光が射す、その前に
Epilogue: The End of This Story
2024年4月
僕は未だに真里を愛している。でも不倫から始まった僕と真里の物語は終わった。
でも、どこかで曖昧だった。
彩香さんが過去に教えてくれた
“シャッターを完全に下ろす事ができない”
それならば
僕がそのシャッターにそっと手を添えて、それを下ろそう。
「お疲れ様です。体調はその後、いかがでしょうか。ずっと心配をしています。どうか健やかになっていて欲しいです。再度メッセージを送ってしまい、ごめんなさい。これを最後にしますので。私は小田原を離れ、離婚をし新会社で働いています。あれから1年以上が経ち、当時からあなたの体調が心配で私の立場は曖昧でとても苦しかった。その間、私自身の反省とできる事を考えて、安心して療養してもらう為に離婚を進めましたが、あなたへ安易に伝えることは控えました。また当時の仕事は時間が取られるので考える時間が欲しくて、でも子供の責任があるので転職にも時間が掛かりました。これらは全て私が自分で決めたことです。あなたを困らせたくない気持ち、叶わないと察しながら伝えることに何度も躊躇したけど、過ごした時間に嘘をつきたくなくて、きちんと向き合いたくて、その証として示したかった。結果的にあなたに向かう気持ちがどうしたって終止符を打てなかった。2年弱様々な変化や体調面の不安があるあなたの方が辛い状況である事は当然、理解しています。味方であり続けたい。いつでも寄り添いたい、こんなに風に考えたのはあなただからです。
追伸
カエルの館は無くなってしまった様ですね。。オタマは元気かしら(八つ裂きにはしないでねw)
さようなら。真里さん」
平日の夜の23時に送った。
翌朝は早番で3時に目覚めたが、そのメッセージは未読のままだった。
深く考える事をやめて、熱いシャワーを浴び、身支度を終えた。
再び画面を見ると、そのとき、「既読」と表示される。
誰もが寝静まる明け方、僕は一息だけ長すぎる深呼吸を終えた。唇、そして僕の指の震えは止まらない。
まもなく、その指は慣れないながらも、じっくり滞る事なく、真里の、そのアカウントを削除した。
光が射す、その前に
2024年12月
明け方、一切無駄のない準備を終え、スバルに乗り込む。吐く息は白く、窓ガラスが曇っていたのでヒーターを付けた。
静寂の中で1人、気を吐いてくれるスバルのおかげで霜は溶けた。空は未だに真夜中を映している。
“真里が僕の闇を照らしてくれた物語”
「まーちゃは相変わらず目の前のことにしかフォーカスできていませんね。」
そんな声が聞こえた気がした。。
それでもスバルのヘッドライトが先を照らしている。再びの闇の中、僕は静かにアクセルを踏んだ。
感想などくださったら、とても励みになります。
ありがとうございました。




