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ミミの小さな一歩

ガオとピピは、

朝の光がさしこむ小道を、 とことこ歩いていきました。


すると、木の根もとから、

ちいさく、ふるえるような声が聞こえてきました。


「……いやだ……こわいよ……」


ガオは、くびをかしげます。

「だれか、そこにいるの?」


ピピはこわごわ、ガオのうしろからのぞきこみました。


木のかげにいたのは、

白いうさぎの女の子、ミミでした。


長い耳はしょんぼり下がり、

赤く大きな目には、なみだがいっぱいにたまっています。

ぽつ、ぽつ、と涙が地面に落ちました。


「どうしたの?」

ガオが、いつもの調子で声をかけます。


ミミは、びくっと肩をはねさせ、

しばらく、何も言えませんでした。


やっとのことで、小さな声をしぼり出します。


「……あした、レースなの。

 でも……足が、動かなくなるの。

 走ろうとすると、

 頭が、まっ白になって……」


ミミは、ぎゅっと目を閉じました。


「また、

 逃げたって言われるのが……

 いちばん、こわい……」


ガオは、思わず言いました。


「でもさ、

 走らなきゃ、いけないんだろう?」


その言葉に、

ミミの体は、きゅっと、小さくなりました。


ピピは、おろおろしました。

(ど……どうしよう……)


そのとき、胸の奥が、きゅっと苦しくなります。


――あのときの、ぼくと同じだ。


声を出せなくて、

笑われる前に、

自分で自分を、

小さくしてしまった、あのころのぼく。


「……ミミちゃん。」


声は、ほとんど、息のようでした。


「こわいまま、

 走らなくても……

 いいと、思う。」


ガオは、不思議そうにピピを見ます。


ピピは、

ミミをまっすぐ見つめたまま、続けました。


「こわいって、

 逃げじゃない。

 ……こわいって、

 ちゃんと、感じてるってことだから。」


ミミの目から、ぽろり、と涙がこぼれました。


「そんなふうに、

 言ってもらったの、

 はじめて……」


ガオは、胸の奥が、ちくり、と痛むのを感じました。


強く応援すれば、

前に進めると、ずっと思っていた。


でも――

目の前のミミは、

それ以上、動けなくなっている。


もしかしたら、

強さは、押すことじゃないのかもしれない。


ガオは、言葉をさがして、しばらく黙りました。


そして、

ゆっくり言いました。


「……走らなくても、いい。

 でも、

 一緒に、練習することはできるよ。」


ミミは、そっと、顔を上げました。


「……ほんと?」


「うん。」


ガオの声は、いつもより、ずっと、やさしかったのです。


それから、草原へ向かいました。


まずは、草原の端まで、歩いてみる。

立ち止まって、

深呼吸して、

また、戻る。


ミミの足が止まっても、だれも、急がせませんでした。


夕暮れどき、

空が、やわらかな色に染まるころ。


ミミは、ふいに言いました。


「……もう一歩、

 行ってみる!」


ほんの、

ほんの、一歩。


でも、

ミミの目は、きらきらして、とても楽しそうでした。


ガオはその小さな背中を見て、

ぽつりと、つぶやきました。

「よかった…!」


ピピも、ガオのとなりで

嬉しそうにそっと、うなずきました。


ミミは、ガオとピピの前に立ちました。


「…ありがとう。

 いっしょに、

 そばにいてくれて。」


小さな声でしたが、

ミミは、ちゃんと前を向いていました。


「また、こわくなったら……

 どうしたらいい?」


ミミが聞くと、

ピピは、にっこりして言いました。


「こわいって、

 思っていいんだよ。

 それを、

 ひとりでかくさなくていい。」


ガオも、うなずきました。


「そうだよ。

 ゆっくりでいい。

 一歩でも、

 止まっても、

 それは、前に進んでるってことだから。」


ミミは、ガオとピピの手をぎゅっとにぎりました。


「……うん!」


長い耳が、

ぴんと立っています。


ミミは、

くるりとふりかえり、

何歩か走ってから、また、ふりむきました。


「レース、

 がんばってみるね!」


ガオとピピは、大きく手をふりました。


『ミミならきっと大丈夫!』


ミミのきらきらした目を、

胸にしまって、

ガオとピピは、

次の出会いへ、歩きだしました。

ホーホー爺からのクエッション!


Q1ガオの「応援」は、はじめと、あとで、どこが変わったと思うかの?


Q2もしも、おぬしのそばに、ミミのような子がおったら、どんな言葉をかけてやるかの?

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