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双子の実力



 村から五分。【アヴァール】 へ向かう道中の草原は見晴らしがよく、敵に不意をつかれる心配はない。

 

 (だが、逆に言うと……)


 「ワタルさん!ヘイトをお願いします!」


 「【プロヴォーク・ザ・クラウド】!!」


 こちらからの見晴らしがいいということは、敵からの見晴らしもいいというわけで……俺たちはゴブリンやオークの群れに襲われていた。


 俺は【プロヴォーク・ザ・クラウド】によりモンスターのタゲをうばい、二人の実力を確かめることにした。


 「行くよロキ!」


 飛び出した魔法使いのマオの後を追いかけるようにロキが続いた。二人は俺に引き寄せられたモンスターの背後をとると各々の武器を構えた。


 ロキは矢筒から矢を一本手に取り、弓の弦に装着して放った。


 【天空百矢(てんくうももや)】【弓使い】の上位職【狩人】によるスキル。弓から放たれモンスターに当たるまでの間、放たれた矢は分裂をつづける。


 弧を描くように放たれた矢は分裂を続け、モンスターの頭上に降り注いだ。


 「aaaaaaaaa!!」


 悲鳴をあげ逃げようとしたモンスターの背を、マオは呪文を唱え炎の車輪を出現させ、追い打ちをかけた。


 【火車(ひぐるま)】 【魔法使い】の上位職【大魔法使い】のスキル。現れた炎の車輪はスキル使用者の持つ杖の動きに連動している。杖を前に突き出せば前に進み、手前に引けば後ろに下がる、左右も同じくだ。


 炎の車輪は全体が炎でできているため踏み潰す攻撃ではなく、あくまでモンスターを燃やすことしかできない。だが、上位職のスキルだけあり、延焼ダメージはバカにできないものがある。


 「o……o……oaaaaaaaaa!!」


 矢の雨により体には無数の矢が刺さり、炎の車輪によって体を燃やされてなお生き残ったオークが一匹俺へ向かい突撃を仕掛けてきた。


 (こんなもの……)


 俺は剣と盾から【投げナイフ】へと装備を変え、オークの頭に投擲した。


 「aaa!……」


 投擲された投げナイフは見事に頭に命中して弱ったオークの命を奪った。


 「どうですかワタルさん!」


 モンスターを挟むように位置していた二人が俺の元に子供のような笑顔を向け駆け寄ってきた。


 「私たち強くなったでしょ!?」


 正直二人が【基本職】から【上位職】になっていることは予想していた。ただ、二人のスキルは【上位職】の中でも高レベルで会得することのできるスキルだ、余程の修羅場を潜り抜けてきたのだろう。


 「ワタル……さん?」


 俺の表情が評価を物語っていたのか、先程までの自信に満ち溢れた表情は消え、不安が顔に現れていた。


 「ロキ……」


 「はい!」


 「お前はなんで数あるスキルの中から【天空百矢 】を使用した?」


 「それは、敵の数が多かったから……」


 「マオ。お前はどうして【火車】を使った?」


 「攻撃にも防御にも使えて便利だから……」


 二人の表情からは不安色が消えていない。正直な話、アトランティスオンラインがこんなことになっていなければ注意するほどのことではないのだが……。


 「僕らに間違いがあったなら教えてください!必ず直してみせますから!」


 (相変わらず向上心が高い……そういえば、昔にパーティーを組んだ時も、向上心の高さを気に入って教えたんだっけか。)


 「まず、ロキの【天空百矢】だ。【天空百矢】の主な使い時は強敵との戦闘時だ。」


 「でもスキル説明には集団戦時に有効だって……」


「それは一人で戦う場合と考えた方がいい。【なぜなら天空百矢】には二つの弱点が存在している。

 

 一.【天空百矢】には【行動阻害】効果を付与する力があるが、当然矢の雨に仲間が近づくことができないため怯んでいる敵に攻撃を仕掛けることはできない。


 二.通常の狙撃と比べ、弧を描く【天空百矢】は速度が遅く、トドメをさしきれることがすくない。


 例えば、強敵が二人いた場合には片方に【行動阻害】を付与しているうちにもう片方を削ることができたり、巨大な敵なら全ての矢が命中すれば大ダメージを叩き出すことができる。要は使い方の問題だ。」


 ロキは慌ててインベントリからメモ帳を取り出し、一言一句余すことなくメモをした。二人が初心者の時にプレゼントした物を未だに使用しているとは実にロキらしい。


 「次にマオだが……お前は単純にMPマジックポイントの使いすぎ。ゴブリンやオークだけなら俺とロキ……最悪の場合でも今のレベルなら【火球】で充分援護ができたはずだ。」


 「なんで……勝てたんだからいいじゃないですか!」


 望まれていた言葉ではないことは理解している。だが、生き残るためには知る必要がある、戦いの術を。


 「……例えば。今、まさにこの状況で別のプレイヤーに襲われてMPが少なかったらどうする?」


 「こんな見晴らしのいい場所で襲われるとは思えないけど……」


 「例えばの話だ。それに【アサシン】のスキル【インビジブル】なら攻撃を仕掛けるには充分な間合いに入ることができる。」


 マオは言い負かされたからかムッとした表情を浮かべ不貞腐れている。マオとは対照的にロキは少し考え自分の考えを俺に話した。


 「……マオ、ワタルさんの言う通りだよ。僕はスキルの正しい使い方を、マオはNP管理を今よりできるよにならないといけない。」


 「でも、ロキ……」


 「約束しただろ?二人で父さんの借金を返すって。」


 詳しい事情は知らないが、なんとなく事情は察することができる。アトランティスオンラインに異変が起きて流通するようになったアトランティスオンライン産の資源。


 突然湧いた大量の資源に、当然社会は瞬時に対応できたわけではなく、様々な混乱を引き起こした。恐らく、何らかの事情で父親が失業したのだろう……。


 「ワタルさん、また僕たちに戦い方を教えてください!」


 ロキが頭を下げると、続くようにマオも頭を下げた。


 「先に言っておくが、俺は不器用だから、思ったことは口に出す。傷つけことがあるかもしれないけど……」


 「そんなの今更ですよ……前にパーティーを組んでいた時も何度心を折られかけたことか……。」


 昔の仲間にもよく言われていた「お前の否定は長いから嫌でも間違いを認めさせられる」と。仲間たちは、それでいいと認めてくれていたが、少しは相手に気を使うことを覚えた方がいいのかもしれない。


 「まぁ、あれだ。ああだこうだ言ったが、スキルの完成度と接敵時の行動は悪くなかった。……強くなったな二人とも。」


 二人は口をポカンと開けた後、笑った。


 「アハハハハ!!ワタルさんらしくないですよ、その言葉!」


 二人と笑顔見た俺は再び【アヴァール】へと歩みを進めた。


 「あ、待ってくださいよ!」


 俺を追うように小走りで二人が後ろを歩く。


 「これからよろしくお願いしますね、ワタルさん!」


 「……あぁ、よろしく頼む。」

 

  

 

 

 

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