騎士
「ところでさ、、シュウ、、、だっけ?良くやってるじゃねぇか」
食堂で普通にご飯を食べていると、一人の男子に声をかけられる。
僕がそっちの方を向くと。
赤い髪をした背の高い、がっちりした男がこっちを睨みながらテーブルの横に立っていた。
「何のこと?」
僕は良く分からず、首をかしげる。
「あの、、、お汁が落ちそうです、、」
「あ、、ごめん」
シェミに注意と言うか、声をかけられて僕はセットについていた汁を横にずらす。
「おそらく、この状況に嫉妬してるだけのようです」
ミホが、僕の横で冷静に状況を報告する。
「んー。私も、、入ってる、、、よね、、」
ロネが、小さく呟くのが聞こえる。
ふと見ると、学食にいる男性の2,3割から、敵対の視線が送られているのに気が付いてしまった。
講義に入ってすぐにシェミと仲良くなったし。
ああ。
その視線で今自分が置かれている状況を理解してしまった。
隣に、ミホと、シェミ。
どちらも、美少女だ。ミホは、140㎝台の身長の、凛とした女性に見えるし。
シェミは、青っぽい銀色の髪で、150㎝台。どっちかといえば、可愛い系ではある。
しかも、シェミも、ミホも、お嬢様だし。
ロネはどっちかと言うと、スポーティな容姿だけど、もちろん可愛い。
つまり。。。
「女3人も抱えてよぉ。貴族様か?」
男が絡んで来た理由は、コレだった。
「貴族というよりは、、軍人というか、、、」
僕はとりあえず、自己紹介を兼ねて返事をする。
「ああ!そういう事を言ってんじゃねぇよ!」
思いっきりテーブルを叩く男。
ああ、面倒な事になりそう。
そんな事を思っていると。
「シュウ様は、私の支配者です。ロネさんはシェミさんの接続者です。そして、シュウ様とシェミ様の二人が同じ支配者が仲良くしているだけの状況で、何がおかしいのですか?」
ミホが、食事の手を止め、冷静に反論する。
「ああ!お前には聞いてねぇよ!人形は黙ってろ!」
男がミホに叫んだ時。
僕の中で、何かが弾けた。
イライラする。
「そうかよ」
僕は自分でもぞっとするほど低い声を出し。
ゆっくりと男の顔を見る。
ガタッ!と音を立てて男がその場に座り込んでいた。
殺気。威圧。
あまり得意ではないけれど。
『シュウ君の威圧は、時々腰が抜ける』
カイダさんがそんな事を言ってお墨付きになっている威圧だ。
「僕が誰と仲良くしていても、君には関係ないと思うけど」
ゆっくりと立ち上がる。
イライラした心のまま。
机を平手でたたく。
8人掛けのテーブルがひっくり返り、宙を浮く。
テーブルをそのまま殴ると。
大きなテーブルが空中で待っ二つになっていた。
「で?」
激しい音を立てて落ちるテーブルの音を聞きながら、もう一度男に顔を向ける。
男は、完全に腰を抜かして動けなくなっていたのだった。
「けが人が出たなかったから、まだよかったが」
その後、すぐに講師室に呼び出されてしまう。
「支配者の力が凄い事は知っていたが、君は私が聞いている支配者以上に強いようだね」
呆れたような声を出しながら、僕の方を見る指導員講師。
「弁償は、、してもらうよ」
冷静に、請求書を見せてくれる。
「分かりました」
それだけ言った僕の後ろで。
「あの!」
突然扉が開き、声を上げたのは、最近一緒にいる銀髪の子だった。
「私がいたから、あの男の人が、、その、私を守ってくれたというか、、」
必死に声を上げるシェミ。
その顔を見て、指導員講師はゆっくりと微笑む。
「大丈夫ですよ。シュウ君に対しておおきな罰はありません。ただ、、」
講師は僕の方を見る。
「みんな、学生生活に慣れて来たようです。その上で、君の存在が気になり始めたのでしょう。素敵な女性を常に連れているわけですから」
からかうような笑みを浮かべてこちらを見て来る講師に、少しイラッとしてしまう。
「しかし、君はこの国にとって大事な支配者であり、、」
真剣な顔になり、シェミを見る。
「新しい支配者を見つけてくれた人でもあります。その功績は高く評価されているのですよ」
穏やかに、しかしはっきりと肯定の笑みを浮かべてくれていた。
「あの、、ほんとうにすみなせん」
噛みながら、うつむきながら横を歩くシェミ。
「まあまあの出費ですね」
ミホが小さく呟く。
しかし、ミホの口座には、1億入っていたりする。
痛い出費ではないと思う。何のお金かは不明だけど。
カンナギ家はかなりの名家だから、なにがしかのお金なんだろうけど。
ついでに、僕の口座にも、6千万入っていたりするけど。
僕のは両親の従軍遺族金も入り続けている。
お金に関しては、二人ともまったく気にする事もない状況だった。
「気にする事もないと思うよ。僕が気に障ったから暴れただけだし」
僕はシェミに笑いかける。
しばらくシェミは何かを考えているようだったけど。
「あの、、今日、今から、お暇、、ですか?」
何かを決意したように顔を上げてこちらを見て来る。
170以上に伸びた僕とは少し身長差がある。
「うん。今日は大丈夫だけど」
正確には、今日も。だけどね。
講義が終わった後は、何もする事が無い。
バイトをしてもいいけど、36万の戦闘力が何を壊すか分からないから、あまりやりたくないし。
自分が意外と、沸点が低い事も分かってるつもりだし。
「でしたら、、あの、、今からおしゃくじに行きませんか?」
顔を真っ赤にして、しかし今度は俯かずに顔を上げて返事を待つシェミ。
噛みまくりのシェミに微笑みながら、僕は了承の気持ちを伝えたのだった。




