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第6話 波乱の幕開け


 昨日は全くと言っていい程、眠れなかった。

 ラッキーなことにクマはできてなかった。だってクマができたら撮影に支障が出るし、アイリスに茶化される。何度も睡魔に襲われたのは問題だけど…。


 今日の撮影は昨日と同じようにスタジオで行った(ロケかと思って少し期待した)。

 まず、控え室で自己紹介をした。雑誌でモデルみんなの名前も顔も知ってるけど…。みんな、アイリスと同じように感激してあたしを向かいいれてくれた。

 ただ1人とそのとりまきを除いて…。


 初日、その人たちと関わることはなく、無事に撮影を終えた。

 モデル達と他愛のない会話をして、仮のモデルとして一生懸命カメラに笑顔を向けた。

 ストポに出られることで自然に笑顔になったし、モデル達がフォローしてくれて心から撮影を楽しんだ。

 でも、ただ1人、とりまきたちと一緒に、みんなやあたしを馬鹿にしたような目つきで見ていたモデルがいた。長い黒髪やアクセサリーなどを見せ付けるようにして、薄笑いを浮かべている姿は、とてもいいものとは思えなかった。



 2日目。あたしとアイリス2人で休憩しているときのこと。とりまき2人とついに頭角を現したのだ。


「ちょっと、あなた?ロリコンアイリスと一緒にいて恥ずかしくないの~??」

 カールのかかったポニーテールをいじり、目の前に出てきた。とりまきは一歩下がって、ニヤニヤしている。

 モミ・ジュノク。花の王国の北にある木の国の、有名な貿易商の娘。アジア系美人と言われ、クール・セクシー系からカジュアル系担当。アイリスとは真逆の担当と言っても過言ではない。そして、ストポでアイリスと1,2を争う人気モデル。


「モミ…。アタシはロリコンじゃないわよ!」

 アイリスが椅子に座ったまま、モミを睨みつけた。

「小さなきょうだいたちをいつまでも可愛がったりして、ロリコンですよね~。モミ様?」

 とりまきの一人、レモネードがからかうように笑う。

「それに、ロリータしか着ないっ、問題児モデルですね!!」

 こちらはチェリー。この言葉にアイリスは言い返せないでいる。

 確かにアイリスは撮影用の服も私服も、ロリータやゴスロリ系の服しか着ていないけど…。

 あたしも固まっていると、3人は嘲笑った。

「マレーヌ、こんなロリコンよりも私達のほうが断然いいわよ?」

 とモミが見下す。あたしはさすがにムッときて、

「そんなことない!アイリスはきょうだい思いの優しい人だし、別にアイリスが何着ようと関係ないでしょ!?」

 アイリスをかばうように強く言い放った。

 アイリスは座ったまま、俯いている。たった数日の間で、あたしを親友のように接してくれるアイリスをけなすなんて許せなかった。

「あら、どうかしらね!編集者たちはお困りなのよ。ロリ以外着てくれないから、読者の要望にも答えられなくて、どうしようかって!」

 モミは全く動じていなかった。アイリスはモミの言葉にひどく傷ついていた。


 ここで、他のモデル達が来てモミととりまきは、不服そうに去って行った。すれ違うときに捨て台詞を残して、


「お姫様って似たような子ばっかり。今に見てなさい…」


 あたしにしか聞こえない声で囁いた。モミはあたしを見て、妖艶の微笑を向けた。

 波乱の幕開けだ!!



                     ☆ ☆ ☆


「2日目にしてこれはないでしょ!?」

 テーブルに肘をつけて、頬を膨らませる。

 初日と2日目(今日)の現状を幼い5人に報告した。今日はアイリスが1人になりたいって言ったから、マーロンとともに子供部屋に訪れたのだ。

「お姉さんもアイリス姉も大変だったんだ」

 ディルが親身になって感想を述べた。ポッキーを差し出して、

「モミさんは昔から敵意むき出しだったからね~」

 と言った。ボッキーを受け取り、口にくわえるあたし。

「あいつ、アイリス姉が人気だからって嫉妬してんだぜ!!」

 ディルに続けてジョナサンがそう言い、ポテチをつまむ。

「とりまきの2人はフルーツタウン出身だよね?」

 ネクターがあたしに聞いた。


 この花の王国は4つの地域に分けられている。

 中央(お城やスタジオなどがある地域)から南にかけてがフラワータウン。

 フルーツタウンは木の国よりで、花の王国の北側。

 東(水の王国より)にベジタブルタウン。西はシリアルタウン。

 この4つのタウンによって花の王国が確立している。


「うん。あの2人はフルーツタウン出身だったけど、それがどうしたの?」

 ストポをずっと読んでいるあたしならではの情報。すぐに答えられる問題だ。

「いや、フルーツタウンって木の国と親交が深いからね?それもあって、モミさんと仲がいいんだろうなって」

 別に深刻なことではないようで、さらりと言い終えた。

「ひどいよ。アイリス姉はロリコンじゃないのに!」

 頬っぺたを膨らますディル。

「アイリス姉は私達の自慢のお姉さんだもん!」

 音を立てて、テーブルに肘を置く。

 ディルはアイリスにかなりの信頼を寄せているようだ。アイリスに対しての悪口を自分のことのように怒りを持っている。

「あたしもディルと同じ気持ちよ!?」

 顎を乗せたディルの両手を包み込む。

「お姉さん!」

「ディル!」

 お互いの名前を呼んで、アイリスへの尊敬を分かち合う。あたしとディルの周りが輝いている…!

「アイリス姉はすっごく優しいし!」

「ロリータファッションを流行らせたのはアイリスだし!」

 2人でアイリスの良さを語る。しかし、他4人の冷めた視線に、一旦中止した。


「アイリスお姉ちゃんは今どうしてるの?」

 ライムちゃんが温かい目で切り出した。

「部屋にいると思うけど…」

「あっ、クレマチスが帰ってきたんじゃねぇ?!」

 あたしの言葉をジョナサンが遮り、きょうだいの顔を見渡した。

 クレマチス…。まさか、まだきょうだいがいるのか!?

「あれ、今日だったっけ?お土産あるかな…?」

 とネクター。クレマチスって人は旅行に行っていた様子。

「ねぇねぇ、みんなでアイリス姉のところ行こうよ!」

 ライムちゃんが提案する。まず、クレマチスって誰なの?

「今日はやめといたほうがいいマロ~。アイリス姫はお疲れのようだし、みんなも寝る時間じゃないマロ?」

 マーロンが時計を指差した。おもちゃのような時計の長身は10を超えている。

 やっぱり5人は子供で、目が閉じかけている。ライムちゃんなんか、何度も瞼をこすっていた。他の4人も絶えずあくびをしていた。あたしやマーロンは平気だけど…。

「マーロンの言うとおりだよ?みんなもう寝よう!明日、会えるから」

 あたしがマーロンに賛同して呼びかける(とりあえず、マーロンの名前は普通に呼べる)。

 5人は納得いかない様子であったが、眠気には耐えられず、足を引きずるようにして子供部屋を後にした。


「マーロン、あたしは行ってもいいかな?」

 5人を見送って、お約束のように切り出した。

 普通に話しかけられたかな?ここ2日、マーロンを話すときは毎回そんなことを思う。

「行くつもりだったマロね~」

 図星☆はにかみながら舌を出す。

 実はロリコンって言われた以外にも、アイリスを傷つける理由がもう1つあった。だから、5人を先に部屋に返したのだ。


「マーロンはいっつもあたしの考えてること分かるよね~」

 歩き出して、何気なく言ってみた。

「そりゃそうマロ。ずっとマレーヌのこと見てるからマロ~」

 マーロンも何気なく呟く。

「!! 」

「どうしたマロ?」

「ううん、な、なんでもない…」


 ”ずっと見てる”


 その言葉に体に電流が走ったかのように衝撃を受けた。マーロンの気持ちを知った今だから、敏感に反応してしまったのだ。

 よくまぁ、そんな恥ずかしいセリフが言えるね!!


 ひきつり火照った頬を隠しながら、アイリスの部屋へと向かった。


 

 


 最後まで読んでいただきありがとうございましたペコ


 次回もお楽しみに☆

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