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検査にて

「どう?少しは慣れた?」

あの事件から、1週間が経過しようとしていた。

ケイトは、横で立っているミホに声をかける。


「はい。始めは何が何だか分からなかったけど、大分慣れてきました」

ミホはそう言って、ケイトと一緒に目の前のパネルを見ている。


ケイトが、ミホを連れて来たのだ。

「シュウの本当のデータ。あなたはしっかり見ておきなさい。相方であり、命を預ける事になるのだから」

そう言われて、最近は、シュウが検査を受けるたびにここに連れて来られている。

そこには、信じられないデータが並んでいる。

「すごい、、、」

ミホは、何度目になるのか、そんな言葉を口に出していた。


戦闘力80 学校ではそうだったのだが、今の表示は戦闘力9となっている。

しかし、魔力は、1万。しかも固定値。


戦闘力が突然変動するのはおかしいので、おそらく現在表示値が最低値だと思われる。上限は不明。と追記が加えられていたりする。

変動していく、ナノマシンの動きや、流れて行く生体データを、自分で処理しきれているのを見てとり、ケイトは目を細める。

「この子も、大概ね、、」

そんな呟きが聞こえて来る。



「身体能力は変わりないのですよね?」

「飛んだり、跳ねたりの身体能力で言うなら、通常の状態なら、普通の生血の人間よりも低いくらいね。けど、戦闘力80の意味が分からないのよ」


「彼は、ここに来た時から魔力が1万という事もあって、ここに来るようになってから、生体ナノマシンの稼働とその扱い方も訓練されているわ。データにも出ていると思うけど、いい動画があるの。こっちのパネルを見て」


ミホがふと目を向けると、過去の映像が流れている。

5歳くらいのシュウが、自動機構兵器(オートモーター)を収納している20メートルはありそうな天井まで飛び上がり、天井に手をついている映像が。


「笑えるでしょ。ありえないわよね。でも、これが戦闘力9のシュウ モリキという人間なの。私たちは、彼を調べても、調べても意味不明なままよ」


ケイトさんは、そう言って苦笑いを浮かべる。

戦闘力9の人間が、こんな化け物じみた事が出来るわけがない。

なのに、戦闘力は正確に測れない。

それに、一番じれったさを感じているのは、彼女だった。


「で。今日は本当にいいのね?」

ケイトは、データが流れるモニターから目を離し、ミホの顔を見る。

ミホは、赤くなりながら小さくうなづいていた。


今日、自分がこの軍の精密検査にかけられる事になっているのだが。

その結果を、シュウに見られる事になっていた。

自分の体の中を全部知られると言う事。

とっても恥ずかしいと思うのだが。


「これも、必要な事なのよ」

そう言われてしまっては仕方が無い。

正直、ミホにとってシュウはクラスメイトの一人と言う認識だった。


好きか、嫌いかで言えば、どっちでも無いといった感じのただの同級生。

しかし、最近いつも一緒にいるせいか。

すごく気になる人になっていた。


「さて。いつも通り。異常だらけだけど、異常なし」

ケイトは、そう言ってシュウの検査を終わる。

思わず笑うミホ。


「覚えておいてね。彼は異常すぎるの。絶対他言無用よ」

ケイトは検査の後でミホにくぎを刺す。


ミホもこの全てのデータが異常な事には気が付いている。

ユウキ達、英雄クラスと言われている人たちですら戦闘力300なのだ。

戦闘力9なのに、魔力1万が何を意味するのかは、予想すらつかない。


授業では、魔力も戦闘力に影響すると教えられた。

なら、シュウの戦闘力が9であるはずは無かった。

優秀と言われる兵士の10倍の魔力を持っているのだから。


ただ最近ケイトさんから言われた衝撃的な一言は。

「魔力1万の凄さといわれてもね。そうねぇ。遠距離で打たれた、戦闘力3000程度の自動機構兵器(オートモーター)の武器なら、魔力だけで受け止めてしまえるくらいの強さ。なのかしらね」

そんな事を言われてもまったく実感はわかなった。




そして俺は、交代したミホのデータを見ていた。


「良かったわね。健康そのものよ」

そう言われても。

彼女の体の中。内臓まで全部見せられている今の気持ちはなんと表現していいか分からない。


しかも、全部フルCG、カラーと来たものだ。

戦闘力は 200。

「まぁ、こんなものよね。接続者としては、強い方かしら」

いや十分強いし、さらに上がっている。

魔力は、500。

「スーツ化出来るギリギリの数値ね」

こっちは兵士の平均値の上限。十分すごいと思う。


後は、ナノマシンの分析データがずらっと並んでいるのだが。

「気になるのは、これなのよね」

ケイトさんが指差すとこにあるデータは、何かと融合しようとして、出来ない状態である事を意味していた。

「おそらく、あなたの血だと思うけど、こんな事、普通ないのよね」

首をひたすらかしげるケイトさん。


ケイトさんに分からない事が俺に分かるはずもない。

何も言えないでいると。

「ああ。そう言えば、君のナノマシンの比率、上がっているからね」

サラッとそんな事を言われた。


俺が、ケイトさんの顔を見ると。

「ミホさんを形成してる生体ナノマシンが君の中に入って、君の中に本来あったナノマシンを取り込んだの。だから、君の中には、ミホさんが常に居るって事ね」


そう言って笑うケイトさん。

「君がいれば、たとえ消滅しても、ミホさんを生き返らせる事も可能よ。再生された彼女に今までの記憶はないけどね」


それは、もうミホの形をした別の人じゃないだろうか?

でも、空気と、感情を読むのが苦手な俺が、ミホの感情だけよくわかるのはそのおかげなのかも知れない。ミホとつながっているから。


そんな事を思っていると。

「これで全部ね。とりあえず、二人とも心身ともに健康でなにより。明日、あなたの自動機構兵器(オートモーター)を起動させる実験に入るから、今日はしっかり寝なさいよ」


そう言われる。


ほぼ裸のミホがモニターの前で起き上がるのが見える。

俺が思わず顔をそらすと。

「明日、ずっと裸で抱き合うんだから、照れてどうするのよ」

そう笑われてしまう。


接続者(コンタクター)がスーツ化している間。神血の人間を着ている状態であり、しかも二人とも裸と同じなのだ。


俺自身も、裸で着込まないと意味がないし。


しかし、ミホも必死にシーツで体を隠している。

それを見て。

ケイトさんは目を吊り上げる。


「今日は、二人で一緒に寝なさい。これは、上官命令です」

突然、とんでもないことを言われてしまった。

モニターの向こうで、ミホが驚いているのが見える。


あきらかに戸惑っている。

俺も、慌てていた。


「起動実験中に、お互いを意識しすぎて、照れたり恥ずかしがられたら困るのよ。正確なデータが取れなくなるから。今日は、しっかりとハグして寝る事。いいわね」


それだけ言うと、俺たちはケイトさんにより施設から送り出されてしまう。



夜中になり。

誰もいなくなった部屋で、キーボードを必死に叩いているケイト。

「こんを詰めると、体、壊しますよ」

金髪のチャライ男が、そんなケイトの後ろから、飲み物を差し出す。


「ありがと。でもね。私もやってられないのよ」

「まぁ。ね。本来なら、、いや、失敬」

一度手を止め。

自分のショートの髪をかき上げる。

「こんな年増のおばさんよりは、彼も助かったと思うだろうけど。二人を見てると、意外とクルのよね」


「それで、最近、口数が増えたんっすか?」

その言葉に、渡された飲み物をぶちまけるケイト。

「あっつ! あっつっ! せっかく差し入れたのに、連れないじゃないっすか~」

「余計な事を言うからよ」

その言葉に両手を軽くあげる男。


「まぁ、体を壊さない程度に、やってくださいね」

そう言って部屋を出て行く男。

恐らく帰宅するのだろう。

「本当に。可愛げの無い。私も、、か」

そう呟くと、ケイトは再びモニターの前で作業を始めるのだった。

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