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ミッドナイト・バグ・キャスター 〜汚言症の俺がニュースを読むと放送事故になるが、なぜか「最高にロックな報道」と視聴者からスタンディングオベーションを受けている〜

深夜のニュース番組『ミッドナイト・ジャーナル』のスタジオには、異様な緊張感が漂っていた。


キャスターの席に座る本郷亮ほんごう・りょうは、極度の緊張や特定の文脈に反応して、自分の意思とは無関係に不適切な言葉や暴言を突発的に発してしまう「汚言症(トゥレット症候群の一部)」を抱えていた。通常なら決して表舞台に出ることはないが、局のトラブルが重なり、この日、彼は急遽カメラの前に座らされていたのだ。


「本日のニュースをお伝えします」


本郷は原稿に目を落とした。最初のニュースは悲惨な事故だった。


「本日未明、県内の高速道路で大型トラックと乗用車など5台が絡む多重事故がありました……クソッタレ! 全員ミンチになっちまえ!!……失礼いたしました。この事故で、現在3名が意識不明の重体となっており……」


副調整室サブでディレクターが頭を抱えた。一発目から最悪の放送事故である。しかし、生放送は止められない。


「続いてのニュースです。昨日午後、市内の化学工場で大規模な爆発火災が発生しました……ヒャッハー! 燃えろ燃えろ! 丸焦げのバーベキューだ!!……現在も消火活動が続いていますが、作業員2名の行方が分かっていません」


本郷は冷や汗を流しながらも、プロのアナウンサーとしての技術で何事もなかったかのようにトーンを戻し、ニュースを読み続ける。


「次は訃報です。国民的な人気を誇ったベテラン俳優の〇〇さんが、本日午前、心不全のため息を引き取りました。82歳でした……ざまぁみろ! 生き恥さらした老害が! 地獄に落ちろ!!……生前は数々の名作映画に出演し、多くのファンに愛されていました」


サブではプロデューサーが「終わった……局の電話がパンクするぞ……」と顔面を蒼白にしていた。しかし、本郷の口から飛び出す「バグ」は止まらない。国際ニュースのコーナーに突入した。


「海外のニュースです。中国・北京で大規模な軍事パレードが行われ、最新鋭の兵器が多数公開されました……天安門! 天安門!! くまのプーさん!!……国家主席は演説で、軍の結束と国家の威信を強くアピールしました」


「さらに訃報が入っております。イスラエルの〇〇首相が、滞在先のホテルで急死しました……いい気味だ! ウンコ野郎! 砂漠で干からびて死ね!!……中東情勢の今後の行方について、各国首脳が緊急の声明を発表しています」


30分の放送が終わり、カメラの赤いランプが消えた瞬間、本郷は深く頭を抱え込んだ。「申し訳ありません、私のせいで番組が……」


しかし、サブから飛び出してきたディレクターの表情は、怒りではなく困惑に満ちていた。

「本郷……クレームの電話も来てるんだが、それ以上に、SNSの反応が……おかしいんだ」


モニターに映し出された番組のハッシュタグには、目を疑うような言葉が並んでいた。


『このアナウンサー、やばすぎるwww 建前ばかりのニュースに一石を投じたな』


『悲惨な事故のニュースでみんなが心の底で感じてる「どうでもよさ」とか「残酷な野次馬根性」を代弁してくれてる。最高だ』


『中国のパレードで「天安門」は腹抱えて笑った。命知らずすぎる』


『イスラエル首相へのコメント、どこの局も言えないブラックジョークで痛快だわ』


『偽善的なお悔やみコメントより、人間のドス黒い本性が出てて逆に信頼できる』


視聴者は、本郷の「症状」による制御不能な暴言を、**「現代のポリコレや同調圧力に真っ向から喧嘩を売る、天才的な風刺パフォーマンス」**だと完全に勘違いしていたのだ。


綺麗事で塗り固められた報道にウンザリしていた大衆にとって、本郷の突発的な「クソッタレ」「ざまぁみろ」という剥き出しの言葉は、なぜか奇妙なカタルシスを生み出していた。


翌日のスポーツ紙やネットニュースは「狂気のダークヒーロー・キャスター誕生」と大々的に報じ、局には「彼のニュースをもっと見たい」という異例の要望が殺到。本郷の意に反して、彼は瞬く間に深夜帯の視聴率王へと祭り上げられていくことになった。

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