第10話 かえられない現実
どうもです!この調子で順調に更新したいですね!!
今回は元に戻って、マレーヌ目線でお送りします。
何も知らずに出来事を話してくれたマーロン。
ある事実を知りながら、話を聞き終えたマレーヌ。
悲しい現実は突きつけられたまま…
どうぞごゆっくり♪
「で、今日マロ」
マーロンがこれまで起きたことを1つも漏らさず話してくれた。あたしが眠らされた次の日(つまり昨日)、王様一団が土の国に出発したけど、襲撃されて…とこんな感じ?とにかく状況は悪い。
「ありがとう、マーロン。…水もらえる?」
「はい、マロ」
脇に置いてあった水を差し出してくれた。マーロンは戸惑った感じだった。
「どうしたの?水に何か入ってるの?」
透明な水を怪しげに覗き込みながら聞いた。マーロンは首を横に振った。
「違うマロ。こんな状況マロに、いつになくマレーヌが冷静だから…」
「え?あぁ、そう…かな?いや、未だに頭痛がしてね」
起きてから、ちょっと頭痛がしてた。頭に重いものを乗せられたみたい。ボーっとする。しかし、今の状況はかなりまずいと思った。マーロンに言ってない、本当の事実があるから。
「大丈夫マロか?まだ寝ててもいいマロよ」
優しく伺うマーロン。あたしは首を傾けて、
「心配しないで?食欲はないけど…何か食べたいな~」
「じゃ、じゃあ、オイラの栗があるマロ♪」
とナイロン袋から栗を取り出した。ほらと差しだされて、あたしは静かに言った。
「ありがとう。でも、あたしは皮ごと食べられないの」
「あっ、そうマロね。うっかりしてたマロ」
勢いよく差し出した手を引っ込めて、照れながら皮をむいてくれる。マーロンは本気で心配して、あたしに頼まれたことは完璧にこなしたいみたい。さっきから、あたしのことを気遣って、てきぱき行動してくれている。
栗を丁寧に剥いてくれてる。リストバンドを外して、上手に力を加え、皮をスルスル…。とめなければ、20こも30こも剥いていただろう。
「えへへ、マレーヌが起きたから。つい嬉しくって…」
と恥ずかしそうに剥かれた栗を手渡した。そんなマーロンを見てると微笑んでしまった。「笑うなマロ!」と彼に怒られた。こんな和やかな状態でいられるなんて、おかしくなったのだ。ほんとなら、もっと深刻になっちゃうはずなのに…。マーロンが和やかにしてくれたんだよ。そういうように微笑んだつもりだった。
「オイラ、サラサ様たちを呼んでくるマロね?その間に着替えたりしておくマロよ!」
と言って、部屋を飛び出した。
初めにシャワーを浴びて、べとつく体をさっぱり洗い流した。シンプルな格好に着替え、濡れた髪を乾かした。鏡の前に来て、髪を梳かし、まとめようとした。しかし、鏡の中の自分を見つめてみた。茶色がかった目。低くも高くもない鼻。薄く、今は血色の悪い唇。顔に張り付く亜麻色の髪。疲れた顔をしてる。見たときの第一印象だった。目の色があせ、うっすらとくまが出来ている。
ちょっと無理しすぎたかな…? でも、まだこれからなんだ…!
いろいろあって、疲れが顔にまで出たみたい。あたしはいつもできるだけ、疲れとかを隠している。だって、周りの人が心配するんだもん。
目をギュッとつぶり、顔を2,3度叩く。気合いを入れなくちゃ!いつもどおり、髪を耳より高い位置で2つにまとめる。これは元気の証!あたしはいつだって元気で、笑顔でいなくちゃね♪そんな意味を込めて、ツインテールを作るのであった。
こんなこと考えてるのを誰かが知ったら、笑っちゃうね。起きたてで考えることがおかしくなってきたかも。
でも、本当におかしくなれたらいいのに。拉致されたじいやさんとウォーテルさん。その2人は滅亡企画に関わっている。襲撃者は絶対に土の国の人だ。だから、あの2人が土の国にいるのは間違いない。そう確信していた。しかし、その事実を言うことはできない。1番信頼しているマーロンにさえ、言っていない。こんなこと、言えない。言えないよ。
あたし1人が抱え込んだ所で、何も出来ないのは分かっている。こんな重大なことを何故言わなかったのか?
分からないけど、ウォーテルさんを悪役にするつもりがなかった。あたしにはどうしても、ウォーテルさんが完全に操られてるとは思えなかった。あの寂しげな瞳を見ていると、サラサのことも考えて、滅亡計画のことを口に出せなかった。
椅子から立ち上がったら、丁度マーロンがサラサを連れて、部屋に入ってきた。
「マレーヌ!!」
サラサがあたしに向かって駆け寄ってくる。そして、抱きしめてくれた。
「良かったですわぁ!心配しましたのよ?」
サラサがあたしを放して行った。あたしははにかんで、
「ごめんね。あたしが眠っている間に…、色々あったんだね?」
「えぇ、話を聞いているなら早いですわ」
サラサが表情を引き締めた。
「何かあったの?」
「会議で決まったことをお話しするわ。座りましょ?」
丸テーブルの傍にあった椅子に座り、話を始めた。
まず、襲撃の情報が入ってから、医療チームや兵士を送り込み、たくさんの情報を迅速に得たと言う。それから会議で、国民への発表、土の国と交信、襲撃者の捜索が決まったらしい。そして、
「母上たちがいる、村へ訪問することになりましたの。村への訪問には私も行きますわ」
サラサは簡潔且つ、正確に話した。
「オイラたちはどうすればいいマロか?」
「そう、そこですわ。できれば、2人にも来てほしいという意見が出ているの。でも、マレーヌは起きるかどうか分からなかったし、起きても体調は万全じゃないだろうと思って。私は反対しましたの。
でも、マレーヌが行くと言うのならば止めませんわ。マレーヌの意志でいいわ。決めていただきます?」
ためらいがちに聞いてきた。あたしは迷った。あたしはその村に行って何をすればいいの?行っても、足手まといになるだけじゃないかな?何の意味もなく行くなんて駄目じゃないかな…。
「ねぇ、あたしは村に行って何をすればいいの?」
と尋ねると、サラサもマーロンも驚いた顔をした。
「お得意の魔歌があるじゃない?」
「…そうだよね」
本格的に頭をやられてしまったのだろうか。あたしは魔歌探しの為にここにきて、唯一魔歌が好きなことなのに…。その魔歌さえ忘れるとは。ずっと眠っていて、頭がちゃんと働かない。
「マレーヌ、大丈夫マロか?」
何気にマーロンが聞いてくる。大丈夫じゃないよ。それすら答えずに、自分でも分からないまま微笑んだ。
「それで、行ってくださるの?」
「もっちろん!万全って訳じゃないけど、あたしを必要としてくれるんだもの。行くわ!!」
あたしは期待を込めて聞くサラサに、歯を見せて笑った。
「マレーヌが行くなら、オイラも行くマロ!!」
「分かりましたわ。出発は明日の朝の予定ですわ。今日はゆっくり休んでくださいね?
準備はしっかりね。滞在期間が未定ですので…。お願いしますわ」
サラサはそう言い残し、部屋を去った。そんな彼女の姿を見て、言葉が零れた。
「サラサ、今とってもつらいはずなのに。強いよね…」
「そうマロね。家族みんながひどい目に遭っているマロ」
その中の1人が水の王国を滅亡させる計画に関わっていたら?
言葉を飲み込んで、遠くを見つめていた。
「あの、マレーヌ?何かあったんじゃないマロか?」
マーロンがあたしに聞いてきた。心臓がドキリと音を立てる。きっと滅亡計画について感づかれた?マーロンはいつだって、あたしが悩んでいたりすると、すぐに分かる。普段なら、マーロンに話していただろう。でも、
「えぇ…なんにもないけど…?」
今回ばかりは誤魔化すしかない。無理だもん。滅亡計画なんて、怖くて話せないよ。マーロンはあたしの目をじっと見つめる。
「だから、大丈夫だってば!とにかく、明日のことを第一に考えなきゃ」
目を逸らし、握りこぶしをつくる。マーロンは納得いかない様子。
「そりゃ、明日のことを考えなきゃいけないマロ。でも、オイラはマレーヌのことを第一に考えないと…オイラはマレーヌのお供なんだから」
弱弱しく語るマーロン。きっと、あたしが危険な目にあったことに責任を感じているのだろう。
「分かってるよ。マーロン、心配要ら「本当マロか!?」
あたしの言葉を遮るマーロン。
「絶対におかしいマロ。だって、あの時、オイラ、ウォーテルさんに殴られたマロよ!そのまま、マレーヌだって…何されたマロ!?」
「マーロン…」
「なんで言ってくれないマロ…?」
マーロンの言葉に俯くあたし。彼は心の奥からあたしのことを心配している。
「オイラが頼りないマロから?」
「違う、違うよ!?」
あたしは必死に否定した。マーロンは誰よりも頼りになる人だ。
「じゃあ、言ってマロ…」
訴えかけるように呟く。そんな消え入りそうな声に、あたしは答えられずにいた。
「そっか、やっぱりオイラは頼りないって…ことマロね。オイラ、外へ出てくるマロ…」
ぽつりと言った。そして、空中を滑って部屋を出て行った。
呼び止めることさえしなかったあたし。…最低だ。
大切な人を傷つけた。こんなあたしがまた一人、また一人と誰かを傷つけてしまうんだ。
どうでしたか??
マレーヌとマーロンがまた喧嘩!!しかも、ただの喧嘩じゃないです…。
マレーヌはマーロンを1番頼りにしているのに…
もどかしい想いでマーロンは立ち去っていく…
届かない想いが2人をかえってギクシャクしてしまう。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
次回、このまま王妃様たちの待つ村へ・・・
お楽しみにペコ