第8話 緊急事態、眠りへ
今週、地獄のテスト期間に入りまーっす!!
その間更新できないので、頑張ります…^^:
どうぞごゆっくり♪
~地下4階 図書室~
コテツ君と話し終えて数時間。また、図書室で本を読んでいる。マリアが幻の大地から帰還して、病死したことに目をつけて、幻の大地について調べている。今までに調べた本には手がかりがなく、どの本も個人の意見が記述されているだけで、想像されたものが多い。
闇の王国は、地に飢えた悪魔や怪物が住んでいる。悪魔の水飲み場・血の泉。針が無数に生えている山など、地獄のような場所。
光の王国は、精霊や天使、神に近い存在の聖者がいる。光の溢れる花畑に、聖なる水の流れる小川などがあり、幸せの楽園と称されている。
どれも大差はなく、今読んでいる本に期待するしかなさそう。
マリアの生死、謎のローブの女性、サラサとウォーテルさん、水の王国に納められた魔歌。問題が多すぎて頭が混乱してしまう。今にもそんな問題から逃げ出したい気持ちでいっぱい。
風の城での生活は退屈だったけど、少なからず問題は起きなかった。たとえ問題が起きても、いつの間にか解決していた。今となっては、風の城生活が懐かしくなってくるほど…。
でも、楽な道ばかり通っていられない。1人でどうにかしていかないと!そうしてあたしは強くなれるんだ。マリアを超える歌姫になるって決めた。この目標を実現させる為なら、何時間でも何冊でも、読んでやるーー!!
そんなことを心の中で語っているうちに、やっと1冊読み終えた。分厚い本でかなり苦労した。幻の大地についての本は、後2冊。今読み終えた本にたいした情報はなかった。この2冊もあまりいい手掛かりを得られそうにない。小さくため息をつき、次の本に手を伸ばした。
「マレーヌ、オイラ読み終えた本を戻してくるマロ」
マーロンが背中を伸ばした。背骨がボキボキと鳴る。
「オイラが読んだこの本、特に気になることはなかったマロ。残りの本も同じだろうし!
戻してくるついでに、他の本を探してくるマロ~」
読み終えた本をマーロンが丁寧に重ねる。それを見て、慌てて笑顔を作る。
「あたしが行く!マーロンは持ちきれないでしょ?」
完全な嘘。マーロンは怪力の持ち主なんだから、分厚い本が何冊積み重なっても楽勝なはず。しかしあたしは、本を読むのに飽きて、1度本から目を離したくてとっさに嘘をついたのだ。時間つぶしよ!!
「いいよ、いいよ無理しなくて!じゃあ持って行くわね☆」
マーロンの返答を待たず、重ねられた本を持ち上げる。ズシッとした重みがあるけど、顔には出さず、急ぎ足でその場を去った。
作戦成功!重い足取りにもかかわらず、心は軽い足取りで、本棚を突っ切っていく。幻の大地について書かれたこの本たちは、図書室の1番奥で左端の本棚にあった。結構時間、潰せそう~♪さっきの決意はどこへ消えたのか。たまにはいいのよ!!
来たときよりも美しく~♪どこかで聞いた言葉を繰り返しながら、五十音順に並べていく。少し手間が掛かるけど、ちゃんと並べないとね♪鼻歌交じりに作業を進めていく。
全てを戻し終えたら、お腹が鳴った。マナーモードのマイコンを覗くと、もう12時を過ぎていた。早くお昼ご飯を食べて、サラサのレッスンを見学しなきゃ~~!少し余裕があるので、他の本も探しておこう。鼻歌を続けながら、棚と棚の間をジグザグ歩いていく。
そのうちに、反対側(右端)まであと少し。と、足音が近づいてくる。図書室はカーペットだから、足音が鈍い。反射的に曲がり角に隠れ、鼻歌も止める。誰かがひそひそと会話をしているようだが、足音は1つ。あたしは結構耳がいい。魔歌のために鍛えた聴覚がこんな所で役に立つとは!外なら、風に乗って聞こえる音をたどるのだけど…!
人影は角で立ち止まった。丁度、あたしの曲がり角から見える。あれは、じいやさんだ!マイコンを両手で持ち、誰かと会話をしている。だから、声は2つで足音は1つなんだ。って、図書室でマイコンの通話は禁止だったはずだけど…。
「えぇ、上手くいっておりますぞ!」
楽しげな声を上げるじいやさん。会話相手が、
『そうか、そうか。では、いつごろ実行するのだ?』
落ち着いた声を出す。50代男性ってところかな。何を実行するのだろう?
「もうそろそろじゃ。すぐにでも決定するだろう、そっちに行くのが!それから実行じゃ」
『ほう。で、あの執事は手のうちか?』
「大丈夫じゃ。わが国の薬は素晴らしいのう。あやつはわしらの操り人形じゃ」
じいやさんがにやりと笑う。これって何の話なの!?絶対に危ない話だ!!冷や汗が溢れ出る。
「あのローブ女は素晴らしい知恵の持ち主じゃな。王子を使うのは考えもつかんわ。しかも、風の小娘が来るのも分かったなんて…。ほっほっほ」
不気味に笑う。ローブ女に王子に風の小娘!?それって、火の王国にいたローブの女性とウォーテルさんとあたし??じいやさんは会話相手と何を企んでいるの?
『おしゃべりなじいさんだな。あまりペラペラしゃべるな。いいかこれは…』
「分かっておる。水の王国を破滅へ追い込ませ、我が土の国を繁栄させる。そうでしょう?」
息が詰まる。足がガクガクと震える。
『分かっておればよい。この計画は必ずしも成功させなければなるまい。ではな、親愛なる友よ』
プツンとマイコンの画面から光が消える。じいやさんはマイコンをスーツの中へしまい、杖を右手で持ち、来た道を戻っていく。遠くでマーロンの声がする。「さよならマロ~」、じいやさんに挨拶したのだろう。じいやさんも挨拶を返している。聞こえなくなった途端、その場に崩れ落ちた。頭の中で色々な考えが交差する。分からない分からない!!
時間が経つと、落ち着いてきた。そして、力のこもらない足を奮い立たせ、まずマーロンの元へ急ぐ。
「マーロン急いで!」
汗を流し、今はあたし達しかいないから構わず大声で呼ぶ。
「どうしたマロ?そんなに焦って…」
首をかしげるマーロン。そんなマーロンを掴んで、図書室を出る。
「マレーヌ!何があったマロ!?」
あたしは答えることすら、できず走る。
状況を理解できていない、今、マーロンに土の国が水の王国を滅亡させようとしていることを話しても2人で混乱することになる。とにかく、王様達に話さないと!だって、滅亡を企む土の国に行こうとしてるんだ。
でも、待って?土の国の計画を話すってことは、ウォーテルさんが王子だって事も言わなきゃならない。ウォーテルさんが王子だって事がばれたら、サラサとウォーテルさんは引き離されちゃうよね。でも、水の王国が滅亡したら元も子もない?2人がもう2度と会えなくなる?サラサとウォーテルさんはもっとつらい思いをする。
それでも話さないと。いやでも、土の計画を話したら2人が…。あぁ、もうどうしたらいいの!?
廊下を突っ切り、階段を駆け上がる。その時だった。放送が流れる。
『速報をお伝えします。昨夜の会議を引き継ぎ、先ほどの会議で決定されました。土の国との対談が決まりました。会談日は明後日9時、対談場所は土の国。王様と王妃様、同行者として補佐役のロベル・タイタン、王家直属の執事兼ボディーガード、ウォーテル・スイーザ、他メイド3名、家来5名がつきます。
王国を出発するのは明日午前11時になります。出発式が10時30分から行われます。
対談内容としては、両国の政治や貿易についてです。今回の会談で土と水、素晴らしい関係を築けるよう祈りましょう。以上です』
そんな!?遅かったって言うの??そのまま、階段を上りきったが、前のめりにこけてしまった。
「マレーヌ、大丈夫マロか?!立ち上げれるマロ??」
マーロンが心配そうに手を差し伸べる。マーロンの顔が歪む。
「マレーヌ!?どうしたマロ?何で泣くマロ」
「あたし、どうしていいか分からない!」
泣きじゃくるあたし。そのわけも分からず、背中をさすることしか出来ないマーロン。
「どうされたんですか?」
声が振ってくる。冷静な低い声。今は顔を見たくない人の声。サラサの執事で、サラサのお兄さんの声。
「ウォーテルさん…」
「大丈夫ですか?もうそろそろレッスンの時間なので」
「あの、ちょっと待ってください。今はそんなことしてる暇はないの!」
あたしは声をからして叫ぶ。それでも、ウォーテルさんは見下したまま、
「サラサ様がお待ちしています」
あたしの体を無理矢理起こす。強い力に抵抗も出来ない。
「いたっ」
「やめるマロ!痛がってるマロ!」
マーロンが引き離そうとするが、今の彼はリストバンドをつけていて、そんな力はない。
「聞いたんでしょう?自分たちのことも計画のことも…」
冷淡に聞こえる声。あたしは抵抗をやめた。
「計画…?」
何も知らないマーロンは首を傾げた。
「知らないのか…マレーヌ様は知っているのですね。では…」
”ドスッ”
「かはっ!!」
ウォーテルさんの拳が、マーロンのお腹に入った。マーロンの体が後ろに吹っ飛び、壁に当たり、鈍い音を立てる。
「マーロン!!」
ウォーテルさんに腕をつかまれたまま、叫ぶ。マーロンが、マーロンが!!
「大丈夫です。気絶したくらいで、怪我はしてないでしょう」
冷たくあたしを見据える。ウォーテルさんってこんな人だった?ていうか、なんで土の計画を知ってるの!?ウォーテルさんは利用されてるだけなはず。王子として…。
ジャア、執事ハ誰ノコト?
じいやさんが手の内だと言った、あの執事は?ウォーテルさんはサラサの兄で王子。サラサの『執事』。
ウォーテルさんは操られている!あたしは計画を知っている。操られているから、他の人に計画を話させないようにするため、あたしを足止めしている。
「ロベルさんは気付いていたんだ。俺達のことも計画もあなたが盗み聞きしていると…。だから、俺に
あなたを止めるようにこれを渡した」
スーツの中から、何かを取り出す。黒い香水。これは、ローブの女性が持っていたのと同じもの!
「あなたには眠ってもらいます。自分たちが土の国に行っている間、計画を実行する間…」
「待ってよ!あなた、そんなことして、サラサが喜ぶと思うの!?」
ウォーテルさんが顔を歪める。サラサのこととなると、ウォーテルさんだって…。ふいにあたしを掴んでいた手で頭を押さえた。歯を食いしばって、頭の痛みに耐えている?
「えっ!?どうしたんですか…」
がくんと座り込むウォーテルさん。
「あなたに、心配される理由はない…。それに、サラサは…」
”シュッ”
言葉を閉ざし、あたしに向けて、香水をかける。きつくて甘い匂いが鼻につく。頭がボーっとする。体に力が入らない。
「マレーヌ!?」
遠くから、サラサの声が聞こえる。
あたしはウォーテルさんに抱きとめられ、眠りの世界へと落ちていく。
「あなたはただ眠っているだけでいいんです」
そっと呟くウォーテルさんの声は、何の感情も込められていない。
「マレーヌ!どうなさったの!?」
そして近寄ってきたサラサがあたしの名前を呼び、ウォーテルさんがあたしの体を揺する。
消えゆく意識の中見えたのは心配する2人の兄弟の顔。
どこか寂しそうな瞳も見えた。
眠ったら、駄目なのに。頭が真っ白になる。
2人を、水の王国を助けたかった。既に手遅れか…。
眠りの世界へ…
マレーヌが、マーロンが、水の王国が大変なことに…!!
物語が大きく動き出しました!!((遅っ
最後まで呼んでいただき、ありがとうございましたペコり
コメなどお待ちしております~~ペコペコ