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束の間の平和

「もうちょっと優しくしてくれてもいいんじゃない?」

ミホが怒っている。


さっきまで二人で寝ていたのだが、突然アラームが鳴り。

思わず飛び起きてしまった時に、ミホがベッドから落ちてしまったのだ。


「ちょっと、シュウ? 痛いんですけど」

ベッドから落とされて怒っているミホは、僕が何かを見ている事に気が付き、僕の傍に座り直す。

「これ、、、緊急招集、、、、」


「無視、、、したいなぁ」

僕の呟きに、深く同意するミホ。


『緊急招集。第2小隊、全員集合。部隊長 カイダ」

と空中のモニターには映っている。


「まだ、偽の白磁は直ってないはずだから、出撃は無しかも」

そんな期待を抱きながら、ベッドから出る。

「派手に壊れてたから、無理だよね」

ミホも軍の服に袖を通しながら、僕と同じ考えのようだ。

嫌な思いを抱きながら、僕は仕方なく軍服に袖を通すのだった。




「突然だが、出撃命令だ」

カイダさんは僕たちの顔を見るなりそんな事を言う。


「何かあったんですか?」

ユウキが直立不動の姿勢のままでカイダさんに尋ねる。


「一時休戦から、2週間。学校の跡地にとんでもない物が持ち込まれた。これを破壊しろというのが今回の命令だ」


そう言いながら、カイダさんの後ろのモニターに、超巨大な自動機構兵器が映る。

50メートル級。


「大きい、、、」

アカリが呟くのが聞こえる。


「モニターごしだから、詳細は不明。だが、もしかしたら」

「A級の可能性、、」

僕の声に小さくうなづくカイダさん。


「今回の戦闘は、休戦中という事もあり、極秘任務となるそうだ。だが、あれが起動した日には、この辺りも全て更地になる。どうにかしろとの事だ」


諦め顔のカイダさん。

「今回は、潜入任務となる。この任務のためだけに、全機体のカラーリングを変えるし、敵味方の認証も解除するらしい。つまりは、仲間には、撃たれるなよ。と言うことだ。

いま、カラー変更と、設定変更は、ケイトがやってくれている。ただ、、シュウ」

カイダさんは、僕を見る。


「君の機体は、故障中。修理はまだ不可能との事で、軍上層部から、最新兵器が送られてきた。それに乗って欲しいとの事だ」


半分呆れた声のカイダさん。

「カイダさん。。。その後ろにあるのが、、最新兵器とか、、、ですか?」

ミホがおっかなびっくり尋ねる。


その問いに頷きで返すカイダさん。

「最新兵器って、、」

ユウキも、思わず呟く。


カイダさんの後ろにあったのは、両輪がキャタピラの少し大きめの車に、2連の砲台が付いた物。

「戦車とか、、どれだけ昔の古代兵器を掘り起こして来たんだ」

ユウキの言葉は、そのまま僕とミホの思いでもあった。



「これ、、、私たちには丁度いいかも」

ミホはスーツ姿のまま、僕の耳元で呟く。


『魔力石じゃなくて、昔の魔力循環器をそのまま乗っけているらしい。魔力増幅器は無しだ』

カイダさんがそんな事を言っていた気がする。


青から、真っ黒に塗装を変えたカイダさんの機体と、灰色から、深い深紅に塗り替えられたユウキの機体が先に走っている。


その後ろで戦車に乗って僕たちは走っているのだが。

「昔の魔力循環器って言ってたね」

「うん。魔力の上限がとんでもなく高いみたい。流石、激戦の時代の産物というべきなのかな」

僕たちは、ミホのスーツに直接、魔力循環器を繋いでいる状態で魔力を流し動かしているのだが。


「今、魔力は3千くらい流れてるけど、全然大丈夫みたい。けど、それ以上流さないでね。私が溺れ死んじゃうから。気持ちいいから、時々はやって欲しいヶド」

ミホの安心した声が聞こえて来る。とりあえず、最後の言葉は聞かなかった事にする。

魔力中毒になってないか、心配になる。


「昔の人の方が、魔力が高かったのかな」

「え?授業ちゃんと聞いてなかったでしょ?魔力を動力としていた初期の頃はとんでもなく魔力が高い人だけが、魔力駆動の兵器に乗っていたって。社会の授業の最初の最初よ?」

ミホが呆れた声を上げる。


戦争の歴史なんて、真剣に聞く気もなかったからなぁ。

そんな事を呟きながら、先に走る2機を追いかける。


暗闇の中で、ライトもつけずに地面を走る戦車。

真っ暗な世界なのに、ミホの魔力による周辺察知、地形処理能力のおかげで、障害物は僕の頭の中で、全部見えている。

キャタピラの音すら最低限にして最小限の音しか立てずに動く戦車。


時々、ガチャガチャと大きな音を立てているのは、ユウキと、カイダさんの機体の方だった。

「そろそろ、敵の索敵範囲に入るね」

ミホの言葉を聞いて、僕は魔力を一気に抑える。


魔力3千なんて垂れ流しにしていたら見つかりやすくなる。

普通の人なら、魔力制御なんて使えないから、気の回しすぎといえばそうなのだが。

それでも、優秀な支配者(ローダー)の3倍の魔力を流している事には変わりないのだから。


「ちょっとでも気を抜いたら一撃で死んじゃうね。私たち」

ミホが小さく呟く。

シーツが締まるのはいつもの事。

少しだけ。

ミホに魔力を流し。

「行くよ」

小さく呟く。


さっさと終わらせて、再びミホとゆっくり過ごしたい。

僕はそんな事を考えていたのだった。

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