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光が射す、その前に  作者: march


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23/30

2025年11月4日

夏が終わったと思ったら、急にくしゃみが止まらない。

その要因は、敷きっぱなしの布団にあるのだろう。そう見立てをして、汚れたベランダの手すりを水拭きし、冬用の掛け布団を干した。

マットレスには掃除機をかけ、シーツ類はすべて洗う。


水拭き雑巾を水道で洗ったとき、小学生の頃の記憶が蘇った。悴んだ手で雑巾を絞り、栄養不足だったのか、アカギレ気味の指先にツンと痛みが走る。

そんなことを感じながら、いよいよ冬支度だ。


僕という人間は、相変わらず生き急ぎ、他人からすれば早すぎるジャッジを繰り返している。

「人生の最良のタイミングは逃すまい」──そう思いながら。

これだけ失敗を重ねた僕の選択ロジックは、当然のようにAIに否定され、

彼だか彼女だか知らないデジタルの“感情風な機械”にこう言われる。


「一度、深呼吸して自分を見つめ直しては?」


まったくもって正しい。

それこそが“葛藤”という単語の本質であり、正しい人間生活の形なのだろう。


真里にメールを送った。


「マリさん、元気にしていますか?

私は相変わらず仕事に追われ、いつものように自己嫌悪に落ち入りながらも、

サッカーでひと時を過ごし、気ままに生きています。

連絡はすまい、すまいと思っていました。

でも、こんなに長い時間、気持ちが変わらないでいる自分に驚いています。

それが、少し辛くてね。

仕方のないことはあるんだと、もちろん自分に言い聞かせています。」


相変わらず、どっちとも取れない。

そのメッセージも右往左往し、定まらないままだ。


この小説を、もし死ぬ間際に読み返すことがあるなら──

僕はきっと「往生際の悪い最終フェーズだな」と笑うだろう。


呼吸し、仕事をし、食べ、寝る。

文化的な要素などまるでないが、これがこの国が保証してくれる「最低限の文化的生活」だ。

税金を多く払っている自負はある。けれど、“文化的”であるかどうかは、僕次第なのだ。


最終フェーズなのだろう。

スバルが外で待っている。


さぁ、行こう。

この先にあるか、ないかもしれない幸福を──期待せず、ただ待つことにしよう。

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