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神機

『ルシファー転送終了』

空中に浮いた黒い穴は、未だに無数の赤い光を吸い込み続けている。

そう。敵の超弩級と言ってもいい自動機構兵器の攻撃を全て吸い込んでいるのだ。


ゆっくりと僕たちの前に出て来た黒い小さな機体は、胸を開く。

僕は、吸い込まれるようにその機体の中に入って行ったのだった。


『魔力統制を確認。魔力盾、魔力剣を解放可能。時空間統制確認。時空調整機能解放』

そんな声が聞こえて来る。

 ゆっくりと起動していく黒い自動機構兵器。


『魔力不足。さらなる魔力を』

その声に、僕はゆっくりと魔力を練り上げていく。


『魔力5万を確認。増幅器(ジェネレーター)起動。魔力20万まで増幅。起動開始』


一気にコクピットの中に魔力が溢れて行く。

ミホの溺れる声に、喘ぎ声がまぎれている気もするが、あえて気にしない事にする。


黒い自動機構兵器は、ゆっくりと空中に浮遊したままで、向きを変える。

360度モニターが起動。

超巨大な敵の自動機構兵器(オートモーター)が見えるが、動けなくなっている様子だった。


「敵の、、自動機構兵器、、魔力不足にて、起動停止、、」

ミホのとぎれとぎれの声が聞こえる。


「行くよ」

僕の声に、ミホの返事は無い。

多分、完全に魔力に溺れてる。


魔力統制から感じられる、コクピットの魔力は、20万を超えている。

なんで僕がその中で、溺れないのかは謎だけど体は軽い。


僕が小さくコクピットの床を蹴ると。

黒い自動機構兵器は、一気に飛び立つ。


一瞬で巨大な敵の目の前に来た僕は、軽く右手を振るう。

黒い光を纏った剣のその一撃で、巨大な自動機構兵器の巨大な腕が一瞬で落ちて行く。


「工程、、確認、、最速、、処理」

ミホの声が聞こえる。何か違和感がある。


しかし、深く考える時間は与えてくれない。

片手を落とされて、慌てたのか。

再び魔力を充填し始める敵の自動機構兵器。


「遅いね」

僕は小さく呟く。

魔力を一瞬だけ右手に通す。


抜き手で、敵を貫いた後。

魔力砲が内部で発動。

敵の背中を吹き飛ばし。

巨大な黒い光が空中に消えていった。


魔力砲(ハンドボム)、、15万にて発動、、敵を、、大破」

ミホ?


「敵、、沈黙、、」

「ミホ?ミホ!」

思わず叫ぶ僕。

おかしい。まるで感情が無い。

機械がしゃべっているかのような声。


「敵、反撃能力、、判定、、反撃能力あり、、追加、、攻撃、、、奨励」

「そんな事はいいから!ミホ!返事して!」

僕の必死の声も、ミホからは返事が無い。


目の前のAA級自動機構兵器が、光を帯び始める。

「くそっ!」

僕は悪態をつきながら、魔力盾を発動する。


黒い僕の自動機構兵器の胸が光り。

雨のような敵の魔力砲の全ての攻撃を魔力の光りが受け流す。

「魔力、、盾、、発動、、20%にて、、安定、、」

盾というより、バリアのようなその光を見ながら、僕はその場で蹴りを放つ。


蹴りにより、作られた魔力盾が弾き飛ばされて行き。

敵の自動機構兵器の胸に巨大な穴を開ける。


ついに、上半身が耐えれなくなったのか。

真っ二つになりながら、落ちて行く上半分と、頭を見る。

「敵、、沈黙、、反撃、、能力、、無し、、」


「敵は倒したよ!出るよ!開けて!」

僕はすぐに、コクピットを開けるようにミホに指示を出す。

しかし、コクピットは開かない。

「指示、、理解、、不能、、、残存、、多数、、離脱、、不能、、、」

「いいから!ここから出るの!」

必死にミホに訴えるが。


「自殺、、、保護、、システム、、起動、、自動、、離脱、、」

ミホが呟くと。

突然、コクピットの中が暗くなる。

「ミホ!ねぇ!何してるの?!」


ガコンと、何かを掴む音がして。

一気に飛び立つ音がする。


「ミホ!返事して!!」

僕の声は届かない。


すぐに、ガシャっという音がして。

「離脱、、終了、、工程、、終了、、、」

そんなミホの声とともに、コクピットが開く。


僕は、自分の体を抱き絞めながらコクピットを蹴って出る。

そうでもしないと、スーツになっているミホが、この機体に取り込まれてしまうような気がした。


地面に転がり落ちる。

すぐにスーツを解除するようにミホに伝える。

紐のようにばらけ。

目の前に、大好きな彼女が現れる。


「ミホ?ミホ!?」

思わず、その肩を掴んで揺らす。

ミホは返事がなく、目の光りも無い。

「ミホ?!」

何度か叫んだ時。

ミホの目に、光が戻る。

『怖い、怖い、、消える、、消えちゃう、、』

そんな感情が今頃になって僕の心を満たす。

思わす彼女を抱き絞める。

ゆっくりと彼女は、僕の体を抱きしめ。


「ミホ。。。。」

僕は思わず泣いていた。

その僕の背中に回した手に力が戻る。

「怖かった、、、、本当に怖かった、、、」

ミホが、泣いているのが分かる。

しっかり抱きしめながら、僕はミホのぬくもりを感じるのだった。



「何があったんだ?」

茫然としているユウキが、目の前の二人を見ている。

そんなユウキの肩を叩きながら。

「あれが、国がひた隠しにしたがっている機体。神機と呼ばれる機体だ」

カイダさんが、返事をする。

目の前にある、小さな小さな機体。

二人が乗っている自動機構兵器よりも明らかに小さい機体は、しかし圧倒的な強さを誇った。


二人が見ている前で、ゆっくりと黒い機体は揺らめきながらその姿を消して行く。

「AA級の自動機構兵器を、瞬殺。。ありえない機体。。あれが、神機。。」

スーツ姿を解除したケイトさんが、小さく呟く。


裸で抱き合っている二人を茫然と4人は見つめるのだった。

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