで。もっとみんなを頼るべき」


 その瞳はなんの迷いもなく、ただ一点を見ている。

 ふいに涙がこぼれそうになった。でもこれは、バジル君のアイリスや家族への想い、あたしへの気遣いを知ってからで…。そっとお礼を言う。

「ありがとうね」

「…別に。笑ったほうがいいから」

 無表情のままぶっきらぼうに呟いた。


 笑ったほうがいいと言うバジル君。だけど…。


「ふふふ」

「…な!?」

 くすくすと笑い出したあたしに、バジル君が慌てた様子を見せる。

「吹き出すとこじゃないんだけど…」

「ごめんね。だってバジル君は笑ってなかったんだもん!!」

 目じりの涙をすくって答えた。こんなにあたふたするバジル君を見られるなんて、なかなかない。

「本当にありがとね、バジル君。ちょっと元気出たかも」

 微笑んでみせると、安心したのかいつもの無表情に戻った。

「…マレーヌさんが笑ってくれると僕も、みんなも嬉しいからさ…」

「ん?何か言った??」

 何かを呟いたようだが聞こえなかった。


「…アイリス姉が話したいことがあるから、外で待っててだって」

 と言い残すと急ぎ足でロイヤルガーデンから出て行った。


 教えてくれてもよかったのに…。

 ちょっぴり気になったけど、元気をもらえたんだし感謝だよね。

 




 少し訳あって、急いで更新します


 今年から受験生になり、真面目に更新率が今まで以上に下がると思います(´Д⊂


 しかし、高校なったら、文芸部入るつもりなのでたっぷり更新する予定ですw



 だから、それまではゆっくりめというか、かなり遅いですがよろしくお願いします(;゜Д゜)!




 愛しのマーロンが意識のない今、作者の私はかなり辛いっすw


 マレーヌも相当、言い表せないくらいの辛さや悲しさをしょっています。


 でも、抱え込んじゃダメだよって。


 バジル君が教えてくれたのです

 いいキャラしてません?←


 はい、すみません。あまりここで語るのもいけませぬな(´Д⊂



 


 最後まで読んでいただきありがとうございましたペコ


 指摘や感想、随時おまちしております|д゜)


 次回もよろしくお願いしますペコリ





 ちなみに次回は私の誕生日に更新です!!w

 これが急いだ理由なん((ry



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ