問題納まり、問題増える
「お、、はようございます」
「おはようございます」
朝から、僕の腕に、しっかりと自分の腕を絡ませてくるミホ。
そして、そのミホを見て、言いよどむシェミ。
勝った!と満面の笑みを浮かべるミホを、僕はなんとも言えない顔で見ていた。
『気が付いたら、別の女性を囲おうとしていていた癖に』
そんな感情が、ミホから感じられる。
いやいや、一応話し合ったじゃない。
僕たちの安全のために、彼女を、、その、、、利用しようと、、
そんな事を考えていた僕の顔をじっと見上げるミホ。
思わず顔を背ける僕。
こんな時、感情が分かるなんていうオプションはいらないと思ってしまう。
そんな僕の手をさらにしっかりと抱えてジト目で僕を見るミホと、ちょっとおろおろしているシェミと一緒に僕は学園の中へと入る。
「例の襲撃の件を踏まえて、休校とする」
そんなメールを期待していたのに、送られてきたのは逆の事だった。
「事態を把握したいため、一度全員登校する事」
そのメールに一気にやる気を失ったのは言うまでも無いんだけど。
会話らしい会話も無いまま、学園の敷地に入った僕たちを待っていたのは、学園長の秘書をしているお姉さんだった。
「おはようございます。シュウ様をはじめとした、皆さまには、学園長がお呼びです。ご同行お願いいたします」
学園の校門前で、頭を下げられてはどうしようも無かった。
「で、、、」
凄く不機嫌そうな顔をしているセムヤザ。
自分が知る限り、笑顔を絶やさない人が珍しいと思っていると。
「私が機嫌が悪いのは、君のせいだよ。シュウ君」
僕と目が合う。
「まったく、調べれば調べるほど、何で君を受け入れたのか、自分に対して泣きたくなる」
目頭を押さえたまま、僕たちをちらりと見ると。
「まず、、今回の大騒動の首謀者は知っているかい?」
この状況でも、繋いだ手を離さないミホが、にっこりと笑う。
「状況と、今までの流れから、モータースがシュウ君の暗殺に走ったと思っています」
笑顔で怖い事を言うミホ。
僕が預かっていたミホの能力である空間統制は、ミホに戻っている。
けど、ミホに戻すと言った時に、ミホから、「預けたままで大丈夫ですよ?私がとっさに預けたのは、シュウ君の中にある私に向けてですし。処理能力のほんの数パーセントですから」
と笑われてしまった。
セムヤザは、その返答にうなずきで肯定する。
「正解でもある。けど、少し違うかも知れない」
その返答に、少し怪訝な顔をするミホ。
「今回の件。シュウ君を暗殺するために、このアミーの街ごと消滅させようとした事。明らかに異常だ」
確かに、それは僕も思っていた。
ミホは、ゆっくりと考え事をしていたけど。
「それは、、もしかして、別の何かの勢力がからんでいると?」
目を開けて、学園長を見る。
「そうとしか、思えない。最初に爆発した榴弾は、人道支援と称して過去からずっと集められていた不発弾が主だった。それを集めていたのは、太陽の陽日と呼ばれる団体だった」
シェミが、息を呑む。
「私の両親を治してくれたのも、、、太陽の陽日、、です、、」
僕の横で、小さく呟くのが聞こえる。
魔力飽和は良くあること。
しかし、それを治療できるなんて、不思議だと思っていたけれど。
「それを踏まえて、、だ」
扉が開き。入って来たのは、見知った顔。
「ラハム?」
確か、僕が貫いたはず、、
入ってくるなり、頭を下げ続けているラハム。
一緒に入って来た支配者の女の子も、ずっと頭を下げている。
なんで女の子だと分かったかと言うと、彼女がスカートだったからだ。
見た目はすごくボーイッシュで、赤いマフラーのような物を巻いているのが目に付く。
赤い髪は、ラハムとほぼ同じだのだが。
「良く来てくれた。傷は大丈夫かい?」
「はい、良くなりました。そもそも、それほどの傷でもありません」
「あ、、あの、、、不思議な力に、癒して、、、いただいた、、ので、、」
僕は思わず、シェミを見る。
シェミはにっこりと笑っていた。
「この異常さも、聞きたかったのだよ。けれども、それは後だ。君と接触して来たのは、誰だったんだい?あれだけの数の自動機構兵器を、持ち込む事も難しいはずだが?しかもA級の機体まで」
「太陽の陽日、、、が支援してくれると、、言われました。命令事態は、モータースから、、でした」
大人しく返事をするラハム。
「で、、それを言うと言う事は?」
あっさりと、機密を話すラハムにびっくりはしていたけど、セムヤザは全て分かっているようだった。
「わ、、私は、この命を救われました!それにより、心を入れ替えたのです!」
くるりと向きを変え、シェミを見るラハム。
「モータースの大使など、もうどうでもいいのです!この命、シェミ様に捧げさせていただきます!私の
物でもある、ラフムと一緒に!」
二人して、シェミに頭を下げていて、すごく動揺しているシェミ。
「まあ、分からないでも無いけどね。シェミさんが乗った機体。それも問題だから」
セムヤザは大きくため息を吐く。
「これだけ大事だったのに、、、死者ゼロとか、、、死んでいたはずの旧研究棟の二人が生き返ったとか、、聞きたくない報告を大量に受け取った私の身にもなって欲しい物なのだけれど」
セムヤザは何処か遠い目をしている。
「あの、、彼女といいますか、、あの機体と言ったらいいのか、、、その、、、誰でも癒すと言われていました」
シェミが、うつむいたまま小さく呟く。
ミホに対抗するかのようにつないでいる左手を握りしめてくるのを感じながら、僕もため息を吐くしかなかった。
読んでいただき、本当にありがとうございます。
評価をぽちっとしていただくと、嬉しい限りです。




