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第9話 再会は惜別へ


「アタシ、1人で寂しくなったらよくロイヤルガーデン(ここ)に来てたの。それであのバラを見たり、この花で昔の思い出に浸ってた」


 そっと淡紅色の花に触れた彼女。この花の他に、赤、青、黄、白など同じ種類の花が花壇に咲き誇れている。


「これはストケシア。花言葉は”追憶”。まぁ、記憶とか思い出ね」

「あぁ、”思い出花”とも言われる花マロね。他にも何種類かあって、その花に触れると昔の思い出を蘇らせるっていう?」

 マーロンがアイリスに尋ねた。

「そう。そして、色によって思い出す記憶が違うの。こんな淡い紅とか赤、それにピンク色の花なら、愛情のある記憶や思い出。黄色なら幸福、青なら哀切…」

 アイリスが淡々と説明する。思い出花か…。

「アタシね、今まで青色には触らなかった。触ったら、2人が死んじゃったときのことを思い出すから…。でも、悲しい過去から逃げちゃ駄目だって、今日…思ったの」

 そして、意を決した表情で青色のストケシアに手を伸ばす。


「っだめ!」

 ”パシンッ”


 あたしは無意識のうちにアイリスの手を叩いていた。

 そのまま、自分の指先がストケシアに触れる。ほんの一瞬の間、ストケシアの花びら1枚1枚にあたしの過去が映し出される。


「マレーヌ!」

 マーロンが素早くあたしの体をひく。そして、しりもちをついた。

「ちょっとマレーヌ!?大丈夫?」

 アイリスが慌てた様子で、また驚いた様子で駆け寄ってきた。


 あたしの過去を見られた?…見られたら、嫌われる?


「起き上がれる?ってか、どうして叩いたの?!びっくりしたじゃない!!」

 優しく手を差し伸べてくれるアイリスに、ほっと胸を撫で下ろした。

 見られていないみたい。あたしは率直に答えた。

「無理に悲しい過去を思い出すことないから…」

 あたしだったら絶対に思い出したくない。

 小さな声で訴えるしかなかった。アイリスはうなずいて、

「そだよね。過去を振りかえなくても、前向いて歩けばいっか♪」

 と言った。

 震える体をどうにもできなくて、とりあえずロイヤルガーデンを後にした。







                     ☆ ☆ ☆





 いじめられた思い出。1人の食事。泣き崩れていた。

 嫌な思い出だ。




 6つ並ぶロイヤルガーデンから戻る最中、ストケシアを触れてから昔の思い出が頭の中を駆け巡る。アイリスたちと話していても、そっけない返事しか返せない。


 心が握りつぶされてるみたいで苦しい。こんな気持ち、消し去りたいよ…!







「マレーヌ、お久しぶり。その顔最高♪」





 闇夜に木霊する冷淡な声。

 旅に出て香水を手渡した女性の声。土の国で、冷酷に魔術を唱え、あたしに再会を約束した声。


「あんたは…!」

 闇の中から、人影が現れる。ローブを羽織り、頭をすっぽり隠している。

「あらあら。どうして怒ってるの?もっと昔みたいに笑いなさいよ」

「え?」

 女性はけらけらと笑う。昔みたいにって、この人は一体何者なの?

「マレーヌ、この人誰?」

 アイリスがあたしに耳打ちする。しかし、言葉を返す余裕がない。

 あの声、もっと昔に聞いたことがある。


 いつ?誰の?何処で?

 

「怒り、憎悪、悲しみ、嫌悪…素敵な顔。バロック様の復活に貢献して、光栄よ。マレーヌ、もしかしてあなたが1番貢献してたりして♪」


 気味の悪い言葉も聞いたことのない名前も何のことだか分からない。

 女はくすくす蔑み笑う。もっと優しい笑い方が脳裏に浮かぶ。

 

「まぁ、今日はマーロン君に用があるからね…」

 その言葉にぞくっとし、マーロンを守るように前に出た。

「あんた、まさか…。分かった…!」

 緊迫感の中、女は声をあげて笑った。

「あはは!やっぱりばれてたんだぁ。別にいいけど?

 あたしの正体がばれたところで何するかは分からないなら…」


 脳裏を今の笑い声とある笑い声が行き来していく。違うと信じたい。

 知りたくないのに、真相を知ろうと勝手に言葉を紡ぎだす。


「黙って!それなら、何をするのか、教えてよっ!!






 モダン!!」




 あたしは女、否、モダンの言葉を遮って叫んだ。


 そう、この人は、黒いローブの女性は、あたしの魔術暦の先生だったモダン・S・プレッソである。

 3年間勉強をしに行ったはずの彼女がなぜここにいるのか?

 火、水の王国、土の国でなぜあんな卑劣な行為をしたのか?


 あたしの知ってるモダンは、あたしの憧れていたモダンはかっこよくて、優しかった。

 声を上げて笑ったりしない。上品に笑っていた。


 

 

 モダンを睨みつけていると、すっとローブを外す。

 つやのある漆黒の髪があらわになる。真っ白で顔色の悪い肌。額には…。


「っ!! 」

 体が硬直した。


 傷がある思った額には、大きな目玉が存在し、生々しくうごめいている。

 アイリスがクレマチスをきつく抱きしめ、後退りする。


「怖がる必要ないでしょ?」

 モダンは裂けんばかりに見開く目玉を、見せつけるかのように前髪をかきあげた。身もだえする血の色の目玉はあたしたちをしっかりと捕らえている。

 悲鳴も出せず、吐き気に襲われる。

「まぁ、今日はあなた達に用はないの。マーロン君、ちょっといい?」

 にっこり微笑んで、手招きするモダン。その姿は不気味で、体全身に鳥肌が立つ。

「オイラに何の用マロ?マレーヌたちを傷つけないのなら、そっちに行くマロ。!」

「マーロン?!」

 マーロンが身を挺して、モダンに交渉する。

「ん~、傷つけないけど、じっとしてもらえないと困る。だ・か・ら♪

 ―闇よ、汝の触手で悪漢を捕らえよ…」


 にやりとして呪文を唱える。モダンの髪が見る見るうちに伸びていく。あたしたちはとっさに身構える。

 しかし、それも遅く、全員締め上げられた。髪の毛が全身の自由を奪う。

「っ!! 」

 あたしたちはなす術もなく、ただただ意味もなくもがく。魔術を使いたいのに、魔力を引き出せない。


「あぁ、魔術は使えないでしょ?魔力をいただいてるから、あたしのこの髪の毛が♪」

 冷酷な微笑みを見せる彼女。魔力をいただいてる…この体から力が抜けていくような感じと魔術が使えない原因がわかった。

 そして、マーロンだけがモダンの元へ引き寄せられた。


「マーロンッ!!」

 声帯を破ってしまうほどの声で呼び止める。モダンはそれを見て、嘲笑う。


「みんなを離すマロ!!」

「大丈夫、傷つけたりしないわ。あなたが大人しくしてくれればいいの」

 マーロンの要求を歌うような口調でやんわり断った。

「オイラが言うとおりにしたら、みんなを解放するマロか?」

 マーロンが低い声で再度要求した。

「そうするって言ってるでしょ。おしゃべりの好きなお口ね?

 静かにしないとあなたの大切なマレーヌを絞め殺しちゃうわよ」

 モダンが今までにない低く抑揚のない声で言葉を紡ぐ。


 その瞬間、あたしに巻きつく髪が急にきつくなる。


「あぁぁぁぁぁっ!!」


 骨が砕け散りそう。内臓が押しつぶされる。

 容赦のない締め上げに恐怖の色が増し、あたしの口からは叫び声しか出てこない。


「!? マレーヌ!!やめるマロォ!!」

 マーロンが喚く。すると、ほんの少し締め上げが緩くなった。でも、この後何かあれば、また締め上げる気でいるつもりだ。

「大人しくしててね。…それじゃあ、この劇薬を飲んでくれる?」

 友達に美味しいジュースを勧めるように、モダンがローブの中から小瓶を取り出した。

 あたしの親指サイズくらいの小瓶。月明かりを受けて、怪しく光る謎の液体。


「マーロンだめよ!あんた死んじゃうわ!!」

 アイリスが必死に制止する。続けてあたしも、

「あたしはどうなってもいい。だからやめて…!」

 と叫んだ。だって、あの液体を飲んだらどうなるかなんて予想できるのだから。

 それなのに、彼は髪の隙間から腕を伸ばし、小瓶を受け取る。


「これを飲めば、マレーヌたちを解放するって約束するマロか?」

「えぇ。約束は絶対に破らないわ。

 あたしはあなたがそれを飲んでくれれば他はどうでもいいの」

 軽い口調でマーロンに呟いた。マーロンは黙って死の劇薬が入った小瓶を見つめる。


 あたしは締め上げる髪に抵抗を続ける。モダンの言葉を聞き、力が入らないのに、それでももがき続ける。

 一時の時間を置き、モダンがマーロンの代わりにコルクをそっと抜く。



「オイラが死んでも、オイラはマレーヌのお供マロ。

 マレーヌのお供になれて、本当に幸せだったマロ。もっと…ずっとマレーヌと居たかったマロ。


 でも、

 大好きな主人の為なら、死ぬことなんて全然怖くないマロ。


 これからもずっと大好きマロよ、マレーヌ?」



 一筋の涙がキャラメル色の肌を伝う…。


「いや、いや、いや…」



 涙が止まらない。あの薬を飲んだら、マーロンがいなくなる。

 涙が止まらない。もう2度とマーロンと会えなくなる。

 涙が止まらない。マーロンと一緒に笑い合えない。涙が、涙が…。



 小さな妖精が小瓶に口をつける。黒い液体があたしのお供の喉に流れ込む。

 死の劇薬が大好きな大切なマーロンの体に…。


 小瓶が小さな小さな手から滑り落ちる。全身の力が抜け、モダンの髪から体がするりと落ちる。

 穏やかな表情があたしの理性を崩していく。


 甲高い声が夜の闇をつんざく。体に巻きついていた髪が弱弱しくほどける。

 もう体力も気力もないのに、走る。涙が視界をぼかす。


 見えないよ!!お願い、見せてよ!?あたしのお供を…!!


 モダンの姿は既にない。目の前に横たわるのは青ざめた肌のお供の姿。


 どうして?どうしてなの?

 どうしてあたしを守ってこんなことになっちゃったの?






「マーーーロン!!」








 すみません。ほんとすみません。。。


 まず言っておきます(T△T)

 全然更新できません。。。これからもだと思います。。。


 それでも凍結は絶対にさせませんので!!






 花の章、第9話ですが・・・



 行かないでぇ、、、マーロン!!


 ずっと置いていたこの話・・・。できればもっと早く更新したかったです。

 真面目にモダンとかどうでもいいです!←



 マーロン大好きだよぉぉぉぉ!!


 今思い返してみると、水の章の9話もマーロンの話だなぁと…。

 悲しい話しかしてないっ!?






 今日はこれだけにしておきます。。。


 あとがきgdgdでしたが

 最後まで読んでいただきありがとうございましたペコリ

 

 次回もよろしくお願いしますペコペコ




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