表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/84

恋人

「この演習が始まった理由は、みなさんも知っている通り。世界情勢が大きく関わっています。世界は戦いに満ちています。だからこそ。力を磨いて、この世界を生き残っていって欲しいと思います。この学園の生徒が、生きる礎になる事を願います」

セムヤザの挨拶が穏やかに響く。


「よっしゃ!やるぞぉ!」

剣など、格闘戦に参加する学生たちが勢いよく駆け出していく。

「自動機構兵器の対戦に参加する者はこっちだぞー」

「行きましょうか」

シェミが、僕の手を取ると、そのまま引っ張ろうとする。

「ん?二人ともこっちの方が早いよ」

ミホは笑いながらその手を取っていた。

「近道はこっちだから」

自然とシェミが繋いでいた手を外すと、さらりと自分の手を絡めてくる。

「えっと、、」

「何か?」

ミホがちょっと怖い。


「おお。やっと恋人さん達の到着か。待ったぞ」

会場に到着すると、笑いながら、ラハムが手を振っていた。


横で小さくなっているラフムが見える。首の赤いスカーフは絶対に外さないらしい。

「こ、、、恋人ですか、、まだ、そこまでは、、、」

シェミが、顔を赤くしているが。

そんなシェミを後目に、さらにしっかりと腕を絡めて来るミホ。

「私たちの事。理解は、してくださいね」

優しい顔をしているのに、目が笑っていないミホを見て、思わず震えてしまうのだった。



「次!シュウ対、ラッケン!」

ラッケンと呼ばれたのは、大学2年生の先輩だ。

自動機構兵器の機構構築を専行にしている人だった。


「各自、準備を!」

審判役の先生がその手を上げるのを確認してから、僕はゆっくりと、目の前に置いてある、作業用の自動機構兵器に乗り込む。


「ねえミホ。シェミに、当りがきつくないか?」

コクピットが閉まった時、僕はミホに語り掛ける。

しかし、返事はなく。

スーツが少しきつめに締まって来る。

「ミホ?」

もう一度、スーツ化したミホに話しかけた時。

「開始!」

試合が始まった。


ラッケン先輩の乗った作業アームが襲い掛かって来る。

そのアームを受け流しながら、足元を滑らし、その横へと機体を動かす。

ショベルカーのバケットのようなアームで相手を吹き飛ばしながら、自分の機体を回転させる。

「だって、、寂しいというか、、羨ましいから」

ミホが小さく呟くように返事を返して来る。

「分ってるの。あの時の私の判断も、正しいと。今の私も、同じ答えを出すと思うから。でも」

態勢を整え直した先輩の機体が、アームを振り上げる。

「どうしようもなく、イライラするのっ!最近、彼女と一緒にいる事が多くて、二人っきりになれないしっ!悪いっ!?」

叫ぶように怒鳴るミホ。

一気にミホの感情が流れ込んで来る。


その全てを受け止めて。僕は思わず微笑んでいた。

「大丈夫。ミホは、僕の大事な人だし」

アームを受け止める。

ミシッと音がするのが聞こえる。

「僕の、一番の恋人は、ミホだから」

瞬間。

僕は、スーツ姿のまま、自動脱出装置で、空中に飛び出ていた。

綺麗にバラバラになっている作業用自動機構兵器。


「ミホ、、魔力調節、、間違えたでしょ」

「勝者!ラッケン!」

先生の声が会場に響く。

「いいでしょ。間違えただけだから」

負けたと言うのに、返事をするミホの声は、とても嬉しそうだった。


「絶対に、シュウ様の仇はとります!」

これでもかと意気込みながら、作業用自動機構兵器に乗り込むシェミ。


圧倒的な速度でほんろうしながら、相手の自動機構兵器を倒して行く。


「シェミさん。強いですね」

ミホが、感心した声を出す。

「ねぇ、、ミホ?」

「魔力調節も、適切です。ロネさんも、凄い接続者なんですね」

「ねぇ、、僕は心地いいからいいけど」

僕の言葉に、全身がギュッと締まるのを感じる。

「試合終わったから、スーツ解除してもいいと思うけど」

「さすが、私たちが認めた人達ですね」

僕は小さくため息を吐きながら。

自分の胸に手を当てる。

 ゆっくりと優しく締め付けてくるスーツは、まるで甘える子共が抱き着いているようだった。


「作業用自動機構兵器、格闘部門、勝者シェミ!」

表彰台に立っている彼女は、僕を見つけて、全力で手を振っている。


シェミに手を振り返しながら。

「ミホ」

スーツ化を解除しようとしないミホに、大事な恋人に。大事な一言をかける。



「おかえり」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ