戦闘力 9!
検査室を出た僕に、クラスメイトの全員が、後ずさる。
いや、整備士や、補給などを行っていた基地の人達まで後ろに下がっていた。
「正直、、、どうしたらいいか、私たちも分からないわ」
検査室から出て来た瞬間にケイトさんは苦い顔をして僕を見る。
「とりあえず、、部隊長として、シュウ君、ミホ君には、謹慎を申し付ける」
カイダさんも苦しそうな顔で僕を見ていた。
「これは、、、正直、君たちをどうしたらいいか分からないと言う事だ。本部には、報告する義務があるが、おそらく、笑われて終わるだろう。だが、、みんなは、、見てしまっている」
カイダさんの口調から、チャラさが無くなっている。
クラスメイトの全員が、、ユウキと、アカリさえ、目を伏せて目を合わせてくれない。
まるで、悪魔を見ているようだ。
「まあ、、そうですよね」
僕は自分が吹き飛ばした壁を見る。
それは、まるで自動機構兵器で殴ったかのように、激しく吹き飛んで、瓦礫と化していた。
拳に魔力は一切込めていない。
そう。魔力に頼らず、自動機構兵器と同じ力が出せる人間を怖がらないわけもない。
「ケイトさん、、戦闘力、、いくらだったんですか?」
僕はケイトさんの目を見つめる。
「戦闘力、36万、2千8百、、、よ」
ありえない数字に笑うしかない。
「君には、申し訳ないが、、罪人用の首輪をしてもらう事になる。逆らえば爆発する首輪だ」
カイダさんが、こちらを見ている。
「人であるにも関わらず、人で無いモノ。君は、神血でも、生血でもない、、そう言わざるを得ない。そして、そんな君が、ここにいるためには、、それが必要なんだ、、」
そんな皆の顔を見まわす。
皆、恐れている。
自動機構兵器と同じ力を持つ人を。
もしかしたら、それ以上かも知れない人を。
皆見ている。
僕が、喜々として敵の自動機構兵器を爆散させていた事を。
僕は大きくため息を吐く。
「もし、、僕がここから出て行くと言ったら、、どうします?」
「引き留める事は出来ない、、ね。多分全員で抑え込んでも、君は抑えられない。こちらが殺されるのが目に見えている。君にしてみたら、僕たちは羽虫みたいな物だ。君が一振りしただけで吹き飛ぶだろう」
カイダさんの言葉に、自分がナニモノになってしまったのか、理解させられてしまった。
そして、僕が、ここにいられない事も。
「ミホ、、行くよ」
僕は、横でこの状況をずっと見ていただけのミホに声をかける。
「はい。分かりました」
ミホは、それだけの返事をする。
「スーツ化は出来ないのよ」
ケイトさんが声をかけてくるが。
「裏技、、ありますよね」
僕の言葉に、ケイトさんは泣きそうな顔をする。
ミホの時空間統制の記憶の中に入っていた知識。
「それは、、禁忌、、よ。誰もしてはいけない、神話の罪悪よ、、」
ケイトさんは泣きそうな顔をしている。出来るのか。いや、出来ると思っている顔だった。
僕は、無言でミホの手を掴む。
そのまま、魔力を流し込む。
バチバチと火花を上げ。
ミホが絶叫しながら、バラバラになって行く。
そう。
時空間統制と同時にミホの知識が同期されている今。
僕の中には、シミさんの、ハッキングの知識もあるのだ。
僕の中にある、ミホの生体ナノマシンが持つ知識が、同期された知識が、ミホを解体していく。
絶叫が止まった時、ミホは完全に紐状になっていた。
「シュウ、、君。。」
分かっている。
殺人、強姦。いや、、人として最低の事をやっている。
「ミホ。行くよ」
僕はそれだけ言うと、バラバラになったミホを身に纏う。
激しく火花を散らしながらスーツ化するミホ。
声すら上げれないほどの痛みが自分を襲う。
接続者の痛みは、支配者も共有する。
スーツ化すれば、それはさらに強くなる。
激しい痛みを感じる状態のまま、強制的にスーツ化したミホは話かける事すらしない。
「お世話になりました」
それだけ言うと、僕は自動機構兵器が発進するカタパルトへと走り出す。
「シュウ君!」
ケイトさんの声と同時に。
僕は、地面を蹴り。
空中へと飛んでいたのだった。
「空すら、飛べるのね、、、」
飛んで行った青年を見ながら、ケイトさんは、茫然としていた。
「僕は、、どうしたら良かったんだ」
ユウキが、拳を振り下ろす。
「私も、何もできなかったもの。ううん。たぶん、、誰も、何も出来なかったのよ」
アカリは、そんなユウキを優しく抱きしめている。
全員が、苦虫をかみつぶした顔をしたまま、飛んでいったクラスメイトを見つめていた。




