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シェミの過去

「ありがとうございました」

シェミは、ベッドに座ったまま。

泣きはらした顔を隠す事もなく、こちらを見て笑っていた。

ロネが、蒼い顔をしたまま、そんなシェミを見つめている。

「あの、、」

「これから、ちょっとずつ、魔力の使い方を覚えていったらいいと思うよ」

これだけ強い魔力だ。

ミホが5万の魔力をまとっていた時は、魔力中毒になっていた。

シェミも魔力中毒の可能性がある。

そんな事を思い出していると、シュミが、おずおずと再び手を差し出して来る。

「あの、、、あらためて、、、お願いしてもいいですか?」

シェミの目が、少し泳いでいる。


まあ、放っておくわけにはいかない、、、よね。

僕はそんな彼女の手を取って微笑むのだった。





「えええ!18歳!?」

シェミの年齢を聞いて、思わずびっくりしてしまう。

シェミと、ロネは自分達より1個下だった。

「はい。ですから、、よろしくお願いしまう」


噛んだ。噛んだ気がする。

真っ赤になっているシェミ。

落ち着いているから、同年代か、上かと思っていた。

「これから、よろしくね」

大分調子が良くなったらしい。

シェミの代わりと言わんばかりに、ロネが笑いながら、手を出してくれる。

嫌ではない。

僕は彼女とも了承の握手をするのだった。





「検索できました」

二人が帰った後。

ミホが、僕の前に立ったまま話始める。


あれだけの魔力だ。

絶対に放置されていたわけじゃない。

シェミ。。彼女は訳アリだと思ってミホに検索をお願いしたら、シミ先生のデータにそれらしい子の話があったらしい。


「シェミ、、、シェミハザ・イェクン。 北の凍土地域にあるイェクン領のご令嬢です。しかし、シェミハザが5歳の時、イェクン領で、ささいな事件が起きています」

「事件?」

「領主、シェミハザのご両親が、ベッドから動けなくなったと。高名な医師を呼ぶも、まったく改善の余地が無く、死を待つだけだった時、一人の女性が現れ、彼女の魔力を封じて両親の症状は落ちついたようです」


「それは、、」

「はい、、シミ先生です」

「だよ、、ね」

「以後、成長してからシェミハザはこちらに留学して来たようです」

魔力を封じるとか、どんな方法かと思うけど、シミ先生はなんでもありだと思えてしまう。

ミホの知識の中にも、きちんとその方法があるのだけど。

はっきり言って、いつ爆発してもおかしくない危険な方法だった。

それよりも、、気になるのは、シェミの両親の症状だ。

「魔力中毒、、」

思い当たるのは、それくらいしかない。

「魔力にあてられたようです」

「ご令嬢、、、か」

ミホの返事に、 僕はまったく関係ない事を口に出していた。

「利用価値はあると思います」

ミホのその言葉に、思わず顔を上げる。

ミホは一切顔色を変えていない。

事実を述べただけと思っているようだ。

その変わらない表情が、酷く冷酷に見えてしまう。


「どうしたらいいと思う?」

ミホをまっすぐに見つめると。

「こちらに取り込むのもいいかと思います。今の私たちは、酷く不安定です。また、ユダ、ゼウスからも、敵対される可能性があります。さらには、、、」

「分かった。分かったよ」

ユダから逃げている以上、何をされるかは分からない。

モータスは、限界を超えて自動機構兵器を殲滅させてしまった。


「はっきり言いますと、世界中が敵です」

ミホの言葉は、どこか他人事のようにも聞こえてしまう。

「後ろ盾と、逃げ込める場所の確保は必要です。また、北の凍土地域は、、、」

「分ってるよ」

ミホの言葉を遮る。


北の凍土地域は、完全な中立地帯でどの国も戦争をしかける事がない地域だ。

なぜなら、そこには何も無いから。

「戦争をしても、領地を取っても何のメリットも無い。それが、あの国の防衛が出来てる理由っていう、不思議な国だからね」

静かに頷くミホ。


「あの家なら、身も隠せるか」

「最悪は、逃げ込めると思います」

僕は、ミホを見つめる。

ミホも、僕を見つめていた。


結局。

彼女を取り込む事にするしかなった。僕たちの身の保身のために。





「だから、もう少し、魔力を絞ってみて」

今日も、シェミの手を取りながら、魔力の流れを誘導する。

僕が使っているように、魔力を絞ったり、一気に放出したり。

魔力の形を変える。

それが、魔力制御。

「ええと、、、こう、、、ですか?」

顔を真っ赤にしながら、なんとか魔力を動かそうとするシェミ。

「シェミ、、、」

ロネが、心配そうに見ている。

「もう少し、流すね」

「いえ、、だいじょっ! はあっ」

色っぽいため息を吐くシェミ。

僕の魔力が、全身に流れて行く。

「あの、、これ、、、たぶん、、、私が、、、もたない、、かも、、」

シェミがとぎれとぎれながら僕に訴えてくる。

けど、一度流し始めたら、一定の時間までは止められない。

彼女の中に僕の魔力の塊が残ったらそれこそ大変だ。

「我慢してください。今、シェミさんの中には、7万以上のの魔力が流れています。魔力が溢れると、中毒症状になります」

ミホが冷静にシェミに話しかけている。


そう。ミホが魔力中毒になったのは、僕が魔力を回収しきれなかったから。

シェミの魔力を調律しながら、魔力に溺れてしまったミホや、沈みそうになっていたミホの事を僕は思い出していたのだった。




イェクン アザゼル、シェミハザを堕天させた悪魔

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