ごまかし
「動かせてます!」
本当に嬉しそうに明るい声を振りまいているシェミ。
本来なら、この辺りで暴走すると思うけど、僕との魔力制御の訓練の成果が出ているのか。
とってもスムーズに自動機構兵器を動かしているシェミ。
横から見ていても、安定しているように見える。
「大丈夫そうです」
ミホが太鼓判を押そうとした時。
突然、シェミの自動機構兵器がバランスを崩した。
「ええ、、なんで、、」
凄く寂しそうな、悲しい声が聞こえて来る。
「魔力調節を間違えたようです」
冷静に状況を報告するミホを後目に、足が反対側に折れ、動かなくなる自動機構兵器。
「ど、、、どうしたら、、、」
外にもれっぱなしになっている中。慌てた声が聞こえて来る。
僕は、前倒しに倒れる自動機構兵器を、支えてやる。
これくらいの小さい型の自動機構兵器なら、支えられると思えてしまった。
そう、道端のちょっと大きな石を、自分なら持てるよね確信できるくらいに。
「シェミ、とりあえず出て来て」
僕の声を聞いて、シェミがコクピットを開ける。
怒られると思っているのか、目を見開いて涙目になっているシェミ。
「怒る事はありません。けど、指導は必要ですね」
ミホが僕の隣で呟く。
それを聞いてしまった僕は、ロネに心の中で手を合わせてしまう。
シェミは、恐る恐る自動機構兵器から出て来る。
心配そうに顔を見て来る彼女に、僕は自然と微笑みかけていた。
「先生に、見つかりそうです」
ミホが小さく呟く声が聞こえる。
「ミホ。行くぞ。面倒な事になる前に、対処する」
僕の声に、小さく頷くミホ。
魔力を流して、ミホをスーツ化して僕は壊れた自動機構兵器に乗り込み。
彼女を避けて激しく横に倒れ込む。
「なんだ!何があった!」
先生方が、叫びながらこちらに駆け寄って来るのが分かる。
派手に、砂煙を上げて倒れ込んだ、偵察用の自動機構兵器の中で、僕はもう一つ残念な事に気が付いていた。
「焦ったのか、、力を入れ過ぎた、、みたい」
僕の手の中には、、自動機構兵器の操縦レバーがあった。
見事に引きちぎられた、、、
「どうして、そう言う事になるのか!」
先生の説教を聞く事になってしまった。
すでに、30分は怒られている。
まあ、、仕方ないといえば、仕方ない。
シェミと入れ替わった後、焦ったのか僕は力いっぱいレバーを引きながら動かしてしまった。
戦闘力36万の力で。
結果、レバーは耐えきれずに僕の手の中にずっといる事になってしまった。
今怒られている後ろで、一人の先生が、すごく落ち込んだ顔をしているのが見える。
もしかしたら、あの先生の自動機構兵器だったのかも知れない。
完全偵察特化の自動機構兵器なんてめずらしいから、この国の出身とかでは無い気がする。
「しばらく、シェミ君と、君は、実技をしなくてよろしい!」
先生から、温情?が与えられる。
戦闘経験まである僕としては、そのまま単位をもらえたら嬉しいけど。
「実技の単位は、卒業までには取り直してもらうからな。どこかの夏休みが無くなると思え」
温情じゃなく、講義出席停止らしかった。
「あの、、すみません」
校舎の外で、シェミとロネが俯いて立っていた。
罪悪感からか。僕たちを待っていたらしい。
「いや、気にしなくていいよ」
僕はシェミに気にしないように笑いかける。
「けど、けど、絶対私のせいで、シュウ君が怒られてたのですから」
「私も、魔力の制御が出来なかったせいで、こんな事になったし、、」
二人が、酷く落ち込んでいる。
けど、本当に気にしなくていいんだけど。僕がそんな事を思っていると、ミホが口を開く。
「気にするのは、おかしな話です。そもそも、魔力制御など、普通の人ができる事ではありません。
私も、シュウ様と、その師匠様以外、使える者を知らない程の技術です。使える方がおかしいとおもいます」
ミホ? 地味に、心をえぐりに来てない?
抗議の意味を込めて、ミホを見つめるが、ミホは、当然の事を言ったまでと言わんばかりに凛として立っている。
そんな所でも、昔のミホとの違いを見せつけられて、僕はため息を吐いていた。
前のミホなら、普通に謝るか、そもそもさっき言った事なんて、思っていても口には出さないと思う。
ミホが、ミホじゃない。
その違いの一つを突きつけれれて、もやもやしていると。
「それも分かってます!けど、やっぱり、あれだけ教えてもらったのに、全然出来て無い私が笑いのですから、、」
シェミが、必死にこちらを見ている。
「だから、、お礼と言うか、、お詫びに、、、今晩一緒におしゃくじでも、、、」
顔を真っ赤にして、こちらを見ているシェミ。
噛んだ事にも気が付いていない。
思わずの発言に、思わず吹き出しながら、僕はOKと返事をするのだった。




