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第13話 勝利か、敗北か



 かなり遅くなってしまいました(汗)13話更新です!!




 水の章、最終話。最後に待つのは勝利の微笑み?敗北の叫び?



 マレーヌたちの活躍はいかに!?




 どうぞごゆっくり♪♪



「ここだ、柵を壊してくれ。あれは王様達が保管するために作り出した、水の玉(ウォーター・ボール)だ。そこに、ロベルたちが毒を仕込んだ。ハープに害はないが、人が触れれば溶けてしまう。

 サラサ、あれを浄化できるか?」

 フラフラのウォーテルさんがマーロンに指示を出し、ハープを包む紫色の玉について説明した。

 

 ウォーテルさんは操られていてもなお、サラサを守りたいと言う気持ちもあって、見事、元に戻ることができた。そして、ハープのある牢屋に案内してくれた。


「できますわ!」

 サラサが自信満々に答え、あたしがウォーテルさんの体を支える。

 水の玉(ウォーター・ボール)の前で止まり、サラサが両手を横に突き出し、集中する。すると、手首の周りに水分が集まり、リングになった。

「―水よ、穢れを浄化せよ!」

 声と共に、両手を水の玉(ウォーター・ボール)へと突き出す。リングはサラサの腕から離れ、紫色に濁った水の玉(ウォーター・ボール)を包み込む。リングがくるくると回転して、水がきれいになっていく。

 いつしか透き通り透明になった水の玉(ウォーター・ボール)が割れた。ハープは落ちる前にサラサが優しく持ち上げた。

 こちらを振り返り、朗らかに微笑むさまは女神のようで。


「結構簡単でしたわ。さぁ、お兄様、土の王のところまで案内してください」

 コテツ君にハープを預け、あたしに加勢してウォーテルさんを支える。

「本当にいいんだな?交渉して、すんなりいく相手じゃないぞ?」

 ウォーテルさんが眉を顰めて、サラサを見る。

「巻物を半分取り返さなくてはいけませんもの。マレーヌの為にも、ね?」

 サラサが首を傾けて微笑む。

 ウォーテルさんは折れて、部屋まで案内してくれた。フラフラな足取りだ。無理しなくてもいいと言ったら、

「俺はサラサを守らなくちゃならない」

 と返された。

 あたしの魔歌で回復しても良かったのだが、そうなると、今度はあたしがフラフラになる。というか、さっきの魔歌を歌ったせいで、体は限界に達して、魔力も残りわずかだった。それでも、最後まで頑張らなくちゃ。マリアの魔歌を手に入れなければならない。


「危なくなったら、俺をおいて逃げるんだぞ?いいな」

 とドアの前に来て、ウォーテルさんが呟いた。

「何言ってるんですの?そんなこと絶対にしませんわ」

「そうですよ。みんなで水の王国に帰るんですから」

 サラサもあたしも力強く言った。ウォーテルさんはばつ悪そうにしたが、フッと笑って、あたし達の肩から腕を下ろし、自分の足で歩み、ドアを開けた。

 

”バンッ”


「なんじゃ、おぬしら!?」

 派手に開いたドアの音に、部屋のソファに座っていたロベルが立ち上がって叫んだ。その右隣にロベルと同じ年くらいの男がぎょっと目を見開いている。黒い肌で白髪交じりの男。この男が土の王かな?

「サラサに、風の小娘!なぜここにいる?シーイブ村にいたはず…」

 ロベルは自分を偽らず、本性をあらわにした。テレビとあたしたちを交互に見ながら、混乱している。土の王はウォーテルさんを指差して、

「お前、いつ牢獄から抜け出した!?」

「ついさっきだ。俺はもう、お前達の操り人形じゃない!」

「くっ、なんだと!?どういうことだ、薬の効果は絶大ではなかったのか、ロベル!」

 土の王はウォーテルさんの言葉を聞いて、ロベルに向けて怒鳴る。ロベルは縮こまり、

「わしにも分かりません。まさか、風の娘、お前の魔歌で…!?」

 とあたしの顔をぎっと睨んだ。

「そうよ!それに、あたしは風の小娘じゃない!」

 あたしは鋭く言い放った。

 本当は、魔歌のせいで疲労がたまっていて体がだるい。しかし、悟られるわけにはいかない。状況が不利をこれ以上不利にさせるわけにはいかないもの。

「おぬし達、あの会見はトラップか。我らの目を少しでも、あちらに向くよう…。そして、おぬし達だけで乗り込んだと言うのか」

 頭の回転が速いロベル。全て当たっている。

「話が早いですわ。さぁ、古の巻物を返してもらいましょうか?」

 サラサが要求する。土の王がきらびやかなローブの中から、巻物を取り出し、巻物を開ける。巻物は半分で切れている。

「これが欲しいのか?ほう、いい度胸だ。しかし、こやつの―」

 とウォーテルさんを指差しながら話すが、サラサが割って入った。

「会見はあなた方の目を欺くだけではありませんわ。お兄様のことを世間に公表するためのものでもあってよ?だから、その手はもう通じませんわ!!」

 土の王たちは驚い―ことなく、余裕の笑みを浮かべた。不適に笑う姿に、背筋が凍った。

「そうだったな。分かっておるぞ、我が友たちよ?」

「わしらだって馬鹿じゃない。出てきてよいぞ!」

 次の瞬間、2人の声に反応して、四方から体のごつい男達が現れた。天井から、カーテンの裏から、ドアから。って、ドアの脇ではマーロンとコテツ君が潜んでいたはず。コテツ君は豊水のハープを抱えたままではないか!?

「放すマロ!痛いマロ!」

「やめてください!放してください!!」

 振り返ると、お供2人はごつい男に捕まっていた。しかし、ハープがない。

「マーロン、コテツ君!ハー…」

 あたしが呼びかけたが、マーロンの目を見て、言葉を飲み込んだ。ハープはリュックに隠したのだろう。マーロンがあたしの目をまっすぐ捉えたからそう悟った。ハープを取り返したことがばれたらまずい。

 気がつくと、あたしもサラサもウォーテルさんもそれぞれ捕らえられていた。抵抗しているが、ウォーテルさんでさえ、太刀打ちできていない。

「さぁ、どうする?この状態では、何もできんのう。ひっひっひ」

 ロベルがひきつった笑いで歩み寄ってくる。

「巻物を仲間達に持ってきてもらうよう頼むか?そうすれば、逃がしてやってもいいぞ」

 土の王も不気味に笑う。男達も声を上げて、嘲笑う。

 巻物はマーロンがリュックの中に隠し持っている。しかし、渡すわけにはいかない。


 男に捕らえられてまま、唇を噛む。考えが甘かった。ロベルたちが2人で悠々と待ってるわけなかったのに!どうして、気づかなかったの!?


「さぁ、どうする?

 古の巻物と豊水のハープで大雨を降らして、我らが本当の水の王国をつくろうぞ!水の豊かな国はどちらか?我が小国は一気に王国になるなぁ!!」

 王がじりじりと近づき、手を広げて夢を見る。

「そんなこと絶対にさせない!!」

「そうですわ!あなた方の考えは間違っていますわ!」

 兄妹が叫び、抵抗する。その間、あたしは頭をフル回転させていた。


 大雨を降らせる?雨…、今日はまだ天気が持つ。風向きは東から西。やるっきゃない!


「あんたたち、あたしから離れなさい!あんた達を殺す呪いの魔歌を歌ってあげるわ!!」

 狂ったように喚き散らした。これには驚き、男達は全員あたし達から離れた。みんな自由になった。サラサたちは目を見開いてあたしを見る。

「こんな狭いステージじゃあ、歌えないわ!みんなあたしを掴んで!―風よ、汝を軸に嵐を巻きたてろ!!」

 あたしは呪文を唱えた。そして、みんなあたしの服や腕を掴む。これでみんな無事!


 ”ゴォーーーーー”


 何もかも、吹き飛ばすような風が吹く。耳を塞ぎたくなるような音。あたしたちを中心に嵐が巻き起こる。屋根がミシミシと音を立て剥がれていき、ロベルたちも吹き飛ばしていく。悲鳴も響き渡る。

 土の王が手にしていた巻物が宙に吹っ飛ぶ。それを見て、あたしがマーロンにむかって叫んだ。

「マーロン、巻物を出して!!」

 マーロンがあたしにぴったりくっついたまま、巻物を取り出し受け渡す。

「次は―風よ、旋風を巻き起こせ!!」

 嵐の勢いは残ったまま、今度は旋風が巻き起こる。あたしは旋風と共に、空へ舞い上がった。そして、旋風を使ってあるものを呼ぶ。


 巻物は?どこにある?空をさまよいながら、巻物を探す。

 あたしの持っている巻物が淡い光を放ち始めた。あたしの真上でも淡い光が…!

 上空に飛ぶ巻物を手にとり、2つの巻物の破れた部分をつなぎ合わせる。その瞬間、青い光があたしを包み込む。眩しくて、目が開けられない。


 ふと、あるメロディがあたしに流れ込む。体全身が水のように冷たく、潤っているように感じる。涼やかな魔歌、水の魔歌。














 目を開けた。目の前の空が上に進んでいく。違う、地上の景色が近づいている。あたしが落ちてる!魔力を使い切り、そよ風さえ出せない。口から出てくるのは、呪文じゃなくて叫び声。

「いやーーーーー!まだ死にたくないーーーーー!!」

 何を言っても落ちるだけ。誰かあたしをとめてっっっ!!


 落ちる。地上の景色がもう少し。

 落ちる。地面が見えてきたぁ。

 落ちる。鋭い痛みが襲う。


 ”ボスッ”


 体が柔らかく沈む。そのまま、スッと地面に足がついた。じゃなくて、つかせてくれた。

「マレーヌ、大丈夫…マロ?」

 受け止めてくれたのは、マーロンだった!

「あぁーん!死んじゃうかと思ったーーー!!」

 マーロンに飛びかかり、たかったけど、足に力が入らずその場に崩れておいおい泣いた。

「死ぬかと思ったのはこっちマロ。マレーヌ、急に狂ったし、魔術で嵐も旋風も起こすし、マレーヌ重…なんでもないマロ」

 マーロンを睨んで最後の言葉を言わせなかった。辺りを見渡すと、土の王の家はぼろぼろになり、周囲の家にも少し被害が出ていた。ここまでやるつもりはなかったのに。

「どこにそんな魔力があったマロ?魔歌を歌った時点で魔力はもうなかったんじゃないマロか!?」

 マーロンはよく分かっているなぁ。そんなこと一言も言っていないのに、お見通しのようだ。

「それは―あっ、みんなは!?」

 言葉を遮り、もう1度辺りを見渡した。あたしの少し手前に体を起こすサラサとそれを手助けするコテツ君。

 その数10メートル先に、横たわるウォーテルさんの姿。気絶しているようだ。

 そして、地面を這いながらウォーテルさんに近づく、ロベル。鈍く光るナイフを片手に持って。

「ウォーテルさん!」

 あたしは声をあらん限りにして叫んだ。気絶して動けないウォーテルさんのもとへ行きたいのに、体が言うことを利かない。他の人も気づき、走り寄る。が、ロベルのほうが早い。

「こやつののどだけでも掻っ切ってやるわ!!」

 上半身を起こし、ナイフを振り上げる。だめ!!そう思ったとき、

「やめなさい。もういいわ。あなたたちには失望した」

 冷酷な声が響いた。ロベルの前に黒いローブを着た女性が立っていた。ロベルを見下ろしているようだが、こちらからは顔が見えない。

「おぬし!計画は失敗だ!こやつの喉だけでも…!!」

「もういいって言ったでしょう?―闇よ、万物を圧縮せよ」

 ロベルの手首を掴み、呪文を唱えた。すると、ナイフが黒い闇に包まれて、消えた!?一瞬にして、体が凍りついた。


 あの人は魔術を使った。しかも、王族でないと使えない、属性魔術を。あたしは風の王国の王族だから、風の魔術が使える。だから同じように、あの人は闇の王国の王族だから、闇の魔術が使える。しかも、この人は黒いローブを着た女性。ロベルが知っていると言うことは…水の王国滅亡計画を企んだ人!?


「ひぃぃ!な、何をした!?おぬし、我らを裏切る気か!」

 ロベルが立ち上がって叫ぶ。女性は全く動じていない。

 推測だけどこの女性は火の王国で香水を配っていた人!?

「裏切るも何も、あたしはあなた達の仲間じゃない」

 女性が冷淡に言い放つ。香水を貰ったときに聞いた声。でも、他のときにも聞いたことあるような…?

「ふざけるな!計画を立てたのはおぬしだし、我が国の薬だって渡しただろうが!!」

「そうね。分かったから、黙りなさい」

 声を潜め、腕を突き出す。ローブの中から黒いうねうねしたものが…。よく見ると、髪の毛!?漆黒の髪が伸びてきて、ロベルの体に巻きつく。

 ロベルは声も出せずに、恐怖に顔を歪めている。みるみるうちに、顔が青白くなる。そして、女性は子供が飽きたおもちゃを捨てるように、ロベルの体を放り投げて、舌なめずりをした。髪はローブの中に戻っていく。

「まだ足りないけど、仕方ないわね~」

 はぁっとため息を吐いて、空を見上げる。いつの間にか、空は厚い雲に覆われ、小雨が降り始めていた。

「マレーヌ、よく考えたわね。あなたにしては上出来じゃない」

 空を見上げたまま、呟く。頭に被っているローブがはらりと落ちる。

「あら、まだ駄目ね。あたしの正体を知るのはまだ早いわ」

 ローブを漆黒の髪にかけなおす。あたしは震えながらも、

「あなた一体何者!?なんで、あたしの名前を知ってるのよ?」

 奮い立たせ、女性に向かって叫んだ。しかし、女性はロベルのときと同じで全く動じない。

「またすぐ会えるわ。次は…まぁいいわ。じゃあね、マレーヌ。あと、かわいいお供のマーロン君♪」

 と言い残し、地面を蹴り上げ森に姿を消した。


 何もできずに灰色の空を見上げる。

 すでに土砂降りへとなり、激しく音を立てる。

 声にならない叫びが体の奥底から湧き上がる。



 全身を濡らすのは雨雫。





 どうでしたか?


 この結末は勝利か?敗北か?


 

 それは皆様の考えでおまかせします。




 水の章、やっと最終話までこぎつけました。



 最後まで読んでいただきありがとうございました!!



 

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