第4話 仲良し6きょうだい
あと少しでクリスマス!
皆さんはどんなクリスマスにする予定でしょうか??
私はちょうどコンテストの日です。がんばります☆
まぁそれで部活もあり、更新が遅れてしまいました。←言い訳だ((殴
そして、題名を見て、アレ?と思った方いますかぁ?!
ともかく、お読みください!!
「あなた方、何をやっていたのです!!」
みんなで部屋に入った途端、怒鳴り声が木霊した。
「ごめんなさい、先生!ちょっと話が長引いちゃって」
お姉さんのディルが慌てて謝る。しかし、先生は怒りの姿勢を崩さない。
「そんな言い訳が毎回毎回、通じると思いまして!?あなた方は仮にも、一国の王子,姫なのでございますのよ!」
「だっー!んなこと言われなくても分かってるっつーのっ!そんなに怒るとま~た、しわが増えるぞ~!!」
ジョナサンが茶化した。彼の言葉に先生は顔を真っ赤にする。
「ジョナサン王子!口を慎みなさい!!あなたはだいたいいつもいつも!」
「うっひゃー!先生の怒りマシンガンが炸裂するぞーー!」
ジョナサンは全く懲りていない。また何か言おうすると先生の間に、ネクターが割って入った。
「先生、遅れたのには理由があるんです」
「! それはどういった理由でしょうか?ネクタリン王子?」
「はい。風の王国からマリアンヌ・ピアニコさんとお供のマーロンさんが花の王国に来て、挨拶にこられたんです」
ネクターが慣れた手つきであたしを引っ張り、自分の横に立たせる。
「レッスンのことも忘れるほど、会話が弾みまして…。それで遅れてしまったんです。
先生、以前おっしゃってましたよね?王家の方とはいい交友関係をもて、と」
ネクターはそうですよね?と、眉を吊り上げてみせる。
度肝を抜かれた先生は咳払いをして、
「そ、それなら仕方ありません。さぁ、みなさん楽器の準備をなさい」
と指示した。5人が返事をして、それぞれ準備に取り掛かる。散らばる前にネクターが、そっと「ありがと」と呟いて行った。
あたしは悟った。ネクター、この年にしてフェロモン出してるな!!とにかく、将来が心配だよ…!?
とりあえず、5人の楽器を準備する姿を眺めていた。
何の楽器かな?邪魔にならない程度に近づく。3つ子ちゃんはクラリネット。バジル君もクラリネット?ディルは…でかい!!
「ねぇ、ディル、あなたの楽器なんていうの?」
「ん?これはファゴットって言うの。結構重たいし、難しいんだ」
木管楽器の一つで、2枚リードの低音楽器。管は折り曲げられた形状をなし、幅広い低音域をもつらしい。
「ふ~ん。じゃ、じゃあバジル君の楽器は?」
「バジル?バジルの楽器はクラリネット」
やっぱり。うんうんと頷く。
「うっそで~す。バジルはクラリネットじゃなくて、オーボエ。騙されたでしょ、お姉さん」
にこっと意地悪そうに笑いかける。もうっ、と呟くもののすぐに微笑み返した。
オーボエはファゴットと同じく、木管楽器の一つでリードを2枚もつ縦笛。歌うような旋律に適し、合奏では高音部を受け持つ楽器とのこと。
見た目がクラリネットと似ているから、見間違うこともあるそうだ。3つ子ちゃんは、正真正銘クラリネットだって!
「私達も、もともとはクラリネットだったんだけどね。っよし!」
ディルはそう話して、楽器に息を吹き込む。
”ポーー”
鼻に詰まったような音。それでいて、優しく安定感のある低音。
「うん、今日は調子がいいな~」
誰に言うわけでもなく、ディルが満足そうに頷いた。
他の4人も音を出す。3つ子のクラリネットははっきりした温かい音。バジル君のオーボエはディルの音と似ていた。でも、オーボエのほうが高く澄んでいる。そして、クラリネットよりも華やか。
「はい、皆さんこのあと個人練習をしたら、合奏しますよ」
先生が手を叩き、練習の指示をした。5人はそれぞればらばらに座り、音を出し始めた。
あたしは何もすることがなく、端で練習風景を見ていた。
1番上手なのは、バジル君かな?先生もそう言っていた。
合奏する2曲は、明るい曲と暗い曲で対照的だった。それを上手く表現している。主旋律が多いみたいで、難しそうなところもスラスラと吹いている。
ディルも上手。大きさが自分の体とほぼ同じ楽器に、しっかり息を吹き込みがんばっている。低く安定した音で、和音をつくりだす役目だと思う。
それなら、3つ子ちゃんだって上手。パートは、ファースト・ネクター、セカンド・ジョナサン、サード・ライムちゃんだと先生から聞いた。
3人とも経験が浅い割には、器用に演奏するらしい。先生からの指摘と言えば、ネクターは1番音が定まっているものの、リードミスがある。ジョナサンはきつめの音を出す。反対にライムちゃんは、もわっとした音を出す、とのこと。
しかし、大人顔負け、圧倒する程上手な8歳のクラリネット奏者。
5人とも、上手で今まで見せていたのとは違う、真面目な姿をしていたのは確かだ。
「さぁ皆さん、合奏を始めましょう」
先生の掛け声とともに、5人が集まる。幼い子供たちの合奏はどんなものなのだろうか??
☆ ☆ ☆
「お姉さん、マーロン君、私達の演奏どうだった!?」
レッスンを終え、ディルが聞いてきた。
「すっごく上手だったよ!あたし、びっくりしちゃったよ!!」
「オイラもびっくりマロ。みんな毎日たくさん練習しているマロですね~?!」
あたしもマーロンもべたほめ。5人は照れくさそうにする。
「いつもあのくらい練習してるんだぜ!!」
ジョナサンが自信満々にあたしの顔を見る。
10歳と8歳が2時間も集中して練習できるなんて驚き。あたしも魔歌の練習で2時間は並だけど、10歳と8歳だよ!?すこしばかり尊敬してしまった。
「お姉さん、そんなに驚くことないだろ。お姉さんだって、あのくらいレッスンしてるんだろ?」
きたよ!!ネクターの攻撃。甘い声であたしに声を掛ける。
ネクター、君はまだ若いから許されるんだよ、そんな甘い声で女の人に声掛けちゃ駄目だよ!!女の人、ノックアウトするからね。
「そうマロよ。マレーヌもすごいマロから~」
マーロンが防御をかけた。助かったよ、マーロン!!
…いつまでも、変なこと考えるのはやめようか。
「ねぇ、気になったんだけど、主旋律が抜けてる部分があったのはどうして?」
「あぁ、あれはねお姉ちゃんがフルートを吹くからなの!お姉ちゃんすっごく上手なんだよ?」
手を繋いでいるライムちゃんが答えた。
「? あなたたちお姉さんがいるの?」
5人だけでも多いのに、6人きょうだい!?そんな大家族だったのか、花の王家は!
「いるぜ!もうそろそろ帰って来るんじゃね!?」
ジョナサンがうきうきしている。そのお姉さんのことを好いているようだ。
「今日は仕事が早く終わるって言ってたしね」
ネクターも心なしか、楽しみにしている。他の3人も笑顔だ。そして、ここであることに気がついた。
「って仕事?お姉さん、何歳なの?結構離れてる…よね?」
仕事ができるってことは、20歳は過ぎてるって事かな。10歳以上も離れてるの!?それに、王家の人だから、普通の仕事はあんまりしないはずだけど?
「えっと、お姉さんと同じ15歳だよ」
ディルがバジル君の本を覗き込み、「それ今度読ませて」と、全く15歳と言う年齢に違和感を持っていない。他の4人も、ましてやあのマーロンでさえも。
「へぇぇぇ!!!15歳で仕事!?お姉さんどんな仕事してるの!?」
ディルの肩をがしっと掴み、早口でまくし立てる。
15歳で仕事って。もしかして、年を誤魔化してキャバクラ!?まさか、闇取引みたいな危ない仕事!?どれをやっても、人間として駄目だよ!!
「え!?え!?お姉さんそんなに驚くことないよ!??」
ディルはあたしの驚きぶりに驚いている。((あたしは今混乱中ですから!!))
「アタシの仕事は、モデルで~す!!」
元気ハツラツのかわいい声。ディルでもない、ライムちゃんでもない、女の子の声。
「ア、アイリスーーーー!?」
Vサインをつくるあたしの憧れの人物は真後ろに立っていた。腰が抜けて、その場にへたり込んだ。
「お姉ちゃん、お帰りなさ~い!!」
ライムちゃんがいち早く、アイリスに抱きつく。アイリスはそのライムちゃんの頭を優しく撫でる。他の子たちも、アイリスを囲み、自分も自分も、と目を輝かせている。あたしはまだ状況を飲み込めないでいる。そんなあたしを、
「あはは!マレーヌ腰抜かしてるぞ!!」
とジョナサンが笑いものにする。悔しいが、何も言い返せない。だって、ほんとに腰抜かしてるもん!
「大丈夫?ほら、手!」
白くて細い手があたしに向けられる。
そっと手をとると、差し出してくれた彼女がふわりと天使のように微笑む。そして、力を貸して体を起こしてくれた。あたしの体温は一気に上がっていく。
「あ、ありがとう…」
心臓がバクバクする。あたしの前にあのアイリスが…。
「マレーヌ、しっかりするマロ。それと、顔引き締めるマロ!」
マーロンが囁き訴える。ハッとして顔を横に振る。
「えっとあたし、マリアンヌ 「マリアンヌ・ピアニコ、あのマリアンヌ!?なんでここにいるの!?
って、お昼に会った子じゃん!!!」
自己紹介する前に、あたしの顔をまじまじと見たアイリスは興奮し始めた。あたしに興奮?
「もしかして、魔歌探しで来ちゃったの!?あぁ~、何であのときに気づかなかったの、アタシ!」
頷くあたしに、自分で自分の頭を叩くアイリス。
かわいい!かわいい!かわいすぎる!
「本当うれしい!あのマリアンヌに会えるなんて夢見たい!!」
アイリスはあたしの手をとり、澄んだブルーアイを輝かせる。
「あ、あたしもアイリスに(また)会えてうれしいよ!!」
2人で目を輝かせあう。そして、素朴な疑問を投げかける。
「で、でもなんであたしに興奮してるの??」
「だって、世界放送の生誕パーティに、有名なコンテストでの準優勝、水の王国での問題解決などなど!!今アタシたちを沸かせている女の子ナンバー1なんだから!!」
アイリスは甘い声を出す。
5人の子供たちは驚きの目であたしを見る。しかしそれ以上に、あたしは驚き目を見開く。
「と言っても、モデル仲間だけよ?今度、ストポで特集されるから!有名人よ、マリアンヌは!」
アイリスが茶目っ気たっぷりにウィンクする。あたしは愕然として、声を出せない。
「興奮するのはいいけど、夕食の時間だよ…」
スタスタと歩いていくバジル君がお告げを…。
「やべーよ、アイリス姉!今日は限定スイーツデイだぜ!?ヤベーよ!」
ジョナサンが慌てる。右手で指差し、左手をぐるぐるまわしている。
「きゃ、ほんと!月に1度の限定日を逃すわけにはいかないわ!!みんな急ぐわよ!」
アイリスも慌てて、みんなを呼びかける。そして、あたしの手をとったまま、1番に駆け出した。
走りながら、マーロンと顔を見合わせる。これからどうなるのかな…!?そんな会話を目でしていた。
☆ ☆ ☆
花の王国のバイキングは特徴的だった。野菜や果物の料理が多いこと。花が使われている料理もある。あと、
「ちょっとジョナサン、アタシがそのケーキ狙ってるのよ!!」
アイリスが以外にも子供っぽかったこと。8歳の弟とやりあうなんて…wじゃなくて、月1で限定スイーツデイがあるということ。
「へっへーん!これもいただくぜ!」
ジョナサンがラスト1個だったチョコケーキを自分のお皿に移す。アイリスはかなり激怒している。
「ま、まぁアタシはモデルだから?食事には気をつけないといけないのよ~」
苦しい言い訳を言ってるのがまる分かりだった。容赦ないジョナサン。加えて、
「んじゃこれもいただき♪」
「私も食べるぅ~!!」
ライムちゃんまで。でも、この子は天然だから。アイリスの前にはライムちゃんとジョナサンがいて、先にケーキを取られてしまうのである。
「みんな子供だね。早くしたらどうなの?」
いち早くとり終えたネクターが面白そうに言う。あたしも同感だよぉ。あたしは言い合うアイリスたちと、仲のよい双子の後ろだから、なかなか進めない。
「ったく、遅れてるのに…」
あたしの2つ前にいるバジル君が悪態を吐く。
「そんなこと言わないの。ちゃんと抹茶ケーキ残ってるから」
ディルがなだめる。こくんと素直に頷くバジル君。
この双子は…!バランス保ってるなぁ。
☆ ☆ ☆
やっと楽しい食事にありつけた。しかし、アイリスに双子に三つ子に、あたしとマーロンの計8人の食事なわけで、かなり騒がしい。
4人ずつ向かい合わせに座っている。この席の座り方、いいのやら悪いのやら。
あたしのいる列、左からネクター、アイリス、あたし、マーロン。
向かい側、ネクターの正面から、バジル君、ディル、ジョナサン、ライムちゃん。
「ちょっとジョナサン、そのケーキよこしなさい!」
アイリスが斜め左のジョナサンのケーキを、ひょいと奪う。それは生クリームたっぷりのケーキで、ジョナサンが最後まで残していたものだ。これにはジョナサンの怒りが爆発した。
「何してんだよ、アイリス姉!それが俺の大好きなやつってこと知ってんだろ!!」
「さぁ、何のこと?アタシな~んにも知らないもん♪」
「もう、調子いいんだから、アイリス姉は。ジョナサン、私のフルーツケーキあげるよ」
ディルは呆れながら、隣でふてくされる弟にりんごやバナナ、ブルーベリーなどフルーツがたくさん乗ったケーキをあげた。
お姉さんという印象は揺ぎ無い。
「ディル優しいね。あたしのケーキ食べてもいいよ」
健気なディルに3つ、ケーキを分けてあげた。目の前のスイーツ天国に目がくらみ、つい取り過ぎてしまったのだ。
「ありがと、お姉さん♪」
「ちょちょ、それってアタシの立場どうなるの?!」
「私もケーキ欲しい!」
「僕もも~らいっ」
「…ディル、抹茶ケーキ」
「っはぐ、俺も食べたい!!」
あたしが残したのは、キャロット・抹茶・チョコケーキの3つだけ。3つのケーキを6人で取り合う。それを見たマーロンが、
「オイラのもどうぞ…」
名残惜しそうにちょうど3つ、ケーキを差し出した。一瞬、自分達の行動に恥を感じて手を止めた6人だが、全員1つずつケーキにありついた。
「みんな、味わって食べるのよ?」
年上のアイリスが5人のきょうだいの顔を見渡す。6人が一斉に頷き、一斉に食べ始める。
「おいし~!!」
誰が言ったのかは分からない。だってみんな口々に言ったから。
ここだけ見たら、ケーキバイキングのようだけど、ちゃんとした夕食だから。
「ふふ、こんな夕食も楽しいね」
あたしがみんなの幸せそうな姿を見ながら、マーロンにそっと話しかけた。
「もう1個多めにとっておくべきだったマロ」
マーロンはまだケーキをあげたことに未練を感じているらしい。
「マーロンの場合、モンブランでしょ?」
「うっ、そうマロね」
あたしはちゃんと見ていたのだ。マーロンの取ったケーキがほぼモンブランだったこと。
「みんな食べ終わったわね?ご馳走様でした!」
「「「「「「「ご馳走様でした」」」」」」」
アイリスの後に続き、食事を終えた。
毎日こんな食事をしているのかな?なんだか、とっても羨ましい。
2人きりの食事。周りにメイドや家来がいるけれど…。
両親がいないとき、あたしはマーロンと2人で食事をしていた。
別に悲しいと思ったことはない。小さい頃からずっと一緒にいるマーロンは家族同然だった。
だから、初めて2人だけで食事したときも、いじめられて2人で食事したときも、安心して食事ができた。
両親と食事しているときよりも安心していた気がする。食事のときだけじゃ、ないかもしれない。
マーロンはあたしのことを誰よりも理解してくれていた。
誰よりも近くで見守ってくれていた。
そんなマーロンと一緒にいると、いつも安心していた。
マーロンが傍で支えてくれたから、あたしは頑張ることができたの。
なのに、どうして?どうしてなの?
どうして、あたしを守ってこんなことになっちゃったの?
「マーーーロン!」
最後まで読んでいただきありがとうございましたペコ