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終らない戦い

「やるだけはやりましたよ!」

基地の中に入った僕たちが真っ先に聞いたのは、整備士の人たちのキラキラした目だった。


「一機で、数十機を落とした、伝説の機体を整備させていただけるなんて!本当に光栄です!」

興奮しながら叫ぶように報告してくる女の子もいる。


目の前には、膝をついたままの白い機体がある。

『偽の白磁』

そう名付けたその機体は明らかに今までは違っていた。


「コクピットは、ムーブトレース型に変更しました。さらには、バルカン帝国の使っていた、空中機動用のバックパックを付けてます。肝心の魔力循環器なのですが、、負荷がかかりすぎていたので、逆魔力循環器に変更してます。魔力動力は、そのままで使用しています」


そんな説明を、淡々と報告してくるベテランの男性整備士。となりでテンションが上がっている若い整備士の事など目にも入っていないようだった。

「各部の関節ですが、これも、バルカン帝国で使われていた、繊維式駆動関節を採用してみました」

そんな事を言われても、まったく分からない。

僕は、ただ、ありがとうとだけ伝えるのが精いっぱいだった。



「まったく」

まだ若いとも思える、30代前の整備士は、お礼だけ言って走っていく少年を見つめて呟く。

「人工繊維を使った関節、逆魔力循環器による、魔力圧縮機構。魔力動力に使われている魔石にいたっては、再生強化にて、2ランク性能が上昇してる始末。今までのユダの技術を全て捨てて、理論すら曲げて。これは、Aランク機体と言ってもいいくらいの、本気の試作機だよ」


白い機体を改めて見る。

「でも、これですら、蟻のような物なのだろうね。彼が乗る本当の機体に比べたら」

モニターで見ていた、神機と呼ばれる黒い機体を思い出す。


本当に存在するなんて、思いもしなかった。

神話の中にしか存在しない機体。

それが、目の前に現れ。


AAランクの自動機構兵器を瞬殺してしまったのだ。

「あれは、、あってはいけない機体だ」

あの時の黒い機体の動き。威力、速度を思い出し、ぶるっとくる震えを何とか抑える。

何十、何百回と自動機構兵器を見続けて来た。その上で本能で分かる事。

「あれは、世界を滅ぼすぞ」

整備士の男性は、少年が走っていった方を再び見つめる。


できれば、彼が再びあの機体に乗る事がありませんようにと。祈りのような思いを抱きながら。

「主任!カイダさんの機体があがりました!」

その言葉に、男性整備士は、ふと我に返る。


「分かった!魔力循環器の出力を上げておけ!」

男性整備士は、ゆっくりと向きを変えて歩き出すのだった。





「バルカン帝国は、平定できました」

軍部会議の一室にて。

「だが、緩衝地帯が無くなったため、宗教国家と隣り合ってしまいました」

その言葉に、会議に参加していて全員がため息を吐く。

宗教国家 ゼウス


「一番厄介な国ですな」

「向こうの出方を待ちたいところではあるが、そうも言ってはいられないようではある」


目の前の資料には、この前の戦いの最中。

つまりは、バルカン帝国を攻めている間に、大量の物資を確保し始めていた事を示していた。


「来ますかね?」

「絶対に来るな」


大将の言葉に、即答で返事をする総帥。

軍議に参加している全員が、再び引き締まった顔をしていたのだった。






「神の御使いの一つが見つかった!」

巨大な大聖堂の中。

一人の男性が、聖堂の中の人々に、いや、国中の人々に語り掛けている。

「神の御使いは、その使い道を知らぬ者に、勝手に扱われ、兵器として使われている!」

男性は、ゆっくりと手を振るう。

「ゼウス様は、その事に心底、心を痛めておられる!我々は、神の御使いを、この手に取り戻し、我が神、ゼウス様の元にお送りせねばならぬ!それが、我らの指名である!」

「さぁ!神の子よ!我らの神が、堕とされぬように!我らの神の御心のままに!」


男性は、いや、大司教は、ゆっくりと周りを見回す。

「これは、聖戦である!神のために!」


その言葉に、全員が手を組み。

静かに祈る。


大司教のみ動くその異様な空間で。

静かに新しい戦争が始まる。


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