光が射す、その前に
真里と出会ったことで、僕の世界には一度だけ柔らかな光が差した。
その光は長い時間をかけて影になり、影はまた別の形で僕の中に居座り続けた。
失うということが、こんなにも長く続くとは当時は思っていなかった。
離婚をし、街を変え、仕事を変え、立場さえ変えてみた。
けれど、どこへ行っても僕は“僕のまま”で、
期待と失望のあいだを、湿った羽音を立てながら行き来していた。
人間としての顔を保っているつもりでも、
内側は少しずつ虫のように平坦になっていく。
正しさはいつも揺れ動き、
矛盾は静かに沈殿し、
感情はゆっくりと温度を失っていく。
それでもどこかで、小さな熱だけが消えずに残っていた。
それが光なのか、ただの惰性なのか、僕自身にも判断できない。
街で行き交う人の姿が、
焦ったり、怒ったり、虚勢を張ったりしながら動く虫の群れに見えることがある。
そして気づく。
たぶん僕もそのひとつで、空を飛んだつもりでも、
実際は蛍光灯の明かりにただ吸い寄せられていただけなのだと。
それでも、人間だった頃の記憶がまだ消えない。
あの夏の景色、滝の水しぶき、真里が見せた一瞬の横顔。
そういう断片が、僕をぎりぎりのところで人間側に引き戻す。
心を失ったのか。
それとも、ほんの少し残っているのか。
たぶんその境目で、僕は今日も呼吸している。
その光は長い時間をかけて影になり、影はまた別の形で僕の中に居座り続けた。
失うということが、こんなにも長く続くとは当時は思っていなかった。
離婚をし、街を変え、仕事を変え、立場さえ変えてみた。
けれど、どこへ行っても僕は“僕のまま”で、
期待と失望のあいだを、湿った羽音を立てながら行き来していた。
人間としての顔を保っているつもりでも、
内側は少しずつ虫のように平坦になっていく。
正しさはいつも揺れ動き、
矛盾は静かに沈殿し、
感情はゆっくりと温度を失っていく。
それでもどこかで、小さな熱だけが消えずに残っていた。
それが光なのか、ただの惰性なのか、僕自身にも判断できない。
街で行き交う人の姿が、
焦ったり、怒ったり、虚勢を張ったりしながら動く虫の群れに見えることがある。
そして気づく。
たぶん僕もそのひとつで、空を飛んだつもりでも、
実際は蛍光灯の明かりにただ吸い寄せられていただけなのだと。
それでも、人間だった頃の記憶がまだ消えない。
あの夏の景色、滝の水しぶき、真里が見せた一瞬の横顔。
そういう断片が、僕をぎりぎりのところで人間側に引き戻す。
心を失ったのか。
それとも、ほんの少し残っているのか。
たぶんその境目で、僕は今日も呼吸している。
The Beginning of 2021
2025/03/06 21:29
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2025/03/13 20:55
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光が射す、その前に
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