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のろし

何でこうなった?


『破ける!痛い!優しく動いてよ!』

「無理!」


僕は、体をかがませながら、右手を空中に突き出す。

ビリッと、腕の付け根がちぎれたような激しい痛みに襲われるが、すぐに無くなる。


その動きに合わせて、8メートルと小さめの自動機構兵器(オートモーター)の手が、目の前の15メートル級の自動機構兵器(オートモーター)の胸を貫いた。


『いやぁぁ!』

スーツの一部が破れ。ミホの悲鳴が聞こえる。

ちぎれた部分が少し痛い気もする。


別に、僕が何をしているわけでも無く。

俺の動きが速すぎて、ミホが着いて来れていないのだ。


しかし、破れる端から、瞬時に回復していくミホスーツ。

コクピットの中にあふれる魔力は、10万をとうに超えている。


神機クラス 自動機構兵器(オートモーター) ルシフェル。

俺の機体であり。その戦闘力は、測定不能領域。


『痛い!』

時々ギュッとスーツが締め付けてくるのは、痛みを耐えているからなのだろうか。


スーツ化したら痛みがなくなるとか、あればいいのに。

そんな事を思いながら、超至近距離から撃たれたスプレーガンを空中に飛んで避ける。


「がら空きだ!」

俺の自動機構兵器(オートモーター)の蹴りが、相手の自動機構兵器(オートモーター)の頭をとらえ。

一気に爆散する。


足の付け根が痛い。


「終わったか?」

俺が振り向くと。

真っ赤な魔力剣を振り上げて突進してくる自動機構兵器(オートモーター)が見える。


俺はコクピットの中。右手に魔力を集中させる。

『熱い!あついの!』

わめくミホの声を聞きながら。


コクピットの中で、生成された魔力剣をなぎ払う。


自動機構兵器(オートモーター)も、その動きに合わせ、右手に生まれたピンクの剣をなぎ払い。

ビームスラッシュとなった剣光が飛んで行き、相手の自動機構兵器(オートモーター)を真っ二つにしていた。


「終わった・・・」

俺が呟くと。

『もう、やだぁ。イタイのやだぁ。あついのやだぁ。シュウのばかぁ』

ミホの泣き声が聞こえていた。




その日は普通の日だった。


普通に授業を受けて。普通に弁当を食べて。

いや、一つ違うのは、俺が遅刻しなかった事か。


「大会が終わったから、部活辞めちゃった」

ミホはベッドの中でそんな事を言っていた気がする。

上司命令もあり。

二人でただ抱き合って寝ていたのだが。

そのおかげか、朝の6時に、ミホにたたき起こされてしまったのだ。

結局、朝ごはんをつくるミホの姿を見ながらウトウトして。

ミホにせっつかれるように朝ごはんを食べ。


結局一緒に登校する事になった。


一緒に来た俺達を冷やかす声も多かったが。

先生方が、苦虫をかみつぶしたような顔をしているのが少し愉快だった。


「不純異性交遊です」

「いや、すでに支配者(ローダー)と、接続者(コンタクター)の契約が結ばれていて、軍もそれを認知しているなら、それは正式な物だと」

「子供が出来たら、学校の評判が」

「そこは、軍部が全て責任を負うと、返答が」


そんな会議があったか、なかったか。


先生は俺達がぎゃぁぎゃぁ騒いでいる間も、俺達の事を無視しているようにも見えた。


言い合いと言っても。

「なんで、昨日の間に準備してないのよ!」

と言った、俺の忘れ物についてだったが。

疲れて、後でやろうと思って忘れていたんだよ。

というか、次の日の授業分までしっかり教科書を持ってたミホの方がおかしいと思う。


そんなこんなで、久しぶりに午前の授業に全部出た俺は。

ミホと二人。屋上で一緒の弁当を食べていた。


教室で食べると、女子からも、男子からも絡まれてしまうので、二人でゆっくり食べたかっただけなのに。


突然、3機の自動機構兵器(オートモーター)が、校庭に降りて来た。


「え?え?」

何が起きているのか分からないミホの手を掴むと俺は走り出す。


あれは、隣のバルカン帝国の諜報部の自動機構兵器(オートモーター)だ。


しかも、Cランクと言う、諜報部隊といいつつ、テロや実行部隊として活動する生粋の戦闘用自動機構兵器(オートモーター)が混ざっている。


前回、接敵したのに、倒しきれなかったのかカイダさんは。

ゆっくりとこちらを見る自動機構兵器(オートモーター)

その手に、巨大な銃が見える。


「殺られる!」

強くそう思った時。

ミホの体が一気にひものようにばらけた。

そのまま、俺の体に巻き付き。

気が付いた時、俺の体は肌白いスーツに包まれていた。


『え?え?』

自分でも意図していなかったのか。

まだ混乱しているミホ。

声は、耳元と言うか、俺の体の中から聞こえてくる感じで、不思議だった。


暖かい。と思うと、『変態!』とすかさず返ってくる。

人肌に包まれているような。何か安心する着心地だった。


『シュウ。服着てない』

そんな声がボソリと聞こえる。

多分、分解でもされたんだろう。


替えの服なんて持ってきてないなぁ。

そんな事を考えていると。

目の前の自動機構兵器(オートモーター)が銃を校舎に向かって構える。

その武器が光り。

何も無い空中で放たれた魔力弾が弾け飛ぶ。

いつの間にか出来ていた魔力で作られた、巨大な盾の後ろから、ずずずと音を立てながら、小さな真っ黒い自動機構兵器(オートモーター)が出て来る。

4階建ての校舎よりも小さい。


相手の半分の大きさもない。

そんな事を思っていると。

その機体がこちらを向く。その胸の部分が開いている。

「乗れってか」

俺は一瞬で理解し。

地面を蹴り、空中へと飛ぶ。


その瞬間。開いていた胸から透明な光が俺を包むのが分かり。

気が付いたら、俺はコクピットの中に立っていた。


トレースシステムコントローラー。

自分の体の動きがそのまま、機体に反映されるコクピットだ。


格闘術は得意じゃないんだけどな。

そんな事を思っていると。

いきなり、周りの風景が消え。

システムダウンする。


【起動、活動の魔力が足りません。エネルギー不足。稼働不可。接続者(コンタクター)の魔力測定。微量にて測定できず】


機械のその言葉に、あきらかにショックを受けているミホ。


【遺伝子チェック開始。完了。契約者と特定。保護システムチェック。契約者の能力の束縛を確認。一部を一時的に解除します】


次の言葉の後。

体の奥から、とんでもない魔力が湧き出て来た。

次から次から。まるで今まで詰まっていた噴水が噴き出るかのように。

力が、魔力が。

一気に湧き出て来る。考えが、頭の回転まで一気に速くなる。

目の前の光景が遅く見え始める。


【時間軸がズレています。機体時間の固定開始。終了。外部時間の30倍の速さから、3倍に落として固定完了。ナノマシンの活性化開始。完了。支配者(ローダー)の能力解放終了。9の階乗にて認識】


階乗?なんだそれ?


支配者(ローダー)の能力値に応じて、機体設定開始。完了。20の階乗にて一時固定】


『ちょっと、ねぇ。シュウくん。待って。溺れる。溺れちゃう』

ミホの慌てる声が聞こえる。

【起動開始】

駆動音がし始める。


「なんだぁ~。あれは~」

すっごく間延びした声が聞こえて来る。

相手の機体の通信のようだ。


360度、全てのモニターが生き返る。

ゆっくりと立ち上がる俺の自動機構兵器(オートモーター)


【魔力値表示開始】

隅っこに、魔力表示が出る。

ふと見ると、魔力がとんでもない事になっている。

コクピット内魔力、20万。

これは、機体自体の魔力がコクピットまで溢れて来ている証拠である。

俺の魔力も引っ張られるようにあふれ出している。

『だから、魔力で溺れる!シュウ君の魔力が溢れる!』

ふと見ると。

ミホの魔力が300まで落ちていた。

そして俺の魔力値は、とんでも無い事に、15万まで伸びている。

そりゃ、この差だと、魔力に溺れると言うのも分かるかもしれない。

『ダメ。染まっちゃう、、』

ミホの声が諦めになり。

一気にミホの魔力値が5000まで跳ねあがる。

『また、染められちゃった』

泣いているミホ。


ミホの生体ナノマシンの全てが俺の魔力に染まったという事なのだろう。

その瞬間。

コクピット内の全てが光り出した。


【ルシファ 起動完了。接続者(コンタクター)登録完了。能力値の落差を確認。機体性能に制限がかかります】

そんな声も聞こえる。


再び武器をゆっくりと持ち上げる敵の自動機構兵器(オートモーター)が見える。


俺は、コクピットの中。地面を蹴り空中へと飛び上がる。

『イタイ!早い!痛い!』

そんな悲鳴を聞きながら。


敵の機体を抜き手で貫いたのだった。




全てが終わった後。

俺達は再び校舎の屋上に戻っていた。

ルシファは、敵を倒すと再び空間に消えていく。



お弁当を食べていた時と同じ風景。


ただ最初と違うところは。

グランドに倒れていたり、近くの山に落下している、真っ二つになった自動機構兵器(オートモーター)と。

『戻れないよぉ』


鳴き声のまま、スーツ姿から戻れなくなったミホの事だけだった。

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