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奪還作戦

「隊列を崩すな!魔力砲第二弾準備!」

ユダの自動機構兵器部隊が、全員巨大な砲台を空中で構える。


「魔力装填!砲撃開始!」

一斉に放たれた魔力砲が、遠くからでもはっきり見える大聖堂を燃え上がらせる。


「このまま、空中から突入するぞ!」

隊長の声に、全員から了解の通信が来る。


全く。

都市防衛のための部隊である自分達が攻めに出るとは、思いもしなかった。

「カイダには、あとでおごってもらわないとな」


それだけ言うと、レバーを握りなおす。

「あら。カイダだけじゃなくて、ケイトにもでしょ?」

恋人でもある、接続者が小さく声をかけて来る。

にやりと笑うと。

「ついでに、あの二人にもおごってもらおうか」

「新人いじめは怒られるわよ」

「知らねぇよ」


それだけ言うと、空中用の魔力スラスターを吹かす。

「一機残らず、突撃ぃ!」

その声に、全機が、大聖堂へと突っ込むのだった。



「派手にやるっすねぇ」

空中で魔力砲を打ちまくっている姿を見ながら、青い機体は地面に座ったままゆっくりとしていた。


「流石、【白雷】といったところかしらね」

「防衛隊のはずなのに、電撃戦が得意とか、分からない奴っすから」

カイダはそれだけ言うと、自分の機体に乗り込む。


「今回の作戦は、軍としてじゃなく、私事っすから、付き合う必要も無かったっす」

レバーを握りながら呟く。

「ほっとけないでしょ。バイクだけで、ここまで来ようとするとか、馬鹿でもしないわよ」

ケイトが、呆れた声を出す。

「空中のスラスターは、ニガテっすから、置いて行くっすよ」

「そうね。この機体はどこまで行っても、地上戦用だから」

どんどん起動していく青い自動機構兵器。


「ブルーサンダー行くっすよ」

「けど、あの子、大丈夫かしら」

空を気にするケイトに、カイダも思わず空を見る。


「多分大丈夫っすよ」

カイダはそれだけ言うと、自分の機体を滑らす。




「出力安定。なんか楽しい」

アカリの久しぶりのわくわくした声を聞きながら、ユウキは笑っていた。

今までずっと暗かったアカリの声が、久しぶりに透き通っている。


昨日、久しぶりに二人でゆっくり過ごしたのが良かったのかも知れない。

いや。

隣の一機が、空中で一瞬落ちているのを見ながら、ユウキは思い直す。


アカリは優秀な子だ。

そして。僕の大切な人なんだ。

二人がいなくなった事に、二人が連れ去らわれた事に、散々泣いたアカリをずっと慰めて。

彼女が居なくなったらと思うと、心が締め付けられる思いをした。


人に。生身に襲われると言う、とんでもなく怖い思いをしたにも関わらず。

二人を助けると言い切ったアカリを抱き絞めながら、自分よりずっと強い彼女に救われている自分を感じていた。

「助けるよ」

ユウキの声に、即返答するアカリ。


まったくブレる事も、速度が変わる事もなく赤い自動機構兵器は空を飛んでいた。




「一機!」

出て来た瞬間に、魔力砲に撃たれ撃墜されていくゼウスの自動機構兵器。


「二機目!」

アカリの声にすぐ反応し、二発目を放つ。

強力な魔力砲から放たれた魔力は、空中に飛びあがろうとしていた敵の機体を打ち抜いていた。


「バルカン帝国の技術はヤバイな」

隊長機でもある、白い機体から呆れたような通信が入る。


ユウキは超低空飛行から、3機目を切り裂き、上空へと飛び上がる。

アクロバット的な動きをしているのにも関わらず、アカリの補佐のおかげでまったく問題ない。

ユウキの役に立っていると、うきうきした気持ちになっているアカリを感じながら、レバーをさらに倒す。


4機目に目標を決めて突っ込んだ時。

突然、何かにぶつかり、はじかれる。


「何だ!」

全員がはじかれて、空中で止まっていると。

ゆっくりと揺れるカーテンのような光が、大聖堂を包み込む。


「盾か?」

「あんな巨大な物は知らん!」

「魔力シールドだろう!一斉射撃で抜ける!」

そんな通信を聞いていると。


突然、カーテンが伸びて、光の触手がムチのように伸びていく。

「回避!」

その言葉と同時に、触手に真っ二つにされる隊長機。


「ありえない」

そんな声だけを残して、ほぼ全ての機体が一瞬で叩き落とされていた。


呆気にとられるユウキの前で、大聖堂から一体の小さな小さな自動機構兵器が浮かんで来る。


巨大な光りの輪を背負い。

自分の2倍はある巨大な光の槍を持つ、4メートル程度の自動機構兵器。

その機体が目を上げた時。


全ての世界が真っ白に染まる。


激しい落雷に襲われながら、ユウキは地面に叩き落とされたのを感じていた。

「ありえない!なんなのあれ!」

アカリの悲鳴のような声が聞こえる。


ゆっくりと槍を構え。

投擲のモーションに入る。


「動いてぇ!」

アカリの悲鳴を聞きながら、槍が投げられるを見つめる事しか出来ないユウキ。


そして、その槍が自分を貫くと思った時。

目の前に、赤い盾が生まれていた。

盾と、槍が同時に消滅する。


魔力が割れて消える、幻想的な風景にも気が付かず。ユウキはもう一つの小さな機体を見つめていた。

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