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第5話 恋バナ


「みんなマレーヌが来るの楽しみにしてるよ~」

「そっかぁ」

 ベッドに腰掛けてアイリスは楽しそうにあたしの髪をいじっている。

「でもさ、あたしみたいな素人がストポに出ていいのかなぁ?」

 あたしはアイリスのほうを見ようと首を回したが、頭を固定されているから回せなかった。

「大丈夫よ~。だって今日の撮影、完璧だったじゃん!」

「そんなことない!!がちがちだったのにぃ~~」




 えっと、この会話ではなんのことやら分からないはずなので、説明しま~す。


 あたし、マレーヌはなんとストポの撮影に参加させてもらうことになりました!


 『今、輝いている女の子!応援しちゃおう♪』というストポの特別企画に載ることになって…。

 アイリスがいつの間にか編集長に連絡を入れていたらしく、ちょうど計画していた企画にあたしが載ることになったというわけ。あたしもイマイチ分かってないんだよね…。


 ストポに載るなんて夢のまた夢だった。だって、ものすごくスタイル良くて、みんなが絶賛する可愛さじゃないと載れないストポなんですから。

 

 今日、やっとの思いで撮影を終えた。ポーズ取ったり、笑顔を作ったり簡単にできなくて、身が磨り減ったよ。

 いい体験ができたなぁと撮影を終えたら、編集長が現れて「来月号の撮影に参加しない?」と申し込まれ、特別モデルとして参加することになった。


 こんな突飛な話があるのかな!?びっくりせずにはいられない。びっくりなんて言葉で表現できないよ!!




「心配しなくていいって!モデルのみんなでフォローするし、編集長直々のスカウトだったんだし!!」

「…うん。楽しみにする!!」

 アイリスの言葉に、期待を込めて返事をした。

「こらこら、動かない」

「ごめ~ん」

 返事をしたときに思い切り頷いてしまった。アイリスは楽しそうにあたしの髪をセットしている。


 あたしとアイリスは会って間もないのに、とても仲良くなった。お互い憧れだったのもあるし、それ以前に気が合うのであった。説明できないけど、気が合うの!!


 だから、ここ数日は今のようにアイリスの部屋でおしゃべりして楽しんでいる!!


「マレーヌって、ツインテール以外の髪型はしないの~?」

「うん。小さい頃からずっとこれ」

「へぇ~。おっ、どうよ?」

 アイリスが鏡をあたしの前に持ってくる。

 ポニーテールになっていたあたしの髪。丁寧に梳かれて天使の輪ができていた。

 あたしが鏡の自分を見ている間、アイリスはシュシュやリボンを合わせている。その時の笑顔は、雑誌に載っている笑顔とは違って優しく見えた。

「似合うかな~?あんまり分かんないや」


 あたしの言葉にアイリスがポニーテールからおだんごに変える。

 細い指を器用に滑らし、ピンを留める。逆毛を立ててふわふわのおだんごヘアが完成した。

「これはどう?アタシは素敵だと思うけど~」


 あたしの顔を覗き込み、

「なんで、マレーヌはいつもツインなのぉ?」

 と感想を待たずに、尋ねてきた。首をかしげて考えてみる。

「小さいときからだから…。慣れちゃって」

「ずっと変えないって事は、何かきっかけがあるはずよ??」

 あたしが答える前に、

「しかもこの年でこんな高い位置でツインとは…」

 アイリスがいつも縛っている位置に手を置く。

「こんな高い位置って、まるでださいみたいじゃない!!」

 怒ったように言ってみた。別に本気で怒っているわけじゃない。


 この位置で縛る事にはわけがあるから。それは水の王国で思ったことだけど…。


「ダサくはないけど、幼いって言うか~」

「うぅ、そうかな~。あっ、そっか!!」

 手を叩き、ある事を思い出した。


 水の王国で思ったことじゃない。あの時は起きたてで変なことだと思ってたけど、本当は…。


「小さい頃、誰かに縛ってもらったの。そのときに『マレーヌのツインテールが高い位置にあるのは元気の証。いつだって元気でいてね』って励まされたんだ」

 いつだったか、誰に言われたのか。思い出せそう…。

「へぇ~!素敵じゃない!!誰に言われたの~~」

 興味津々のアイリス。あたしは懸命に思い出そうとする。


 小さい頃、泣いてるとき。心がズタズタになって、笑うことさえできなかったとき。

 咳き込み、熱のあるフラフラの体で…。


「マーロンだ!」

 

 そう、思い出したくないあの時。数日たって起きたマーロンが、あたしのぼさぼさの髪をきれいに梳いて、縛ってくれた。

 縛り終えて、あたしの髪型を確認してその言葉を掛けてくれた。まだフラフラでしんどそうだったのに、しっかりした力強い口調で、あたしを笑顔にしてくれた。


「あの時から、いつだって元気で笑っていられるようにって、ずっとこの髪型にしてたの」

 あたしの口からぽっと言葉が出た。自分でも思っていなかった言葉。

「ふ~ん、マーロンねぇ~」

「!? どうしたの、アイリス??」

 真剣に考え、話したあたしに、アイリスはにたにたと笑っている。

「ちょっと!あたしのいい思い出なの。なんで笑ってるの!!」

 これにはあたしも力が入ってしまった。アイリスが慌てて、

「ち、ち、違うわ!ごめんなさい、勘違いよ!!」

 と謝った。本気で謝るアイリスをとりあえず、許すことにした。

 理由を聞いてみると、

「本当にごめん!!!」

 とまた謝られた。あたしは呆れてもう一度尋ねた。

「うん、分かったから…。なんで笑ってたの?とりつかれてた??」

「ちが~う!ん~とね、言っちゃっていいのかな…?」

 もじもじするアイリス。

「何なの~?言ってくれないと、許さないよ~~」

 と言って、アイリスをつっついてやった。アイリスは、ため息をついた。言う気になったみたい。

「これはアタシの推測よ?驚かないでよ?」

 あたしが頷くと、アイリスは耳元に近づいてきた。




「2人はできてるの??」





「はぁ?」





 ”フタリハデキテルノ?”




 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?







「はははははは、はぁ!?ななななななに、言ってんの!?なんで、そそそそうなっちゃうの!?」

 耳まで真っ赤になるのが分かる。アイリスの言葉が頭の中でぐるぐる渦巻く。

「ひゃぁ~、痛い痛いってば~。推測だって言ったでしょ~」

 アイリスが可愛い声で必死に訴える。いつのまにか、アイリスを叩いていた。

「そ、そんなに動揺しなくても。んで、そこんとこどうなの??」

「んなわけないでしょーがー!!!逆にどうしてそう思ったのよ!!」

 笑いをこらえるアイリスに、あたしは座りなおしたベッドの上で喚く。

「だって、2人仲いいじゃん?」

「そりゃ、あたしが小さいときからずっと一緒にいたからよ!マーロンは家族みたいな感じ!!」

「ふ~ん。でも、マレーヌって何かとマーロンを頼りにしてるみたいだし…」

「お供なんだから頼って当然じゃない!?あとは~?」

 隣に座るアイリスをちらりと見る。だんだん疲れてきた。

「そっかぁ。マレーヌに気はないのか~」



 ”マレーヌに”




「”に”って何!?」

 この短時間であたしは何度てんぱったのか。まぁ、てんぱらずにもいられない。


「へ?ハッ! …ヤバッ」

 自分の言ったことの重大さに今気づいたアイリス。声を潜め、顔を逸らして呟いた「ヤバッ」は丸聞こえである。


 ちょっと待ってよ!”に”ってことは!?!?あたしに気がないと思っているアイリス。それって…。

「マーロンがあたしのこと…!!」


 ”ボボッ”


 そんな音があたしの顔から出た(ような気がした)。そして、顔から熱くなり、全身がサウナに入ったかのように火照る。

「アタシの推測だけどね♪ って大丈夫!?」

 アイリスがあたしの体を揺さぶる。のぼせたみたい。


 だってだって、マーロンはあたしのお供で家族みたいな存在で…!絶対にありえないーーー!!


「大丈夫…じゃない。な、なんでそう思うの!?」

「んっと~、マレーヌ気づいてないみたいだけど。マーロンね、ぶはっ!やっぱ言えない」

 アイリスは話の途中で思い切り吹き出した。あたしが思い切り睨む。

「だって、マレーヌ真剣マジな顔してたもん。目が、目が。睨み殺されるかと思った」

 アイリスが懸命にわけを説明して、ふぅと小さく息を吐いた。


「あのね、マーロンったらずっとあなたのこと見てるのよ?ずっと愛おしそうな目で見てるの。

 お姫様と妖精お供の禁断の恋かぁ…ロマンチックねぇ!!」


 アイリスは1人でわけの分からないことを語っている。あたしは失笑した。

「あはは、ないない。マーロンが見てるのは勘違いだって」


「・・・」


「ちょっと何!?その間、怖いんだけど!」


「…マレーヌ、マーロンは本気だよ?」



 ”シュポーーーー”


「発車したぁーーー!マレーヌ落ち着いてぇぇ!!」

 機関車が発車したような音の後、あたしはそのまま仰向けに倒れこんだ。アイリスが後ろにぶっ倒れたあたしの両肩を持ち、体を起こした。そして、そのまま両肩を強く掴み、真剣な表情で話す。

「ずっと一緒にいるからだよ?きっとマーロンはずっと思ってきたのよ。あの目を見れば、アタシは分かる。主人とか家族を見る目じゃない…」

「んきゃー!その先は言わないで…!」

 涙目で訴える。アイリスは真剣な表情を、ふてくされた表情に変える。


「あ、あたしに考える時間を頂戴。マーロンがあたしのこと…そうなのかを見極めるから」


 苦し紛れの言い訳かもしれない。でもアイリスは静かに頷いてくれた。


                     ☆ ☆ ☆


 少し会話を交わしてから、あたしは部屋に戻った。

 アイリスはいつでも相談に乗ると言ってくれたから、安心していいよね?まだ心の整理がつかないよ…。



「マ、マーロン何でここにいるの!?」

「あっ、おかえりマロ。なんでってここ、オイラたちの部屋マロ」

「そ、そうよね。ってオイラ達の部屋!?」

「うん。どうしたマロ、熱でもあるマロか?顔が真っ赤マロ」

 ドアを開けたら、マーロンが目の前に現れた。そして、こんな会話の末、あたしのおでこにマーロンが手を当てる。

「ん~、だいじょぶ。熱はないマロ」

 マーロンがゆっくりと手を離す。

 マーロンの手、温かかったな。って何を考えてるんだ、あたし!!

「んじゃ、寝るね!明日は頑張ろうね!!」

 若干棒読みでベッドに潜り込んだ。

「おやすみマロ」

「お、おやすみ!」



 さっきからあたしは変に意識しすぎだ。マーロンはいたって普通なのに。

 マーロンはずっとあたしのお供として今まで忠実にしてきてくれた。家族のように支えてくれた。

 そうやってあたしは背中を押され、一緒に歩んできた。マーロンに限って、あ、あたしをす、す…、なんてあるわけない!


 天狗みたいな鼻で、狐みたいな目をして、いつも帽子被ってて、ボサボサの髪を隠してるやつが。

 すっとぼけて、変なところを突っ込んで、あたしを困らせる彼が。

 いつもあたしを見守って、支えてくれて、1番頼りになるマーロンが。


 あたしにとって、1番大きな存在になっていた。


 そんなマーロンに家族みたいな存在でいたいって言われるのはうれしい。

 でも、家族の愛情とは違う想いを抱かれると…。


 どうしても受け止められないかも。


 頭の中のぐるぐるが、心の中のモヤモヤが、きれいさっぱりなくなってくれたらいいのに。

 この胸騒ぎが止まってほしいと、心から願う。





 どうもです!!冬休みですね♪


 とにかく寒くて、指がしもやけに…泣





 今回はななななんと!!



 マレーヌがマーロンの気持ちを知ってしまいます。。。


 皆さんは水の章第9話目でマーロンの気持ちを気づいていたと思います。



 この2人は家族以上に強い絆で結ばれてると思うのですが、


 まさかマーロンがマレーヌに恋してるとは…!w




 作者の私としてはすごく切ないんですよ??


 マーロンが大好きですからぁ♪♪




 最後まで読んでいただきありがとうございましたペコ


 コメなど随時お待ちしておりますペコリ



 これから2人はどうなっていくのか!!

 ストポの撮影は順調にいくのか!!

 そして、花の魔歌は手に入れられるのか!!



 乞うご期待☆☆





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