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光が射す、その前に  作者: march


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28/30

潮時

半年しか住んでいない街の風景が、もう薄紙みたいに剥がれ落ちていく。キャリア形成として見切りをつけることは正しい。でも鏡に映る自分は、どう見たって“ただの駄々っ子”だ。

我慢ができない虫。

飛び続けて、壁にぶつかって落ちて、また飛ぶ。。。その繰り返し。


性欲なんてものはアレ以来、壊れた蛇口みたいに完全に止まった。誰を見ても心が動かない。人の温度も恋の気配も、僕にはもう届かない。あるのは仕事だけ。

それ以外の場所では、ほとんど死んでいる。


スーパーで半額シールのおにぎりを手に取る。

44円。

コンビニの値上げを思い出す。昔は100円セールなんてやってた。今は同じ具材でも150円超え。

スーパーでは44円。

廃棄にするよりマシ、という合理性で成り立ってる数字だ。


最近はコンビニでも割引シールを貼り始めているけど、それでもスーパーの“初期値”に遠く及ばない。

格差だろうか?いや、ただの構造の問題だ。

でもおかしいのはそこじゃない。

金がない生産性の低い人たちほど、コンビニで買い物をする。値引きもない強気価格の商品を、なぜか躊躇なく買える。

後先考えず高級な車に乗り

子どもは多め

外食も多め

家庭内の金の流れは不明。

でも、なぜかそれで生活が成立する。


この国の経済を支えているのは、どう見てもこのゾーンだ。叫んだ者勝ちの仕組みと、なんとなく補助金で支えられる生活圏。その一方で、虫みたいに黙って税金を払い続ける僕は、子どもの社会的負担全額拠出している。元妻は負担ゼロ。

まるで聖人でもないのに聖人として扱われるべきで、いや。。存在自体否定されて無視されていて、ただただ搾り取られる。

。。。何でこんなやつと結婚したんだ?ふと頭に浮かぶが、今さらどうでもいい。

結局、僕はこの社会の“調整役”にされただけだった。


本当の弱者は誰だ?

声を上げられない虫なのか?

叫んだ者なのか?

あるいは、仕組みの外側に立たされている僕自身か?

答えなんてどうでもいい。

今日も誰かが叫び、誰かが得をし、誰かが損をする。

いつも通りの世界。クソ喰らえだ。


でも僕は、僕の脚で歩く。スーパーの44円のおにぎりを抱えて。スバル(ハネ)を動かしながら。

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