第3話 メールで…
案内してもらったのは地下3階。サラサや王様達王家の人や王家直属の人たち、位の高い人たちの部屋がある階。ちなみに、地下1階はパーティ会場、地下2階はメイドや家来の部屋、地下4階は図書室や研究室がなど、地下5階は家宝や珍しい品を保管する部屋があるらしい。
あたしは入って右側の奥から3番目、角を曲がった部屋になった。もう一つ角を進むとサラサの部屋、向かい側にウォーテルさんの部屋となっている。
和の部屋かなと想像していたが違った。意外にも部屋の中も家具も洋風であった。
どのくらいこの部屋で過ごすのかな?部屋に入った途端、そんなことを思ってしまった。ネガティブになっちゃ駄目だぞ、マレーヌ!
「私は反対側の部屋だから、いつでもお呼びになってね。私、これからレッスンの予定を立てに2階に行ってきますわ。では、失礼」
と言い残して、コテツ君と長い廊下を歩いて行った。それを見送って荷物を整理した。そして、ため息をついた。
「ふぅ、着いたのはいいけど、どうなるんだろ?何だか、上手くいきそうにないね」
「マロ~、火の王国では思いのほか、すぐに魔歌が手に入ったマロね。今回は水と土の和解で魔歌が手に入るって感じマロ??」
苦笑いするマーロン。
「むりむりむり!王様達があんなに悩んでるんだから、あたしが出来るわけないじゃん…。とりあえず、風の王国とリリーたちに連絡入れとこうかな」
あたしはマイコンを手に取り、まず風の王国向けにメールを作成した。
「えっと、まず、火の王国の魔歌を手に入れましたっと」
マイコンのタッチパネルで文字を入力していく。
「コンテストで準優勝したことも伝えておけばいいマロ!」
「そうね、喜ぶかも~♪」
といった具合に風の王国とリリーたちに向けて、メールを作成し送信までいたった。
「無事完了!早く返信こないかなぁ」
メールを送る相手があまりいなかったあたしは、メールの送信者がいること、先進が来ることを嬉しく思った。マイコンをテーブルにおいて、椅子に座ってウキウキしながら返信を待った。その様子を、
見たマーロンが、
「何だか、この旅に出てマレーヌ変わったマロね」
そっと呟いた。あたしはびっくりして、振り返り聞いてみた。
「え?何で?」
「だって、少しの間で成長した感じがするマロ。ものの考え方も、魔力も、魔歌も、顔つきも。迷いがなくなってきて、強くなった感じがするマロ。
魔歌もお城にいた頃とコンテストでは違う感じがしたマロ。音程も安定してたし、声が伸びやかになったんじゃないマロ??顔つきだって、しっかり前見てる感じマロ。昔はなぜか、どこか俯いて無理して、心がぱぁっとしきれてなかったマロ…」
マーロンが淡々と言った。
自分でも変わったなと思っていたけど、マーロンに言われてしっかり時間した。
そしてマーロンは、こんなにもあたしのことを見ていてくれたんだ。しかも、旅をする前から。きっとお供として仕えたときから、ずっと見ていてくれたんだと、マーロンの話を聞いて思った。
「マーロン、ありがと。あたしもこの旅に出て良かったと思うよ!!」
笑顔で言ったら、マーロンは照れた様に帽子を深く被りなおした。ちょっと頬を赤く染めて。こういう姿は可愛いのよね~。
「そうマロね。水の王国でも頑張るマロよ。オイラもが…」
”ピロロロン”
マーロンが喋っている途中、マイコンが鳴った。
「あうぅマロ…」
マーロンは悲痛の声を上げた。あたしは軽く苦笑してマイコンを開いた。風の王国からだ。
『マレーヌ様、マーロン様
おめでとうございます!無事に到着も出来たようで、
御両親を始め、メイド、家来一同、喜んでおります!
水の王国でのご活躍を期待しております。
最近は王妃様の体調も優れており、落ち着いた日々を過ごしております。
ここで悲しいお知らせが、
モダン先輩が学習院に戻って、再度お勉強することになりました。
私どもも承知していたのですが、秘密にしてほしいと言われ、このような形でお伝えします。
3年間、勉強した上で、戻ってこられるそうです。再開するのが待ち遠しいですね!!
戻ってこられたときには全ての勉強を見ると張り切っておられました。
最後になりましたが、マレーヌ様、マーロン様、お2人の健闘を祈っています。ファイトです!
リア』
「リアからだ!モダン、何も言ってくれなかったから…。マーロンは知ってた?」
メールを一緒に見ていたマーロンに尋ねてみた。
「オイラも始めて知ったマロ。まぁ、教え子がいないんだし、3年間だけマロよ」
マーロンも知らなかったんだ。マーロンの言うとおりだし、モダンは気まぐれな人だったしね!少し寂しいけど、3年間だけよね!そう思うとあまり悲しくなかった。
”ピロロロン”
30分程経ってから、もう1通メールが来た。
『マレーヌ、マーロンへ
無事に到着してあたしもフィリーも安心しました!大変みたいだけど、頑張って!!
サラサは何度も会った事があるけど、とってもいい人よ!!
琴が上手だったはず。最近はハープも始めたって聞いたわ。デュオとかしちゃえば(笑)
いい結果を楽しみにしてるわ!
丁度、パレードの件について情報収集していたところよ!入った情報を報告するわね!!
何人かが黒いローブの女性から香水を貰ったらしいわ。
匂いを嗅いだら、怒り、悲しみ、恐怖などを感じて、あまり良くない状況になったみたい。
ローブの女性の素顔はあまり分からなかったみたい。
虚ろな漆黒の瞳をしていて、見た途端寒気がしたらしいわ。
特徴的なのが、額の真ん中に横一直線、傷があったって。
傷から何とも言えない威圧的なオーラが出ていたらしい。
少ない情報だから、まだまだ調べてみるわ!何か嫌な予感がするけど、お互い頑張りましょ!
んじゃ、バイバイ!!』
漆黒の瞳に額の傷。あたしは顔をあまりよく見てないけど、血色の悪い肌で、瞳と同じ漆黒の髪をしていた。ほんと、嫌な予感がしてならない。リリーのメールを見た後、なかなか言葉が出てこなかった。
あたしは何も言わずにマイコンを閉じた。マイコンから反射する光を見ていると、胸騒ぎがした。椅子から立ち上がり、窓の前に立った。窓の外は湖が広がる。色鮮やかな魚が集団で泳いでいる。澄んだコバルトブルーを見ていると、少しずつ落ち着きを取り戻すことが出来た。
「マーロン、どう思う?黒いローブの女性のこと…」
窓に手を当てて、その冷たさを感じる。マーロンと顔を合わせることが出来ず、水中を眺めながら聞いた。怖くてこうしていないと、声が出せない。
「危ない感じがするマロ。放っておけないけど、どうしようもできないマロね」
マーロンはため息交じりの声で答える。
”どうしようもできない―――”その言葉に自分の無力さを恨んだ。くるっと、マーロンのほうを向き、
「ここで立ち止まっても駄目よ!あたし達に出来ることをやりましょ!!」
強く言い張った。驚いて後ずさるマーロン。
「出来ることって何をするマロ?」
「え~っと…」
マーロンが怪しい顔で、
「何も考えてないマロね??」
あたしを見る。焦りながらも、
「あっ!じいやさんに資料を頼んだでしょ?マリアについて調べましょうよ!何かヒントが得られるかも。図書室へ直行ー!」
ぱっと思い出す。即行動があたしのモットー?マーロンを引っ張って図書室へ向かった。
どうでしたか??
なんとも言えませんね??アハハ
とにかく!!たくさん更新するので、
これから水の章をたっぷり楽しんでください!
最後まで読んでいただきありがとうございましたペコリ