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ガオの正しさ

トトと別れたあと、

ガオとミミは、ある動物たちが暮らす集落に着きました。


シカのシロが、みんなに向かって言いました。


「この森には、守るルールがあります」


順番を守ること。

奪わないこと。

独り占めしないこと。

嫌がることを、しないこと。


ガオは、その言葉を聞いて、うれしくなりました。


ここでは、

押しつけなくてもいい。

ルールが、みんなを守ってくれる。


それが、正しい形だと思いました。


やがて、木の実を分ける日がやってきました。


「ひとり、五つまで」


シロの前に、一列。

動物たちは、静かに順番を待っていました。


そのときでした。


キツネのネロが、

木の実を――八つ、取ったのです。


ガオの胸が、ざわつきました。


(だめだ)

(これは、止めなきゃいけない)


昔の自分なら、

怒鳴っていたかもしれません。


でも、今は違いました。

押しつけるのは、間違いだと知っていました。


だから、

声は低く、短く出ました。


「……待って」


「それは、ルール違反です」


ネロは、びくっと肩をすくめました。

手が、止まりました。


何かを言いかけて、

でも、口を閉じました。


ネロは、

八つの木の実を見つめてから、

三つ、そっと戻しました。


シロも、

ほかの動物たちも、

何も言いませんでした。


ガオは、ほっとしました。


――これで、守れた。

――ルールは、壊れていない。


……それなのに。


ネロの、うつむいた横顔が、

頭から離れませんでした。


夜。


ピピが、ガオに言いました。


「シロから聞いたんだけどね、

 ネロ、弟がケガしてるんだって」


ガオの中で、

「正しい順番」が、音を立てて崩れました。


知りませんでした。

聞きませんでした。

考えていませんでした。


「……でも」


思わず、言葉がこぼれました。


「ルールは、守らなきゃいけないだろ」


ピピは、何も言いませんでした。


その沈黙が、

胸に、重く残りました。


次の日。


ガオは、ネロのもとへ行きました。


「昨日のことですが……」


ネロは、身構えました。


「オレは……

 間違ったことを言ったとは、思ってない」


それは、

自分に言い聞かせる言葉のようでした。


「でも……」


言葉が、続きませんでした。


ガオは、ネロを見ました。


「……何か、事情があるんですよね」


ネロの目が、揺れました。


「言えば、ズルだって思われる」


「だから、言えなかった」


ガオは、初めて気づきました。


正しさは、

声を出せる者の近くにしか、

立っていないことがあるのだと。


「……何も知らないのに、

 きつく言って、悪かったです」


ネロは、少し考えてから言いました。


「オレも……

 何も言わなかった。ごめん」


それからガオは、毎日、

ネロと一緒に、ケガをした弟の手伝いをしました。


弟は、はじめ、

ガオを見ると体をこわばらせました。


――怒られると思っていたのです。


ガオは、何も言わず、

ただ水を運び、薪を割りました。


ある日、弟が、ぽつりとつぶやきました。


「……あの人、こわくない」


ネロは、その声を聞いて、

少しだけ、笑いました。


「……だろ?」


それからガオは――

ルールを口にする前に、

一度だけ、相手を見るようになりました。


守るために、

誰かを切り捨てていないか。


その正しさが、

誰の声を聞き逃しているのか。


集落を出る日の朝。


ガオは、ピピに言いました。


「ねぇ……正しいって、むずかしいね」


ピピは、すぐには答えませんでした。


少し歩いてから、言いました。


「でもさ、

 考えるのを、やめなかったでしょ」


ガオは、空を見ました。


「……うん」


ガオも、ピピも、

まだ途中でした。


それでも、

並んで歩いていけば、

少しずつ、できることは増えていきます。


旅は、

まだまだ、続いていきました。

ホーホー爺からのクエッション


Qルールをまもるのは、だいじなことじゃ。

でものう……ルールをまもったとき、かなしい顔をしている子は、おらんかったか?


Qメロが多く木の実を取ろうとしたとき、なぜ、シロや他の動物たちは何も言わなかったと思うかの?

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