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光が射す、その前に  作者: march


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19/30

嫌いな僕との過ごし方

7月も、気がつけばもう1/3が過ぎていた。


「悩みながら生きていく」なんて、もはや自分の代名詞だと開き直ってはいるけれど、

ここ数週間の不調は、それにしたって少し重たかった。

頭痛、腰痛、寝ても疲れが抜けない感覚。

加えて、どうにも拭えない焦燥感と、不安と、正体のない空虚。

それら全部が、しっかりと混ざって、なんとも言えないだるさになっていた。


でも、不思議なことに「今日はもう無理です」とは言えないのだ。

いや、言おうと思えば言える。でも、言わない。

なぜならこれは、僕にとっては「平常運転」だからだ。

心のどこかで“またか”と思っているし、“そんな日もある”と割り切っている。

だから、誰にも心配されることなく、ただ通り過ぎていく──そんな日。


今日は健康診断の予定があって、実質ほぼ休日のような平日だった。

朝、いつもよりゆっくりと目を覚ましたのに、条件反射のようにメールアプリを開く。

そこには、昨夜遅くまでかかって仕上げた資料へのフィードバックが届いていた。

「差し戻し」と4文字。

ほんの数秒で、昨日の努力はゼロに戻された感覚。

でも、今日はPCの使えない環境だ。

仕方ないので、部下に指示だけを飛ばして、それ以上考えないようにした。

頭の中から、“それ”を追い出す。

……そういうふうに自分を訓練してきた。


でも、本当はちょっとだけ思う。

いや、何度も思っているのかもしれない。


僕がいないと、このプロジェクトは回らない──なんて、思い上がり。

実際は、誰だっていいのだ。

誰でもいいように、仕組みはできている。

それが、組織というもの。

それが、現実というもの。


世の中は「個性を大切に」なんて耳障りのいい言葉で溢れているけれど、

結局のところ、属する場によっては、個性はむしろ邪魔になる。

プロセスじゃなくて、結果だけが重視される世界。

正しいかどうかじゃなくて、使えるかどうか。

好きか嫌いかじゃなくて、役に立つかどうか。


だからみんな、自分に都合のいい解釈をして生きている。

僕だって、そうだ。

むしろ、その傾向が強い人間だと思う。

そういう自覚があるだけに、自己嫌悪に陥るのも早い。


……もし僕が他人だったら、僕を好きになれるだろうか。

たぶん、ならない。

こんな偏屈で、神経質で、合理主義を気取ってるくせに、すぐ傷つくやつ。

他人から見たら、めんどくさいと思うかもしれない。

いや、きっとそうだ。


でも、そんな自分と折り合いをつけながら、今日もこうして生きている。

それも、平常運転のうちなのだ。


もう少し理不尽に怒れたらいいのに。

もっと器用に生きられたら、笑ってやり過ごせるのに。

それができないから、僕は今日も静かに不貞腐れて、

諦めたような顔で、諦めきれていない何かを心の奥で握りしめている。


──だから、くたびれている。

でも、それでいいのかもしれない。


今日はそういう日だった。ただ、それだけだ。

それでもちゃんと朝は来たし、夜になれば静かに眠るだけ。

特別なことは起こらないし、誰も慰めてはくれない。


真里。君は今何をしているんだろう?

記憶も時間も距離も気持ちも、遠くにある。



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