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第8話 アイリスのバラ


 あけましておめでとうございます!!←遅いかな?w



 新年、第一発目になります~☆




 冬休みの間はいろいろあって更新できませんでした。


 これから先もちょっと難しくなるかなーっと思います(汗)



 それでもちょこっとずつでも更新しますので!!




 今年もよろしくお願いします。




 どうぞごゆっくり♪




 期待を胸にある部屋に足を踏み入れた。


「あら、来てくれてありがとう。さぁ、アイリス、マリアンヌ姫、お供のお2人も座って?」

 真ん中のベッドで体を起こしている王妃様が柔らかく微笑んだ。

「お姉ちゃんおかえりなさい!!」

 ライムちゃんが部屋に入ってきたアイリスに飛びついた。アイリスは快く迎いいれ、ライムちゃんの水色の髪を撫でてあげた。あたしは、手招きするディルの隣に座った。



 今日のイメチェン大作戦は見事大成功。犬猿の仲だったアイリスとモミが和解。モデル、編集者、スタッフの団結力が深まったような気がする。

 そして、今日の撮影は無事終了。


 花の城に帰ってくると、王妃様の体調が良くなり、部屋に訪ねて欲しいといわれたので、今ちょうど部屋に来たところ。

 王妃様から、今まで謎だった花の魔歌のいいつたえを聞くことができるらしい。だから、あたしは落ち着いているようで実は、興奮気味なのであった。

 今まで色々なこと(本当に色々なこと。口に出せないようなことなど)があって、魔歌のことなんてすっかり忘れていた。だから、言い伝えの内容が気になって気になって仕方がなかった。



「王妃様、体調はもう大丈夫ですか?って、そりゃ元気にならないと呼び出しませんよね」

「ふふ、もう元気いっぱいよ。心配かけてごめんなさいね?

 ちゃんといいつたえの内容も思い出したし、みんないい?」

 あたしが声を掛けると、王妃様は本当に元気よく答えてくれ、本題に入る用意をした。

「…いいですけど。…なぜ、僕達も呼び出したんですか?」

 とバジル君。てっきり自分達で来たのかと思った。

「この言い伝えでは、あなた達の力が必要だからよ?」

 王妃様が温かく笑顔を向けると、バジル君は納得したようだ。

「マジか!?俺達は救世主ってことか!!」

 お調子者のジョナサンが目を輝かせる。王妃様は笑顔のまま、

「そうよ。あなたたちがマリアンヌ姫を手助けをするのよ!!」

 と言った。ジョナサンは「おぉ」と息を呑み、興奮した。

「はぁ、ジョナサンって何でこうも単純なんだろうね?」

 ネクターがぼそっと呟いた。ディルが人差し指を口にやり、「しっ!」と言った。

「いいのいいの。こうしないと、ジョナサン話聞けないはずだからっ!」

 苦笑い気味のディルであった。



「じゃあ、いいつたえを教えるわね。よく聞いておきなさい?


 花の魔歌手に入れたくば、歌姫に五つの贈り物を集め捧げよ。

 一つ、黄金に輝く禁断の果実

 二つ、聖なる夜の飾り木

 三つ、7つ葉のシャムロック

 四つ、独創的な神々の美酒

 五つ、溢れるほどの愛の花


 五つ全てで歌姫が微笑むだろう…」



「…」


 みんな、静まり返る。



「っと、その…さっき出てきたやつを歌姫にあげるって事か?」

 ジョナサンが声に出して言ってみる。しかし、

「…みんな分かってるし、そのまんま」

 バジル君がジョナサンに痛恨の一撃を喰らわせた。

「まぁまぁ。まず、みんな分からないから、1つずつ考えてみよう?」

 ディルがなだめて、いいつたえの解釈が始まった。


「一つ目の黄金に輝く禁断の果実は?」

 ディルがみんなに問う。すぐに王妃様が、

「禁断の果実はりんごのことです。旧約聖書でみられるわ」

 と説明した。そこからあたしが、

「じゃあ、黄金のりんごってこと?黄金のりんごなんて聞いたことないけど…」

 と推測し、無難に感想を言ってみた。金ぴかのりんごなんて見たことない。想像していると、

「黄金のりんごなら聞いたことあるぜ」

 ジョナサンが勢いよく手を挙げた。そして、なぜか声を潜めて語り始めた。

「フルーツタウンで何年かに一度、金色のりんごがなるんだって!ここ数年は必ず一個はなってるっていうらしいしさ!!」

 みんなが歓声を上げ、ジョナサンに拍手を送る。

「きっとそのりんごのことね。ってことは急がないといけないわね!」

 アイリスがジョナサンの背中を叩いて、親指を立てる。

「次は聖なる夜の飾り木マロね。聖なる夜って多分、クリスマスの事マロ」

 マーロンが二つ目の贈り物の解析した。

 それに、ネクターがひらめいたように手を叩いた。

「それじゃあ、飾り木ってことはクリスマスツリーだね」

 しかし、言った後、すぐに顔を曇らせた。

「でも、クリスマスツリーなんて今の時期、出回ってないよな…」

『ネクターの言うとおり。でも、クリスマスツリー、いいえ、モミの木なら…?』

「あっ、モミなら!木の国一のお金持ちで貿易商の娘なんだし、モミの木なんてすぐに手に入るんじゃない!?」

「自分の名前と同じだから、いっぱい持ってるかもね~!」

 クレマチスの一言により、アイリスとライムちゃんが期待のこもった声を上げる。

 淡々と話は進む。


 3つ目の7つ葉のシャムロック。そのシャムロックはクローバーのこと。フラワータウンの南東に4つ葉以上のクローバーが生える場所があるらしく、それで探すことになった。


 4つ目の独創的な神々の美酒は、ネクターに任せられた。ネクターと王妃様で準備をするから、心配要らないそうだ。これに関しては、自信満々のネクターを信じるしかない!


 5つ目の溢れるほどの愛の花。これはどうもぴんとこなかった。きっと花言葉で『愛』を意味する花か関連する花だと考えている。

 しかし、『愛』を意味する花は数え切れないほどある。全てを集めれば、溢れるくらいになるだろう。だが、それがイマイチしっくりしなかった。


「バラ…じゃない?」

 アイリスがぼそっと呟いた。彼女のほうを一斉に振り返る。

「え、えっとね、バラは愛の女神アフロディーナとかヴィーナスを象徴する花だったから。花言葉も愛を意味するし…、そう、意味するの!」

 アイリスが解釈してみる。最後のほうは何か言いかけだったけれど。何を言おうとしたのだろうか?しかし、誰も気にすることなく、アイリスのバラ論に賛同した。

「一番無難な感じだね。でも、まだあやふやで断定はできないかも」

 あたしも賛同したけど、まだ分からないので曖昧に答えておくことにした。



「とにかく!ほぼ出揃ったので明日から行動開始よ、みんな!がんばって、花の魔歌を復活させましょう!!」

 そのまま話が進むことなく、王妃様が掛け声とともに解散した。



                     ☆ ☆ ☆



「ちょっと連れて行きたいところがあるの」

 部屋から出てすぐに、アイリスにそう言われ、ここに連れてこられた。


 ”ロイヤルガーデン”と呼ばれる、植物を育てる温室。アイリスたちは1人1つずつ、ロイヤルガーデンをもらい、自分で植物を育てていると言う。

 なぜ、ここに連れてこられたのかは全然分からない。アイリスはクレマチスとともに、あたしとマーロンを呼びとめ、何も言わずに自分のロイヤルガーデンに連れてきたのだから。


 美しい花、珍しい花、見たことのない花。温室内全てが花で包まれていた。優しい花の香りが、鼻からら全身にいきわたる。

 これだけの花を育てたなんて驚愕だ。


「あれ…」

 かなり奥まで進んだところで、アイリスが指差す。その先には2輪のバラ。真っ赤なバラと純白のバラ。そのバラの周りには他の花が生えていない。


 あの2つのバラはこのガーデンの中で最も美しい。


「きれい…。あのバラがどうしたの?」

 あたしはバラからアイリスへ視線を向きなおして聞いた。彼女は今まで見たことのない澄んだ瞳で2輪のバラを見据える。

「あのバラは、お姉さまがアタシに残してくれたバラ。ローズお姉さまは花の中でもバラが1番好きだった」

 クレマチスをゆっくり撫で付ける。それでも、バラから目を離さない。

「お姉さまは生まれつき体が弱かった。お母様はアタシを生んでから、病気になりがちだった」

「ちょ、ちょっと待って。お母さんいるよね…?」

「あの人は新しいお母さん。アタシとあの人は血がつながっていない。バジルたちとは異母兄弟なの」

 新たな事実が発覚。それとともに、ある事を思い出す。


 モミがアイリスに言っていたこと。そうこれが、ロリコンとはまた別にアイリスが傷ついた出来事ではないかと考えていた。それでも、その真相は分からないままだったけど、今分かった。


「自分より優れていた姉と、自分より姉のことを好いていた母親が憎かったんでしょ。家族を道連れにしたってわけね?

 それなのに、その事実を隠してきょうだいたちとは仲良くして、みんなに親しくされて、人気ぶってて…まぁまぁ嫌な子ね!」


 姉?母親?憎くて道連れ?


 廊下の曲がり角から、ふと聞こえたその声。モミがアイリスに言っているんだとすぐ分かった。何も言い返せないアイリスに、あたしはその場で考え込むことしかできなかったけど…。

 それでも、イメチェン大作戦が成功して、モミとも和解できたからすっかり忘れていた。それにモミも多分、本心で言ったわけではないだろう。今なら分かる。

 とにかく、モミが言った言葉の意味がようやく分かったのだ。



「話を戻すけど、お姉さまもお母様も病弱で、なかなか遊ぶこともできなかった。でもある日、2人が元気だった日に家族4人で外出したの。

 お姉さまとボールで遊んでた時に、アタシ投げたボールがね、道路に飛び出したの。

 ボールを取りに行こうとしたお姉さまに…馬車が近づいてきて、お姉さまを守るためにお母様が飛び込んだ。


 2人とも、馬車に…はねられた。

 病院に運ばれて、お母様は頭を強く打ってたから、もう…手遅れだった…」

 アイリスの目から涙がとめどなく溢れる。それなのに、話を続ける。

「ローズお姉さまは回復したの。それでアタシにピッコロで演奏してくれた。アタシも一緒にフルートを吹いて…。

 でも、それが最後だったの。吹き終わったとたん、ピッコロをアタシに渡して、自分のバラを大切にしてねって言って…。


 ア、アタシ、2人とも殺しちゃったんだ…」

 アイリスはうなだれた。クレマチスの長い毛に涙が落ちる。

「アイリス…」

 あたしは名前を呼ぶことしかできない。


 あたしは身内が亡くなったところを見たことがない。だから、肉親を亡くしたアイリスに、声を掛けることができなかった。



『あなたのせいじゃない』

 クレマチスの声が頭の中で響く。すると、アイリスの腕から飛び降り、バラの元に…。

「…っひ、クレマ…チス?」

 アイリスは大粒の涙をしたたらせる。

 そんな彼女の前で、クレマチスが赤いバラの花びらを1枚引き抜いた。

「だめっ!」

 アイリスが叫び、クレマチスに駆け寄った。あたしも気になって駆け出す。

 クレマチスが引き抜いた花びらがアイリスに触れた瞬間。


「アイ…リス…」

 かすかな声がアイリスの名前を呼ぶ。幼い子供の声。

「ローズ…お姉さま…?」

 アイリスの口から姉の名前が出た。この声はアイリスの亡きお姉さんの声なのだろうか。あたしとマーロンはその後ろまで近寄った。

 アイリスは手のひらの花びらを一心に見つめる。


「私はもうすぐ死んじゃうみたい。アイリスやお母様、お父様に会えなくなるのはすっごく寂しいよ」

 囁くような声は震えている。泣いているのだろうか。

「でも、でもね…みんなと一緒にいられたから大丈夫。アイリスはアイリスらしく、私の分まで…生きてください」

「お姉さま!!」

 アイリスが叫び、花びらを握り締める。ポロポロと零れ落ちる涙。

 声はアイリスを励ますように続ける。

「アイリス、涙は心に水を与えるの。でも、私は笑って欲しい。笑って…アイリス」

 アイリスは声に答えるように、涙を流しながらも、笑顔を作る。

「いつまでも大好きだよ、あなたという花が。ありがとう、さようなら…」

 周りのきらめきがなくなった。声ももう聞こえなくなった。

 アイリスは花びらを握り締めたまま俯く。あたしは涙を堪えるために、隣のマーロンの手を取る。


『ローズは病気で亡くなったの、心臓の病気よ。あなたのせいじゃない。

 ローズはまっとうに生きたから悔いなんてないのよ?

 でも、あなたがいつまでも自分のせいだと思うのは、ローズが悲しむ。


 お母様だって、あなたを産んでから体を弱めた。それは仕方のない事だった。

 本当はあなたを産む前から体は弱っていた。あなたを産むことさえ、医師から止められていたの。

 それでも、あなたのお母さんはあなたを産んだの。 


 ローズもお母様もあなたが殺したんじゃない。かえってあなたが生かしていたのよ、アイリス?あなたの笑顔に2人は救われたの』


 クレマチスが真実を語る。アイリスは確かめる。

「アタシは2人を道連れにして、殺したんじゃない…?」

『そうよ。逆にあなたがいなかったら、2人は生きる力を失っていたかもしれない』

「そうだよ、アイリス!アイリスは何も悪くない。後悔することもない。

 自分らしく、お姉さんとお母さんの分まで生きてあげて!?」

 クレマチスとあたしが真意を分からせようとする。

「アタシはアタシらしく、生きたらいいのね…!?」

 アイリスが声をあげて、2人の名を叫ぶ。


「お姉さま!お母様!アタシは…2人の分まで強く生きる…!!

 ありがとう…ありがとう…!!」


 少女の瞳から流れ出た涙に悲しみの色はなかった。



 親愛なる姉と母への慈愛の涙であった。







 最後まで読んでくださりありがとうございましたペコ




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