突然生まれる戦場。
「どうなっている!」
セムヤザの叫びも、怒鳴り声も、全ては爆発音に掻き消えて行く。
あの爆発があった日から4日後。
爆発の調査をしている最中であったのに。
街から爆発音が響く。
「自動機構兵器が、4機。町を破壊しています!」
「そんな事は見れば分かる!何処の機体だ!」
「全く分かりません。所属不明!」
セムヤザの所に届く情報は全て大雑把な物だ。
学園の理事長室に、無数のモニターが浮かび。
街の防衛を任されている自衛団の指令室のほぼ全員が集まっている。
最初の一撃があってから、1時間で学園の理事長室を指令室に変えてしまえる速度は凄いものなのだが。
「こちらの自動機構兵器、出撃します!」
「2体大破!」
いかせん。弱すぎる。
「敵の情報入りました!自動機構兵器!B級!3体!」
「B級?!」
「一体、A級がいます!」
「本気の侵略かっ!」
セムヤザは思わず机を叩く。
ここ、アミーの中には、防衛用の自動機構兵器なんて、C級がいるだけだ。
「首都に応援要請!このままでは、堕とされる!」
セムヤザの言葉に、すぐ通信を始めるが。
「ダメです!魔力による障害があります!」
「戦時中でもないのに、魔力妨害とかありえん!」
セムヤザが叫ぶが。
状況は悪化する一方であった。
「どうしますか?」
ミホが、目の前の光景を見ながら、声をかけてくる。
「どうも出来ない、、よ。僕たちの機体は、、」
また神機に乗った時。
ミホがどうなるかは分からない。
多分、彼女は、次は返って来れない気がする。
「あれは、、乗れないよ、、」
僕は下を俯いたまま、泣きたくなる。
その時だった。
「いつまでもガキのままなんだ?お前に教えた事は、神機に乗るための物じゃねぇぞ」
突然、聞き覚えのある声が聞こえる。
顔を上げるも、そこにいるのは、感情がないまま。
冷静な顔のミホだけ。
「アラキ、、師匠?」
僕が呟くも、ミホは返事すらしなかった。
「シェミ様!」
突然の爆発の音にびっくりして屋敷を出た私の前に見えていたのは、燃える町と、数体の自動機構兵器。
「なぜ、、」
その思いがこみ上げて来る。
「危ないです!お嬢様!」
ロネの声が聞こえていたはずなのに、私の頭の中で理解が出来なくなっていた。
目の前で、燃える町。
あの下には、私の知っている人がいるのでは?
同級生が。友達が。
ご飯を食べに行っていた、レストランのシェフが。
私が、その思いに動けなくなっていた時。
銃声が響く。
目の前で、ロネが、倒れる。
左手が。
ロネの左手が無くなっている。
「チッ。腰紐かと思ってたら、護衛かよ」
目の前で、銃を構えている顔は知っている人だった。
食堂で、私たちにからんできた男性。
モータースからの大使。ラハム。
「大使が、こんな事をしても良いと思っているのですか!」
私も、公ではないけれど。家の都合だけど。それでも近い役目を負っていると思っている。
私の質問に、うっすらと笑うラハム。
「仕方無いだろう?本国から、シュウを殺せって言われたんだからさ」
その言葉に、、私は茫然とする。
「知っているか?あいつは悪魔だ。数百、数千の人間を殺して笑っていられる悪魔だ」
ラハムの目が、おかしい事に気が付いてしまった。
私は、体が震えるのを感じる。
「だからさ。事故死で収めようとしたのに。お前も、シュウも、抵抗してくれるから」
「仕方無い。仕方無いんだよ」
銃を向けられる。
「だからと言って、何故、お嬢様まで!」
ロネが声を上げる。
ロネの失った左手から、魔力が流れているのが何故か分かる。
多分、シュウ君との訓練のおかげだと思う。
「ああ。そんなの決まっているだろ。お前も気に喰わないから、ついでだよ」
狂っている。
だからと言って、人を殺そうとするなんて。
「だから、死ね」
ラハムが、魔力銃の引き金を引く。
ロネが私を右手で押す。
銃は、ロネの頭を打ち抜くはずだったのに。
弾かれた。
赤い光に。
「何だ!何だよ!」
ラハムが狂ったように銃を乱射するのに。
全てが光りにはじかれ、止められる。
「そうか、、僕のせいだったんだね」
小さく呟く声が聞こえる。
私がいつまでも聞きたいと思える声。
この人がいれば、大丈夫と思わせてくれる声。
後ろを振り返った時、困惑した顔の、私の好きな人が立っていた。
うん。
今、はっきり理解した。
私は、シュウ君が
好き。
いつも、私が危なくなったら側に。
何かあったら、来てくれる。
そんな安心感が、私を包んでくれる。
「お前がぁ!」
さらに、銃を連射するラハム。
でも。
全部、シュウ君の前で弾かれる。
「そんなちっぽけな銃で、抜けるはずもありません。自動機構兵器の武器でも持って来たらどうですか?」
ミホさんが、冷たい顔のまま彼に忠告する。
「ははは。いいだろう。いいだろうよ!言った事!後悔するな!」
突然、一体の自動機構兵器が、降りて来る。
いや。落ちて来た。
上を見ると、町を焼いている機体とは別の自動機構兵器が飛んでいる。
「一体、どれだけいるのよ、、」
付き人の顔を辞めたロネが呟くのが聞こえる。
「はははは!」
ラハムは笑いながら、落ちて来た自動機構兵器のコクピットに入り込む。
中に、人が乗っているような気がしたけど。
けど、、あの子。首輪をしていたような。
そんな事を思う間も無く。目の前で、ラハムがスーツ化する。
乗っている子が、振るえる姿が見えた気がしたけどコクピットはそのまま閉まってしまう。
「死ねよ!」
ラハムの声で叫びながら、自動機構兵器が持つ巨大な銃口が、私たちに付きつけられた。




