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カフェと新たな仲間



 「こうして会うのは初めて……あの、敬語の方がよかったりします?」


 アトランティスオンラインの世界から戻った俺は、マーチにメールで呼び出され、一駅隣のカフェにやってきていた。


 「今更敬語使われても気持ち悪いだけだろ。」


 「そうで……だよな!」


 向かいに座るマーチの姿はゲーム内のアバターとは違い、背が低く中性的な顔立ちをしている。本人からは俺より一つ下の大学一年生と聞いていたが、到底そうは見えない。


 俺とマーチはカフェのメニューを満喫しながら、アトランティスオンラインで起きていることを話し合った。


 「リアルで色々調べたが……どうやら、俺たちが考えていたよりも複雑な状況になっているみたいだ。」


 マーチは調べあげた情報を余すことなく俺に伝えた。


 一.プレイヤーの多くは過激派と穏健派に別れており、過激派はプレイヤーやNPCの殺害に躊躇がなく、 楽しむため、資源を確保するためなら手段を選ばない。


 穏健派は資源の確保を優先するが、プレイヤーやNPCを殺すことには反対で、むしろ国絡みで協力関係を結ぼうとしている。


 二.過激派の中には確保の難しい資源の独占のため、高レベルプレイヤー狩りを行う奴らが存在している。問題は正当防衛だとしても自分を殺そうとしたプレイヤーを殺せるかだが……俺には難しいかもしれない。


 三.過激派プレイヤーの多くはアトランティスオンライン内の王国、グロリアス王国により指名手配されている。既にNPCとプレイヤーの間には大きな溝ができているようだ……。


 マーチの話が終わる頃にはケーキとコーヒーを食べ終わっていた。


 「俺からも一つ話があるんだが……」


 「コーヒーのおかわり頼んでからでもいいか?」


 マーチは俺の分を含め二杯のコーヒーを注文して話を戻した。


 「それで?なんだ、話って?」


 「実は……」


 俺は村で起きたことを覚えている限り全て話した。


 「ハァァ……!?村の状態もだけど、プレイヤーと戦ったって!何考えてんだ!」


 俺に向けた怒りと心配の混じった言葉は静かなカフェの中に響き渡り、マーチは定員に注意を受けた。


 「……それでそいつはリーダーの名前をマモンって言ってたんだな?」


 俺が頷くとマーチは深いため息をついて話を続けた。


 「そいつは過激派の中でも要注意人物で。プレイヤー十五人、NPC三十人を殺害した【ソードマスター】だ。お前、間違いなく狙われるぞ。」


 【ソードマスター】は【剣士】の上位職。ステータス、スキル共に近接戦闘に特化しており、プレイヤー人口の多い職業の割に使いこなせているプレイヤーは少ない。


 俺とマーチはしばらくの間これからの事を無言で考えた。


 「……とりあえずだ。一人で行動するのが危険なのは分かっただろ?」


 「まぁな。アトランティスオンラインを辞めようとも考えたけど。普通の仕事の何倍も稼げることと、ゲーム内の知り合いが死ぬのは悲しいものがある……。」


 大学に馴染めない俺を支えてくれたゲーム内の友人たち。リアルの顔も知らない友人だが、俺にとっては何よりも価値のある友人だ。


 「お前がそういう奴なのは分かってるよ。いいか、明日はログインするな。明後日にはお前のいる村に二人のエルフが来る。そいつらとお前が組めば、そう簡単にやられたりしないだろうよ。」




 マーチとの会話から二日が経ち、俺はアトランティスオンラインの世界に再び潜った。


 「ワタルさんおはようございます!」


 現実と繋がる村の宿舎を出ると顔見知りの双子のエルフが俺を出迎えた。


 「やっぱりロキとマオか。久しぶりだな、元気にしてたか?」


 中高生程の背丈をした男女の双子エルフ。男の子のアバターを使うのが【弓使い】のロキ。女の子のアバターが【魔法使い】のマオ。


 二人はアトランティスオンラインが正常に稼働していた頃からの知り合いで、二人が初心者の頃にパーティーを組んだことがある。


 「お久しぶりですワタルさん!皆さんもワタルさんに会いたがっていたのですが、少しゴタゴタがありまして……。」


 俺が死ぬことを恐れて始まりの街エンペサールに帰る前、世話になっていたパーティーに俺の代わりとして二人を紹介した。装備を見る限り、相当な経験と成長をしたことが分かる。


 「この村にいるということは、ワタルさんは【アヴァール】に向かっているんですよね?」


 「とりあえずはな。」


 アトランティスオンラインでは、始まりの街【エンペサール】から離れるほど魔物が危険になることもあり、進むにつれ、街や村などの規模は小さくなる傾向がある。


 ゆえに【エンペサール】と王国を繋ぐ【アヴァール】には大勢の人と資源が集まる。


 「とりあえず進みませんか?どうせ【アヴァール】に着くまでに時間は沢山あるんですし。」


 俺はエマに急かされるように助けた村を出て商業の街【アヴァール】へと足を向かわせた。 


 


 




 


 

 

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