姉たる者
もーいーくつねーるーとーおしょうがつー
ーAUTUMN-
~春~
入学式のベルが鳴り終わり、春の暖かな風が頬を伝う。
この日に入学した生徒は36人。多くもなく少なくもない、いや、少なすぎるか。
少し増やそう。
そうこの日に入学したのは”127人”。多くもなく少なくもない、いや、中途半端か。
少し調整しよう。
ああ、この日に入学した生徒の数、およそ””100人””。
都会にしてみれば少ない部類になる微妙な数字。
この話の主人公となるのはこの学校の教師。名を『蟋蟀 霜音』
この教師を頼る生徒は多いだろう。なぜかは分からない。
そういう人柄ということなのだろう。
カツッカツッ・・・
蟋蟀の足音が響く。ふとあるドアの前で足が止まった。
コンコン
「はぁーい!」
がらがら!
「誰かと思ったら霜音じゃん」
ガラっ
無言でドアを閉める蟋蟀。気にくわなかったのか厳しめに諭すように叱る。
「まあまあ。だって霜音はお姉ちゃんなんだから我慢しないと。」
ばん!
妹に睨みを利かせると威嚇も兼ねて机を叩いた。
「いやいや。だって霜音ってどう考えても男の子の名前じゃないよね。」
・・・授業の始まりを知らせる木琴の音が響き渡る。
軽く舌打ちをぶつけ、妹のいる部屋から出る。
ガラガラっ!
「・・・またどうぞ。」
妹の皮肉じみたセリフに苛立ちを覚えながら部屋を後にした。
カツっカツっ。
蟋蟀が歩く後ろから口を塞ぐ形で物陰に抱き寄せた。
口が塞がって混乱してる蟋蟀に囁くように言い聞かせた。
「お前の能力は〇〇〇〇だ。」
そういわれるとグサリと嫌な音がして目が覚めた。
これは蟋蟀が行方不明になる一週間前の話。
そうこれが蟋蟀の行方不明になった経緯。
~春~
「んん~~~~~~~~!!これは大成功の予感!クロエにも食わせねば!」
コンロの火を止めて階段の手すりをつかみ上を見上げた。
「クーロエ!おいしいおいしいとてもおいしいホットケーキが焼けましたよー!今なら蜂蜜バターです!」
返事がない。ということはまだ不貞腐れてるのだろう。姉としては放っておくことはできない。
ぎい・・・ぎい・・・
気配を殺しつつ二階に歩を進めた。
一番手前の部屋にころんっとかけてあるドアプレートにはこう書かれていた。
「kuroe'ZD」
クロエのセンスによるとクロエと閉店の意であるクローズドをかけているらしい。
こんこん!
がしゃっ!どたどたっ
クロエは姉が上ってきてるとは思わず、慌てふためいている。
こんこん!
クロエ「いっ、いませーん!!」
「えっでもいま物音がしましたよ?クロエがいないのに物音がするのであればお姉ちゃんとして見過ごすわけにはいきません!さあ、開けてください!」
姉としてはストーカーなどは許せない。
もしストーカーさんがいるなら・・・とおもうとさっきまで握っていた包丁をそいつに刺さなければならない。
クロエ「わかった!わかったよ・・・もう、お姉ちゃんっていうよりはメンヘラじゃん!」
「お姉ちゃんはクロエの下着の柄が気になります!ついでにホットケーキを食べましょう。」
今日の下着は確か上が模様がついてて下が無地の子供パンツだ。
がちゃ
クロエ「もう、お姉ちゃんまたホットケーキ焼いたの?いい加減うちの卵の占有やめてよ。」
「ですがホットケーキは栄養科学の観点から見ても非常に発育に良いとされていて年頃の妹にはぜがひでも食べてもらいたく・・・」
栄養学的にっていうのは定かではないが牛乳と卵を毎日とるのは確かに発育にはいいらしい。
その証拠を示すように妹ちゃんは軒並み発育がいい。※ただし、食べた後は運動必須!
クロエ「はあ・・・ホットケーキってそんなに胸に良いんだっけ?むしろお姉ちゃんが食べなよ」
「それはお姉ちゃんのお胸がマゼラン海峡大絶壁ってことですか?」
特に怒ることもない至って平然と答える姉。
実際『小ささの中にも正義アリ』なので起こる理由などないということだった。
クロエ「もう、いいから一緒食べよう?持ってきたんでしょ?暖房が逃げてくからドア閉めて。」
「もちろん持ってきましたよ!こちらが今日の自信作になります!」
ぎぃー・・・がちゃん。
ドアが閉まる勢いでドアプレートが裏返った。
『HIMARI'zd』
中では姉妹がわちゃわちゃしている。
ぎい・・・ぎい・・・
足音が階段を上がってくる。男の手にはひまりが料理に使ったバターナイフが握られていた。
ぎい・・・ぎい・・・
男はひまりたちのいる部屋を通り越して父母の寝室へと入っていった。
ばたん!
ひまり「むぐっ!?お父さん帰ってきたのかな・・・?」
クロエ「やっぱりお父さんの前でその恰好見られちゃまずいのかな??」
姉の着ている服はメイド服。つまり敬語を使っていたのはメイドシチュということだ。
クロエ「ちょっと見てくるよ。お姉ちゃんは制服にでも着替えてて。」
がちゃり。ばたん。
姉は近くにあった自分の制服をするすると着込んでいった。
(ん、これクロエのだ。やっちゃった。わざとじゃないわざとじゃない。)
脱ぐのは億劫だと、妹の制服を着たまま部屋を出て父母の部屋へ向かった。
ひまり「お父さん?クロエ?どったの?会社早退した・・・むぐっ!?」
後ろから誰かに口を塞がれた。
「お前の能力は”姉たる者”だ。」
ぐさりという感触に違和感を覚えた。
二回刺された。一呼吸おいてぐさりと。
ざざー・・・『お前の能力は”大雀蜂は三度刺す”だ。』
砂嵐のような目眩とともに能力を諭され目が覚めた。
目の前に転がる一つの異物に気がついた。
ひまり「クロエ!大丈夫!?」
クロエ「ん~・・・生きてる・・・?」
クロエの背中に注視した。
傷は・・・ない。襲われたのは夢だった・・・?
クロエ「お姉ちゃん、ぷっくくっ。目が充血してるよ。片目だけ。ぷくくっ。」
ひまり「えっ、なんともないですが・・・転んだ時ですかね?」
クロエに手鏡を渡される。・・・確かに赤かった。充血というよりオッドアイの如く。
ひまり「顔洗ってきますね。クロエは戸締りしててください!さっきの不審者がまだ出るかもしれません。」
一階へと歩を進める。ギィ…ギィ…。
ピンポー---ン!
ひまり「私が出ますー!」
がちゃっ
ひまり「あっ、おとうさん。おかえり。」
「なんだ。ひまりか。クロエかと思った。どうしてクロエの制服なんて着てるんだ?」
ひまり「ん~?いや、ちょっとね・・・どうよ!似合ってるっしょ!私もまだまだ若いのです。」エッヘン!
「似合ってるかどうかよりよく妹の服入るな~と感心してるよ。クロエは?」
ひまり「ん?クロエ―。」
クロエが下りてきた。
クロエ「ひまねえ。その人だれ?」
は?おとうさんじゃん・・・ふとクロエの見てる景色が気になった。
ひまり「!!???おとうさんじゃない!?!?」
かがみのように反射して見えていた光景にはお父さんではない”だれか”が。
「ちっ!もうバレたか!!おれっちはただ・・・能力の説明書を持ってきただけだからな!!これ!」
クロエと私の手には紙が握られていた。
『能力代理人より』
後ろを振り向くのを忘れていた。
ばっ!
ひまり「いない・・・。」
クロエ「ひまねえ・・・?だれいまの?」
わからない。というかいま鏡が反射するみたいに景色が反射して・・・。
クロエと顔を見合わせる。
クロエ「とりあえず、封筒の中見てみようか?」
――――二階
クロエ「えーっと?『大雀蜂は3度刺す?は、三回殺意を持てば相手を殺せる。そして自分は三回まで生き返ることができるぅ??』なにそれ?」
ひまり「私は『姉たる者は妹の視覚、痛覚、聴覚の3つのうちからどれかを肩代わりできる。』だって。」
少なくとも日常で役に立つことはないだろう。
クロエ「ねえねえ。学校で使ってみようか?」
学校で使う・・・?
ひまり「あっそうか。頭いいねクロエ。」
クロエ「それだけじゃなくてね?まあお楽しみにっていうことで。」
?。なんだろう。
――――土曜日
キーンコンカーンコン。
女教師「では土曜日ということで小テストを行います。」
『『ええー----!?』』
(ktkr!クロエ様大明神様お願いしますね・・・。)
クロエの視界をハイジャックする。
広げられてるのは、国語の教科書。
ひまり「えっと、卑怯者、って私のことそれ。問1.例えばを使って短文を作りなさい。。。」
クロエ「ひまねえ声に出してもわからないんだって・・・。」
東棟の校舎の上から西棟の3階、3年生の教室を見下ろしながら3年生の『簡単な国語!萌え辞書 短文作成も楽々。』を眺めていた。
学校では授業が行われていた。
クロエ「聴覚も借りればこっちの声は聞こえんのに・・・。ん~!いい天気だなー。」
目の前には夕焼けが広がっていた。
季節は AUTUMN 秋だ。
クロエ「日が暮れるの早い。流石あk・・・。」
ぐさっ!
クロエの胸の位置に鍵が刺さっていた。
「よくも先生を・・・これが俺の能力 折れてる剣だ。」
ひまりを椅子に座らせて、萌え本を見させる形で座らせた。
夕風でぺらぺらなびくページ。しかしひまりは微動だにしない。
「クロエー!テスト上手くいったよ~!」
!!!。
屋上ではクロエが死んでいた。
1つ目の能力=姉たる者
2つ目の能力=大雀蜂は3度刺す
3つ目の能力=折れてる剣