殺人機
黒い機体が疾走する。
目の前で、数体の自動機構兵器が爆散していく。
そう。切られたとか、そんな物じゃなく。破片をまき散らして消えて行く。
「ありえない!魔力石ごと、爆散とか、ふざけるなぁ!」
味方が爆散していく事で、冷静さを失ったのか。
敵のA級自動機構兵器が、突進してくるが。
「遅い」
僕はそれだけ呟き、その頭を握りつぶす。
魔力統制の発動のおかげで、僕と、ルシフェルの時間感覚は、3倍までに引きあがっている。
どんなに早い敵でも、全然目で追えるし、こうして捕まえる事も容易だった。
今まで僕を的代わりにしていた20体は、空中で花火になって消えている。
後から来ていた50体のうち、20体は、逃げ時を考えている。
「ありえない、ありえない」
茫然と呟いている敵のA級自動機構兵器。
「くそぉ!」
倒れていくA級にとどめの魔力を打ち込もうとした時、どこからか、叫び声が聞こえる。
ふと意識を向けると、ユウキの機体が、囲まれ始めていた。
ゆっくりと体を沈めるように体制を整え。
ユウキの方へと飛んで行く。
「た、、、たすかった、、の、、、か」
敵のA級自動機構兵器に乗っていた支配者は、泣きながら椅子に崩れ落ちる。
「ありえん、、、ありえん、、汚れた血に負けるなど、、、」
その支配者に接続されているはずの神血は、支配者の意思など無視して、ただひたすら呟いていたのだった。
次々に爆散していく敵の自動機構兵器。
それを茫然と見ているしかなかった。
「これが、、神機、、」
「扱って、、いるみたいね、、」
見る限り、今までのように、振り回されている感じはしない。
圧倒的強さ。圧倒的戦力。なのに。
「泣いているみたい、、」
アカリが、ぼそりと呟く。
「そうかい?」
ユウキはそんなアカリの言葉をあまり理解できない。
ただ、黒い機体は、黒い光となり、敵を花火へと変えていく。
黒い光の帯だけを残して。
「撤退!てったーい!」
120機ほど爆散した所で、敵の部隊に動きが出始める。
「隊長、、大丈夫ですか!」
敵のA級自動機構兵器にも、数機がとりつき。
両側から抱えるようにして、飛び立っていく。
「生き、、残れた、、」
誰かが呟く。
「生き残ったぞーーーー!」
誰かの叫びは、全員に広がり。
生徒全員で、叫んでいた。
「生き残れた、、」
「なんとか、、、ね」
カイダは、小さく呟き、ケイトも安堵のため息をつく。
片腕が潰れた蒼い自動機構兵器は、動かなくなっていた。
「ありえない、、ありえない、、、」
撤退しているというのに。
通信からは、絶望の声しか響いて来ない。
後ろから、黒い機体が追撃してきているのだ。
1体800
「なんで、負ける!!!」
納得できない。
しんがりを務めた100機は、すでに空中で塵と化している。
100機が、5分持たないだと!
桁が違う。
「あんな化け物だというのか!神機とは!!」
敵の隊長は、絶望の悲鳴を上げ続けるのだった。
敵を見つければ、殴り魔力を送り込む。
100万も送れば、一瞬で塵になる。
蹴りにも50万くらいこめてやれば、爆散していく。
面白くもない。アリを踏みつぶすように敵の自動機構兵器を消していく。
戦闘力 20!
200京の戦闘力をいかんなく発揮するルシフェル。
目の前の敵を叩き落とし、潰す事に集中するだけだ。
追撃戦はいまだ続いていた、、、。
300体も倒しただろうか。
「その辺にしておいてやれ」
一つに乗る、二つの命を握りつぶした時、目の前に黒と赤に彩られた機体が浮かんでいた。
ゆっくりとその機体を見上げる。
誰だか思い出せない。その魔力には確かに覚えがあるのだれど。
「返事は、、無し、、か。呑まれたか、、」
「魔力統制、時空間統制だけじゃ、ダメなのね」
「まがい物、、じゃないからな」
黒い機体は、ゆっくりとこちらに目標を定める。
「さて、、弟子の不始末は、師匠がなんとかしよう」
男はにやりと笑うと、黒と赤の機体を走らせる。
当たらない。
全ての攻撃が、当たらない。
それなのに。
「ぐはっ」
血を吐きながら、衝撃に耐える。
魔力盾を一点突破され、銃撃を受ける。
振り回した腕を掴まれ、吹き飛ばされる。
もちろん、追撃付きで。
空中で姿勢を変え突進すれば、さらりと受け流され膝蹴りをもらってしまう。
「死ぬなよ。弟子」
笑みすら浮かべながら。
アラキは、シュウをいたぶり続けるのだった。
何度目か。
地面に叩きつけてやる。
黒い機体が、ゆっくりと黒い光の球へと変わって行くのが見えた。
「やっと、、、か。タフすぎるだろ」
完全に息が上がっているアラキは、呆れた声を上げていた。
「これ以上は、こちらも危なかったわよ」
結構な数のアラームが鳴っているコクピットで、同じく呆れた声を上げる女性。
「後は、、彼女か」
「彼の選択次第ね、、、」
二人は、消えていく機体を見ながら大きく同時にため息を吐く。
「人として、、」
「それとも、道具として、、」




