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第2話 藍色のバラ


 どうもです!急に寒くなりましたね。。。



 皆さん、体に気をつけてくださいね。





 長い前ふりもうっとおしいので、



 どうぞごゆっくり♪


 花の城に到着してすぐ、王様達に挨拶をしに向かった。

 とても華やかなこの城は、気分を明るくしてくれた。花の城でもあるのだから、色とりどりの花が溢れんばかりに飾られていた。

 王室もまた、華やかで上品な花がたくさん並ぶ。玉座まで上る階段にも、花が咲き乱れている。

王様も王妃様も派手な格好で、お茶をしながら優雅に待っていてくれた。派手すぎて、開いた口が塞がらない。

「ようこそ、花の王国に!!マリアンヌ姫、マーロン君!」

 王妃様が指をパチンと鳴らす。天井から花びらが舞い降りる。びっくりして、何もできずに突っ立っていた。すると、王様が、

「どうも、妻がこんな性格でな。多めに見てくだされ」

 あたしの驚いた様子を察して、頭を掻いて言った。服装こそ派手だが、性格はそれほどでもないみたい。王妃様が派手なんだね。尻に敷かれてる感じがこの短い間で伝わってきた。

「あっいえ、そんなことないです。歓迎していただいてありがとうございます」

「今回は魔歌探しの旅だったね。既に火と水の魔歌は手に入れられたようで…。実は花の魔歌なのだが…」

「どうなってるのか、分からないのよ~。だめよねぇ~」

 恐縮する王様をよそに、王妃様はからかうような目つきで見る。悪戯っぽく光る青い瞳は、子供の無邪気さを残している。

「分からないと言いますと…?」

「す、すぐに見つかるはずなのだ!探しているのだが…」

「見つからないのよ。でも、私言い伝え知ってるからぁ」

 軽い調子で言い、玉座の後ろに並べられた花を手に取る。藍色っぽいバラの香りを嗅ぐ。王様は隣でぎょっと目を見開いている。

「そうだったのか?なぜ、それを早く言わんのだ!」

 一時の間を経て、王様が我にかえったようだ。王妃様はバラを戻して、

「聞かなかったじゃな~い」

「そうだが…」

 たじろぐ王様。王妃様は余裕そうな表情を浮かべているが、顔色が少し悪くなったような…。

「結局どんな言い伝えだったのだ?それが分かれば、かなりの手がかりになるぞ。なぁ、マリアンヌ姫」

「ひぇ!?は、はい!」

 急に呼ばれて、裏返った声で返事をしてしまった。

「その言い伝えは…」


 ごくっ。つばを飲む。

「…あら?なんだったかしら?んーと、あれれ?」

 首をかしげ、懸命に思い出そうとする。そんな王妃様の顔色は初めよりも、青白かった。

「もう、そうゆう誤魔化しはいらぬぞ」

「本当に思い出せない…」

 王妃様は至って真面目に答えた。唇を噛み、眉を顰める。そのたびに、顔を歪めている。

「さっきまで覚えていたのに…。思い出そうとすると、気持ち悪くなるわ」

 頭を抑え、玉座に肘をつく。王様もさすがに心配そうだ。

「王妃様、少しお休みになってください。顔色が悪いですよ?」

 あたしは王妃様を気遣い、声を掛けた。そりゃ、早く魔歌を手に入れたほうがいいかもしれないけど、具合の悪い人に無理をさせることはしたくない。

「そうさせていただくわ…。本当にごめんなさい」 

 王妃様はよろめきながら、立ち上がる。王様も焦って、体を支えてあげる。メイドも横から出てきて、王妃様を連れて行く。出てきたメイドに、

「あのバラはどこから持ってきたの?今すぐ処分して…」

 王妃様がゆっくりと藍色っぽいバラを指差した。やっぱりあのバラが王妃様の具合を悪くした原因なのだろうか。

 別のメイドがバラを持っていくのを見届けて、王妃様はメイドとともにこの場を後にした。


「王様、オイラたちはこれからどうすればいいですか?」

 マーロンの言葉に、王様はこちらに向き直る。

「部屋を準備しておいたので、そこを使って下さいな。あと、我が息子娘がいるから、顔を見せやってくれ。元気な子達だから」

 と子供の話をするときは嬉しそうだった。そして、「では」と言い残し、王妃様の後を追いかけるように去って行った。

 王妃様は大丈夫だろうか。バラのにおいを嗅いでから、具合が悪くなったみたいだけど。今はゆっくり休んでもらいたい。

                     

 あたしたちはそのまま自分達が使う部屋へと案内してもらった。外で待っていたメイドが子供部屋に案内すると申し出てくれたが、荷物を置いた後に行く、と断った。

 早めに挨拶に行くのが礼儀かもしれないが、今はそんな気分じゃない。

 特に、王妃様が気分を悪くしたあの藍色のバラを見てからは、立ち直りかけていた心がまた不安にさいなまれた。


 まだ、心は晴れないままで。



                    ☆ ☆ ☆



「疲れたね、マーロン」

 ベッドにどかっと腰を下ろして、わざとらしく声を掛けた。こんなことするから、マーロンに気づかれたしまうのだろう。

「そうマロね。マレーヌ、今回もすんなりいきそうにないマロね」

 ここで、根堀葉堀聞かないマーロン。彼の優しさだ。でも今はかえってそれが、避けているようにも感じられる。いや、しかしそれは単なる思いすぎだ。

「とにかく気長にがんばるマロ~」

 そうだ、彼はあたしが話そうとするまで気長に待ってくれる。

 なかなか言わないときは、背中を押す一言を言ってくれる。

 彼の優しさには何度救われただろう。だから、迷惑かけたくない。

 だけど、水の王国で頼って欲しいといってくれた。頼っていいの?

「マーロン、今のあたしの気持ち分かる…?」

 唐突に呟いた。

 頼っていいんだよね、マーロン?

「辛くて、涙が出そう…マロ?」

 落ち着いた声が部屋に響く。あたしの心に響く。

 顔を上げると、切なげに微笑むマーロン。涙が溢れて、形振り構わず抱きついた。


 弱虫で泣き虫なあたし。マーロンは全て分かってくれる。全て受け止めてくれる。


 過去にいじめられたりしなければ、街での出来事も軽く吹き飛ばせることができたのかもしれない。昔のことがフラッシュバックして、耐え切れなくなった。


 声を押し殺して、涙だけを流す。涙と一緒に、やなこと全部流せたら、どんなにいいことか。涙を流す度、そう願う。けれど、叶うことはない。


 あたしは、小さな喜びに浸って、些細な悲しみ、辛さ、寂しさを喰らうと沈んでしまう。それはあたしが弱いから。変わらなきゃ、変わらなきゃと思いつつも、変われないんだ。


 そして、マーロンに甘えてしまう。このままじゃ、駄目だよね?

 これで、最後にするよ。だから、今だけ、弱いままでいさせて、

「マーロン!」

 かすれた声で名前を呼んだ。彼だけなんだ。


「あたしは強くなんか…なってなかったんだよ」

「そんなことないマロ!オイラには分かるマロ。マレーヌ、自分に自信を持つマロ。

 火の王国のコンテストも、土の国でピンチになったときも、マレーヌは強かったマロ。堂々としていたマロ。自信に満ち溢れていたマロ」

 しっかりと言葉をつむぐマーロン。

 大勢の人に緊張したけど、当日変更の魔歌を歌いきった。

 みんな捕まった状況で、知恵を振り絞って、魔歌もハープも手に入れた。

「でもあれはやるしか…なかったでしょ?」

 あの時は何も考えず、突っ走っていく感じだった。自信なんてなかった。

「それでも、やり遂げたマロ。ばねにするマロ。今までやってきたことを」

 マーロンはそう言って、一度あたしを離す。落ち着かせるように、ゆっくりと続ける。

「マレーヌは何度も苦難を乗り越えてきたマロ。それが、強さになるマロよ。人は誰だって強くない。何かを経験して、それを強みに変えていくマロ。

 実際マレーヌは強いマロ。心配ないマロ。

 耐え切れなくなったら、オイラに言うマロ。オイラが話を聞いてやるマロ。

 マレーヌを傷つけたやつらをギャフンと言わせてやるマロ!」

 最後は握り拳を作って、にかっと笑う。自然とあたしからも、笑みがこぼれる。

「オイラはマレーヌのお供で、家族マロ。いつでも守ってやるマロ。オイラもそう決めたマロ!

 だから、泣くな、マロ?」

 前にも似たような言葉を言われた。火の王国で喧嘩した時。でも今は、あの時よりも、何か熱いものが胸の中にある。「泣くな」でドキッとしたような…?

「ありがとね、マーロン。あたし、ちょっと元気出た」

 目に涙を溜めたまま、呟いた。

 まだ、完全に吹っ切れたわけじゃない。だからって、いつまでもうじうじしてちゃ駄目なんだ。

「マーロンにいつも迷惑掛けてばっかりだね」

 これで、最後にするって決めたから。いつまでも、マーロンを困らせたくないから。いつまでも、頼ってちゃいけないから。

「マーロンも、あたしに何でも言ってね?」

 今度はあたしにも、頼ってほしい。

 黙ってうなずくマーロン。照れ隠しに微笑んで見せた。


 あたしには、マーロンという大きな存在がいるから、きっと大丈夫。





 


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