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第6話 大切な人へ


 更新遅れてしまいました!!


 

 リリーとフィリーの仲直りのためにマレーヌが歌います!


 


 どうぞごゆっくり♪お読み(お聞き)ください~



「110番、マリアンヌ・ピアニコさん、マーロン・D・ムーケさん、どうぞ!」

 司会者があたしたちの名前を呼んだ。2人で顔を見合わせ頷いた。ステージの真ん中に立つ。あたしはスタンドマイクの前に立ち、その隣の小さな椅子にマーロンが座る。

「みなさん、元気ですか~?」

 マイクに向かって声を出す。大勢の人がイエーイと答えてくれた。

「あたしは今、魔歌の練習をしています。ぜひ、皆さんに聞いて頂けたらと思い、出場しました」

 一呼吸置いて、

「今回歌う魔歌は、家族や恋人など、大切な人に届ける魔歌です。大切な人の顔を思い浮かべながら、聴いてください」

 一礼して、マーロンとアイコンタクト。ス~と二人の呼吸が合う。



―――大切なキミを傷つけてしまった ほんの些細なことだったのに

   

   Ah 大好きなキミ 一緒にいるといちばん落ち着くんだ

   

   Ah キミがいないだけで これほど悲しくなるなんて


   胸の奥のこの気持ち 炎のように熱く熱く 燃え上がる



   キミがいないと僕は 僕じゃないんだ

   

   僕がいないとキミは キミじゃないんだ きっと


   分かり合える日が来る そんな日が来るのを信じて―――



 1コーラス歌い終えると、マーロンが引き継ぐようにギターを鳴り響かせた。マーロン、超カッコイイ!さまになってるぅ~。ギターが落ち着いた所で歌い始めた。



―――小さな炎が心の内で灯った あの日の想いが蘇る

  

    そして 夢見た未来が 待っている


    手をとり まっすぐ歩いてゆこう



    僕はどこまでも歩けるよ 遠く彼方へ


    僕はいつまでも灯し続けるよ 希望の炎


    キミがいてくれるから―――



“ジャジャ~ン”


 ギターの音で締めくくった。ペコっと一礼。


《フォーーーー!》


 拍手の渦が巻き起こる。やった、大成功!!

 観客席の人たちは飛び上がったり、泣いたりしている。マーロンが小声で、

「良かったマロね!鏡もばっちり撮れてたマロ」

 といってスピーカーを指差した。そこにはあたしとマーロンが映るように鏡が置かれていた。いつの間にか置いてたんだ。前に出てササッと鏡を取り、みんなに笑顔を見せ、舞台そでに隠れた。

 そのまま、フィリーの元へ急いだ。マーロンと話をしたかったけど今はそれどころじゃない。リリーが戻ってきてくれないとあたしが魔歌を変えたり、魔術を使った意味が無い。そう、さっきの魔歌は家族や恋人に向けての大切さを歌った魔歌だったけれど、あたしはリリーに分かってほしかった。もちろんフィリーにも。

 身近な人の大切さ。2人は近くに居すぎて、ずっと分からなかった。お互いはいて当然だと思っていたのだ。でもそれはとてもすばらしいこと。あたしは2人といてこう思った。お互いがいてくれないと、リリーとフィリーは本当の自分になれない、と。

「マレーヌ、マーロン!!」

 大粒の涙を流しながら走ってくるフィリー。顔を真っ赤にして肩を震わせている。リリーとケンカしたときもこんな感じだったけど、そのときとは違う。前は悲しみ、怒り、悔しさといった負の感情を持っていた。今は感動、それから…

「っマレーヌ、すごかったよ。っ僕、いつの間にかこんなに涙が出て…」

 微かな声だが、口調はハッキリしている。それだけ、心で感じて心が揺れたんだ。

「聞いてると、リリーのことが頭に浮かんで、急にリリーに会いたくなって」

 フィリーは涙が止まらないみたい。だけど、言葉が溢れ出てくる。

「リリーに謝りたい。リリーにありがとうって言いたい!…リリーにも聞いてほしかった」

「心配要らないマロ!リリー姫にもちゃんと聞いてもらったマロ!」

 マーロンが励ますように答えた。続けてあたしも、

「フィリーみたいに、リリーも感じてるはずよ?」

 と告げた。

「後は出番までにリリーが来てくれればいいんだけど…」

「絶対来る!あの魔歌を聴いたなら来るよ!僕そんな気がするんだ!!」

 不安げなあたしと対照的にフィリーは強く言い張った。

「―――リー。どこ――――?―――――」

 風に乗って聞こえた微かな声。すぐにあたしは悟った。

「リリーの声だわ!フィリーを探してる!」

 フィリーは敏感に反応した。

「リリー!僕はここだよ!!」

 また、涙を流しながら大声で、血を分けた双子の名を呼ぶ。

「―――どこ?フィリー?―――いるの?」 

 双子の姉も、弟の名を呼び探している。フィリーはしきりに辺りを見渡している。あたしは風に乗る声を頼りにリリーを探す。人が多すぎて何処にいるのか分からない。

 そのとき、フィリーのイヤリングが赤く光る。太陽を浴びて反射する光とは違う。何かに反応するようなハッキリとした光。

「何?これ…」

 フィリーが左耳にぶら下げているイヤリングに触れる。すると、光が一直線に光を放つ。

「こっちなんだね!?」

 光の方向にフィリーが走り出す。それをあたしとマーロンが追いかける。

「見つけた!リリーこっちだよ!」

 人ごみの中、手を伸ばす。2人の涙がとめどなく溢れる。こっちまで泣いちゃうわよ…!

「フィリー!?あぁフィリー!!」

 リリーがこちらに駆けて来る。リリーも大粒の涙を流している。周りの人はびっくりして道を開けていく。そして、やっと2人は再会して、抱き合い、その場に座り込む。2人とも名前を呼び合い、子供のように泣いていた。

「マーロン、あたし泣いちゃうかも…」

「マレーヌよくやったマロ!魔歌の力で、2人の心を衝き動かすことができたマロ!!」

 マーロンは興奮している。

「それに格段に魔歌が上達してるマロ!!」

「ほんと!?あたし上手になったんだね?自信持ってもいいの!?」

 マーロンに言われて少しずつ自信が湧いてきた。

 って浸ってる場合じゃない。感動するのはいいけど、周りの人たちすごい目で見てるよ!大声で、火の王国の姫と王子が泣いているってとんでもない光景だよ!!2人とも未だに涙を流しているけど、落ち着きだしこの状況をすこーしずつ飲み込み始めたようだ。

「マレーヌ!早くこの2人を他の場所に連れて行かなきゃまずいマロ!!」

 なかなかその場を動けない2人を見て、マーロンがあたしに助けを求めた。あたしは2人の元へ駆け寄り、

「い、言われなくても!!―――風よ、汝とその使者を運べ!!」

 と呪文を叫ぶ。強い風が吹き、4人を空へと舞い上げた。あたしたちは風に乗り、人気ひとけの少ない場所を目指した。そして、中央広場からそう遠くない所に降り立った。時間的にも、休憩が入るから問題はない。

「ふぅ、2人とも大丈夫?」

 あたしは肩で息をしながら聞いた。魔歌を歌って、色んな魔術を使ったから、結構体力を消耗したのだ。

 2人はほこりを払って立ち上がった。目は真っ赤で腫れている。予想以上に泣いたみたい。

「えぇ、あなたたちにまで迷惑かけちゃったわね。ごめんなさい」

 リリーが鼻をすすりながら答えた。

「それから、ありがとう。あたしたちの為にあの魔歌を歌ってくれたんでしょう?」

「ま、まぁね♪2人にお互いの大切さを分かってほしかったから…」

 リリーに言われて、照れくさくなっちゃった。

「リリーごめんね。リリーは、いつも僕のことを思って怒ってくれてたのに」

 フィリーがぼそりと呟いた。

「そんなことないわ。あたしこそ、強く当たってごめんなさい!」

 リリーがフィリーの手を取りながら言った。両手をぎゅっと握り締める。

「「これからもよろしくね、フィリー・リリー」」

 ほぼ同時に言った。2人は可笑しくなって声を上げて笑い出した。それにつられてあたしもマーロンも一緒になって笑い始めた。笑い声が晴空に響き渡る。



                     ☆ ☆ ☆


「じゃあ、行って来るわね!!」

「ちゃんと見ててね!」

 順番がきたリリーとフィリーはそう言って、楽しそうに控え室に向かった。そんな2人を見ているとわくわくしてきた。

「マレーヌ、顔がにやついてるマロ」

 マーロンに突っ込まれて、顔を引き締めた。

「だって、楽しみなんだもん!!2人のダンス!!」

 と笑顔で言った。

 他愛のない会話をしながら待っていると、

「いよいよ、ラストとなりました!!186番、リリー・ファランさんとフィリー・ファランさん!!どうぞ~~!!」

 だが、2人は出てこないし、照明まで落ちてしまった。周りがざわざわし始めた。何かあったのかな?あたしも不安になってきた。



 ”ドンドコ ドンドコ ドンドコ ドンドコ”


 太鼓の音が鳴り始める。


 ”ジャ~ン ジャジャジャ~ン”


 琴の様な音も鳴り始めた。照明がパッとつく。真ん中にはポーズをとって立つリリーとフィリーの姿。

 かっこいい!!目を輝かせた。

 音楽が再度強くなり始めると同時に、2人がバッと顔を上げた。しっかりとした眼差しを向ける。

 太鼓の軽快なリズム。広がるような琴。高く響く笛の音色。民族的な音楽に合わせてリリーとフィリーの手が、足が、体全体がしなやかに動いている。2人がぴったりと同じ動きをしたかと思うと、全く違う動きをして、あたしたち観客を魅了する。

 音楽が盛り上がりに差し掛かるとき、リリーは左手、フィリーは右手を、音を立てて手を叩き、

「―――炎よ、飛び舞う不死鳥となれ!」

 手を離した瞬間、叩いた場所に炎が生まれ、その炎は不死鳥の形を成した。炎の不死鳥は3メートルほどの大きさで、2人の周りを優雅に飛んでいる。

「「「うおぉ~~」」」

 観客が一斉に声を上げた。あたしもマーロンも他の人たちも心を打たれたのだ。魔術で生み出した不死鳥と共に2人はまた踊る。

 音楽が終わると同時に2人が、

「「ハッ!!」」

 と叫び、不死鳥を指差した。すると、あたしたちの頭上にいた炎の不死鳥ははじけ、光となって降り注いだ。夕暮れに染まる空と共に降り注ぐ光は、目を見張るほど美しかった。

 あたしたちは盛大な拍手と歓喜の声で2人を称える。しかし、誰かが、

「あれは何だ!?」

 活動していない火山を指差した。そこには真っ赤に燃え上がる何かがいた。もしかして、

「不死鳥!?」

 あたしは落ち着きながら、しっかりとした口調で告げた。

 さっき、2人が魔術で出した不死鳥とは比べ物にならないくらい大きさだった。火山から離れたこの場所でも分かる。8、いや、10メートルはあるだろう。大きな翼をはためかせ、こっち向かって飛んでくる!!悲鳴をあげて逃げ惑う人たち。しかしあたしはその美しさと迫力に立ちすくむ。マーロンはあたしにピッタリくっついて怖がっている。コンテスト主催者や警備員たち、リリーとフィリーは舞台から降りて、必死に人々を誘導させている。

「マレーヌ、逃げるマロ!!ここは危ないマロ!」

 マーロンがあたしの服を懸命に引っ張る。危ないのは分かってる。だけど、あたしは不死鳥を待っていなくちゃいけない気がする。それに、

「待って、マーロン。聞こえない?メロディが…。あたしには聞こえる!!」

 そう、風に乗って微かにメロディが、魔歌が聞こえる。その魔歌があたしの体に沁みこんでくる。マリア・ピアニコの魔歌、これが伝説の魔歌…!意識がだんだん遠のいてゆく…。あたしの目の前に不死鳥がゆっくりゆっくり降下してきた。

「マレーヌ、しっかりするマロ!」

 マーロンが叫び、あたしの腕を揺する。はっと我に返る。

 ”ブワァーーーー”

 熱い!熱風が吹き上がり、髪やドレスがバタバタと音を立てる。周りに誰もいない。不死鳥は地面に足をつけると。野太い声を辺りに響かせる。

「我は、不死鳥フェニックス。100年に1度、再生のとき時を迎えた。お主は、マリアか?」

 不死鳥はあたしの頭の中に、それでいて辺りに広がる声で話す。あたしは手をぎゅっと握り締めた。

「あ、あたしはマリアじゃありません。マリアはあたしのご先祖様でマリアンヌ・ピアニコといいます!」

「先祖、だと?マリアは、死んだのか?」

 また質問をしてきた。100年前にマリアに会ったみたい。でも、それから100年経った訳だから、こんな質問しなくても…。それでも聞かれたのだから答えた。

「100年前に消息不明になって、亡くなりました」

 不死鳥は一息ついて、

「そうか。マリアから、託された、魔歌は、お主に届いたか?」

 抑揚のない声で不死鳥は話を続ける。

「はい!あたしの体の中に沁みこんでいます!」

 あたしは声を張り上げた。

「ならば、安心だ。我はまた、100年の眠りに、つこうぞ」

 ”パァーーーー”

 白い閃光が不死鳥から放たれた。眩しくて目が開けられない。周りから悲鳴が聞こえる。その中で、不死鳥の声が頭の中で響いた。その言葉は思いもよらないことだった。

「え、そんな!うそでしょ!?」

 驚きのあまり呟いた。返事が返ってくることはないけど…。

 そんなことがありえるわけない!でも、不死鳥が嘘をつくとも思えない。

「マレーヌ、マレーヌ!!目を開けるマロ!?」

 パッと目を開けた。目の前にはマーロンと双子の姿。不死鳥の姿はもう無かった。

「大丈夫よ。ふ、不死鳥は何処へ?」

 ドキドキしながら確認した。しかし、

「それが閃光のせいで見えなくって。誰1人としてわからないと思うわ」

「でも、被害はなかったから良かったね…」

 双子がそう言った。あたしは力なく頷いた。そして、2人は観客を呼び戻す手伝いに行った。

「マレーヌどうしたマロ?何かあったんじゃ…?」

 マーロンが察したように聞いた。あたしはまだ心の整理がつかなかったので、

「後でゆっくり話すわ。今はコンテストの結果に集中しましょ、ね?」

 マーロンの目を真っ直ぐ見ていった。何か言いかけたマーロンだったが、あたしの目を見て理解してくれたようだ。

「ありがと、マーロン」



 どうでしたでしょうか??


 2人は仲直りできて嬉しいばかりです~!



 さぁ、火の章も終わりへと向かっていきます!!



 読んでいただきありがとうございましたペコ



 次話もお楽しみに~ペコリ

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