黄色の神機。
私の魔力が溢れる。
助けたい。その思いだけが私の中にあふれる。
『高魔力を感知。契約者、、該当なし。契約条件、、認証。 契約可能』
何か、声が聞こえる。
でも、、そんな事は知った事じゃない。
「シュウ君を助けて!」
思わず叫んだ私の声に。
『了承。契約者として認証。契約完了』
声と同時に、目の前に小さな自動機構兵器が浮かんでいた。
「えっと、、、」
『乗ってください。私なら、助けれます。助けます』
「お願いします!」
私は、何も考えずに乗り込む。
ロネが、慌てた声を上げてるのが聞こえる。
「ちょ、ちょっと、お嬢様? きょ、、きょうせい、、」
私が乗り込んだ自動機構兵器の中へと、紐状にバラバラになったロネが入って来る。
「お嬢様、強制は止めて頂きたいのですが」
私のスーツとなったロネが、とても苦い口調だった。
けどそんな事なんか気にもしていられない。
地面に叩きつけられたシュウ君はまったく動かない。
止めといわんばかりに、魔力剣を突き刺そうとしてシュウ君の魔力盾が悲鳴をあげているのが見える。
あれが壊れたら、シュウ君は突き刺される。
「やめてっ!」
私が叫んだ時。光が、魔力が溢れて行く。
『契約終了。ラファエル起動します』
黄色い光が、黄色い魔力が溢れて行く。
その光の中。
私は、強く強く念じる。 私の大事な人を助けて欲しいと。
シュウ君を貫こうとしていた魔力剣が、崩れるように消滅して行く。
彼を踏みつぶそうとしていた自動機構兵器が、全部吹き飛ばされる。
そして。
黄色い魔力は、世界を。全てを呑み込んで行った。
「はぁ。何でこうも、訪問者が多くなるかな」
目の前で、黒い顔すら分からないくらい黒い少年が、自分の頭を掻いていた。
周りは白く、何も無い。
「あら、あら。めずらしい」
女の子が、もの珍しそうに、私を覗き込んで来る。
女の子は、光っているというか、白かった。
白い世界より白いと言えばいいのか。
良く私も分からない。
「あー!こんな所にいたんだ!」
突然、声が聞こえて、後ろを振り向くと、黄色い光の女の子が二人を指さしていた。
「はぁ?何処に行ってたんだ?」
「見捨てたのは、あなた達でしょー!」
「見捨てた、、、わね」
「そこは違うと言ってよねぇ!」
「いや、お前、バラバラになっても大丈夫じゃないか」
「私だって、痛い時は痛いのっ!」
「あ、、あの、、、」
突然始まった3人の喧嘩に、置いていかれてしまった私が声を出すと。
「あー。ごめんね。ちょっとあなたの事を忘れてた」
「ほんとに、、ごめんね」
「こんな二人だから、私がいないとダメなのよねぇ」
「いつから、私たちのお守り役になったのですかっ!」
「えー前からじゃん」
「それは、、知らない」
「えー。ぼろ雑巾みたいに、お父様に殴られた時、助けてあげたの、忘れたのぉ?」
「そ、、、それは、、、その時は、助かったというか、、、」
また3人で言い合いが始まる。
「えっと、、」
私は、思わず自分の前で手を組む。
「ああ。とりあえず、、大事な人を助けたいんだよねぇ。いいよっ」
黄色い女の子が笑っているのが分かる。
彼女の横に、黒髪の少女が白い床から浮かんで来る。
「え、ちょっと、世界の理が、、」
「いや、試練だろ!?」
「気にしないー」
「お前っ!器に対する試練のために、どれだけ準備して来たと思ってるのっ!」
「私を見捨てた二人なんか知らないーー」
「おまっ」
突撃してくる黒い男の子を片手で抑えながら。
「この子ね。あなたの大事な人の大事な人なの。でも、大丈夫。あなたも同じくらいに、大事な人になってるから」
黄色い女の子は、にっこりと笑っているようなしぐさをする。
「この人がいないと、彼、、壊れちゃうから。あなたのために、この子を返すね」
そして、ゆっくりと私を見る。
「二人はまどろっこしいから。でもね。始まっちゃったの。始まったら、終らないといけない」
真剣な声。
「終わりは、どうなるかは分からない。けど、私は悪い事にはならないと思ってる。あなたと、彼と、この子がいれば」
ゆっくりと、世界の光りが消えて行くように思える。
「とりあえず、よろしくね。何があっても、誰であっても治してあげるから」
光りがおさまる。
全ての魔力が、シュウ君の魔力制御を受けていたときのように、私の中に魔力が収まっていく。
とっても静かだった。
戦闘の音も。爆発音も聞こえない。
「そうだっ!シュウ君!」
私は叫びながら、自動機構兵器のモニターを確認する。
シュウ君が、横になっていた。
黒髪の、女の人に、膝枕をされながら。
ゆっくりと、その女の人は、シュウ君の髪を撫でている。
「ミホ、、、さん?」
私は思わず彼女の名前を呼ぶけど。雰囲気が違う。
今まで、冷酷というか、冷たい印象があったのに。
まるで、今の彼女は、聖母のような。すごく穏やかな雰囲気を纏っている。
「相変わらず、、なんだから。シュウ君は」
自動機構兵器の優秀すぎる集音器が、ミホさんの声を拾っている。
「ただいま。シュウ君」
それだけ言うと、彼女は、シュウ君にキスをする。
私は、、、その姿を見て。。。。
自分の手を力いっぱい握り締めていた事に、やっと気が付いたのだった。
新機体
ラファエル 大天使 ユダヤ教の旧典から、新典に変わった時に記載が無くなっていた天使。
癒しをつかさどり、精神障碍者の守護者。精神、 黄色で描かれる。
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