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リベンジ

作者: 明智光秀


  結局一度も勝てなかった。

手は忙しく動かし、入念に部屋の掃除をしながらも、頭ではそんな事を考えていた。


高校で同じ剣道部に所属していた吉沢とは、何度か竹刀を交わした関係であったが、自分が欲張りでなかった為か、或いは彼がケチだったのか、今の今まで一度として一本を取らせてはくれなかった。



自分の武術の腕前は、そこそこと言った感じだ。これといって秀でた訳でもなく、また反対に劣っていた訳でもない。


相手に依っては、勝つときは勝つし、負けるときは負けるといった調子だ。


しかし、例の如く吉沢相手となると、先の話は変わってくる。


どうやら剣道にも、単に技芸だけでなく、苦手な相手というのがあると見える。


それが、自分に言う、吉沢に通ずるものがあったのだろう。


高校最後の地区大会で、残り一枠のスタメン争いを掛けた模擬試合を行い、決勝を左右する最終戦まで勝ち上がったのは、自分と吉沢だった。お察しの通り、例に及ぶこの結果は、態々ここに書き綴る必要はないだろう。



自分は、吉沢のいるせいで、ことごとく白星をあげるチャンスを逃した。

とはいえ悔しかったが、吉沢とは良きライバルであり、良き友でもあった。




しかし成人となった今、高校時代の剣道には心残りがある。


それは、何も最期の大会に出場できなかった事ではない。それは、"吉沢へのリベンジ'だ。


幸いにも、高校を卒業しても連絡の途絶える事を知らなかった吉沢と今日、会う約束を交わしたのだった。




そして…

"リベンジ'は済んだ。


部屋の一連の掃除を終えると、次に風呂へ向かう。




赤く染まった竹刀を持って。


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