吸血鬼vs吸血鬼 〜裏切り者の純血と混血は、血に染まった吸血鬼界を救う!?〜 短編集
俺が愛したとても大切な人
ーーずっと、大好きだった。俺たちは、幼馴染であり兄弟。血の繋がりはある。けれど俺にはお前に、“告 白 す る 勇 気 が な い”。
「ツバキ、書類ここに置いとくぞ」
「えーねえユラ? この書類、お前がやることって出来る?」
「はぁ……それは出来ない。これはギルドマスターであるお前がやるべきこと。側近の俺がやるべき仕事じゃない」
「じゃあ、じゃあさ!」
「?」
「手伝ってよ。お願い!」
ツバキはユラに両手を併せ、おねだりのポーズをする。そんな光景を見ていたユラは深くため息を付き、「駄目だ。これはお前の仕事だと言っただろう?」とそのまま言葉を繋げた。
「むぅ。ケチ!」
「ケチで結構。」
「だからイヤだったんだ、俺がギルドマスターになるの。」
モゴモゴとそう言うツバキに、自身の手に持っていたバインダーをツバキの頭にポンと置く。
「俺はお前がギルドマスターになる器だと思った。このギルドを創設したとき、お前にそう言ったはずだが?」
「ぶぅ……」
頬を膨らませながらそう言ったツバキ。ユラは「ふふっ」と笑みを溢す。
「不貞腐れるなよツバキ、お前は皆の良い、ギルドマスターだ」
「…………ユラ……」
「それじゃあ俺はタルトに用があるから、俺はここで失礼するな」
「ん、うん……」
「俺が戻ってくる間に半分は終わらせておくこと。」
「えー……」
「分かったな?」
ユラはそう言うとそのまま執務室の扉を閉めた。
◇
「ツバキ……俺は、やっぱり…………」
ユラは頬を赤くしながら、タルトの方へと向かって歩いていった。