表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/84

協議

少し前。

軍事国家 ユダの指令室の一室。


「何で勝てない!」

「武器の格差が大きすぎるのかと、、、」

「そんな事は知っている!だからこその軍事部だろう!」

大声で喚き散らしている男達。


その男を横目に見ながら、中央に座る男がゆっくりと口を開く。

「その辺にしておいてくれるかな。ディブロ中将。あまりわめくと君を最前線に送りたくなってしまう」

その言葉に、次の言葉が出なくなり、パクパクと口だけを動かし始める。


「で、、現状は?」

その一言に、全員の背筋が伸びる。


総統。そう言われる彼は、この国のトップである。

「前線は頑張って維持しておりまして、なんとか押し戻せる可能性を見出している最中だと、、」

一人が汗をかきながら報告するのだが。

「希望的観測や、君の意見は聞いていない。事実を教えてくれないかな」

にこやかな笑みでその報告を断ち切る。

まったく笑っていないその目に震えながら、自分の資料に目を落とす。


「西の、、前線ですが、2年の間で、緩衝地帯となっていた荒れ地と、湿地地帯が飲み込まれました。現在、最前線と化している都市、サイファにて戦闘が行われていますが、町そのものはほぼ壊滅。

敵の最前線基地の構築を許してしまっている状態です」


「完敗、、かね」

「押し込まれていますが、我が軍は、確実に敵機を落としており、、」

再び言い訳をしようとした将校を押さえ。

総統の横に座っていた男が口を開く。

「不器用な言い訳はやめたまえ。デイ准将。全ての責任を君に押し付けたくなる」

その言葉に再び口を閉じてしまう。


「大将。報告を」

総統の言葉に、デイ准将を黙らせたヒゲ面の男はデイ准将を見たまま口を開く。

「わが軍の自動機構兵器(オートモーター)の損傷は110機 敵の拿捕数は、30機。しかも一般兵だけという、歴史的な惨敗だという事だ」


その言葉に、デイ准将を見たまま総統が呟く。

「この結果の責任は君でいいのかね?デイ()()


足が震え、顔を真っ青にしたデイ准将はとりあえず資料に目を落とす。


圧倒的な武器の差が大きい。

こちらの射程外から、精密射撃をしてくる敵。

こちらの魔力剣を断ち切って、さらに機体まで真っ二つにしてしまう、魔力斧。

空中であるにも関わらず、右へ左へと簡単に移動してしまえる魔力ブースター。


どれも自分たちの国では作れない武器や装備である。


そんな時。

一人の兵士が指令室に入り、大将の耳に何かを耳打ちする。


その話を総統に耳打ちする大将。


しばらく総統は考え込み。決断をしたかのように顔を上げる。

その顔を見て、大将は小さくうなずく。


「敵が、休戦の打診をしてきた。第2隊が拿捕した隊長機と、隊長、その部下の機体と支配者(ローダー)を返して欲しいとの事だ」


全員がざわつく。

「捕虜にした隊長は、よっぽど慕われていたらしい。あと、その部下も最高支配者(トップローダー)の二人だったようだな」

その言葉にさらにざわめきが大きくなるが、その流れを片手を上げる事で押し黙らせる。大将。

「さらに、相手が拿捕したこちらの100機を返す代わりに、サイファの残り半分を寄越せと言ってきた」

「何を言う!」

「ふざけるな!」

そんな怒号が飛び交い出すが。


「この休戦に同意しようと私は思う。これ以上戦っても、こちらの被害が大きくなるだけだ。

自動機構兵器は、あと400機しかいない。2年で100機以上失っている以上、後5年も戦えないと言う計算になる」

その言葉に、全員の口が止まる。


「異論のある物は?」

総統のその言葉に、全員が下を向いてしまう。


「一時休戦だ。私たちは負けた。バルカン帝国という、小国にだ。これを教訓として欲しい」

総統はそれだけ言うと、席を立ち会議室から立ち去って行く。


大将もその後に続く。

「大将将軍。相手の狙いは、、、やっぱりアレか?」

「だと思われます。相手が特に欲しがっている範囲は学校を中心としているようです」

「神機、、、やはり欲するか」

「でなければ、これほどの電撃戦と大量の精鋭を送り込んでは来ないでしょう」

将軍の言葉にうっすらと笑う総統。

「しかし、あれはまだ私たちの手の中にある」

「はい。その通りです」


総統と将軍は、少し笑みを浮かべながら歩き続ける。

停戦協定の紙を見るために。



「お風呂くらい、なんとかしたいなぁ」

僕は部屋の中でぼそりと呟く。

トイレ、お風呂が共同という事で、ゆっくりとお風呂に入る事が出来ない事に少し嫌気がさしていた。


「スーツ化してあげるよ?」

ミホがにこやかに笑うけど、そっぽを向く。

いや、ミホと一緒にゆっくり入りたいんだよ。

そんな思いがミホにも分かったのか。


顔を真っ赤にして、彼女は僕の胸を押していた。

「変態」


そんな事を呟きながら。


停戦から1週間。

周りはまだ、悲しみにくれている。

今日も、大量の葬儀が行われている。


カイダさんから渡された名簿にいたっては、一目見てみるのを辞めてしまった。

なぜなら、僕たちがいた、特級クラスのざっと2,3割の名前に斜線が入っていたからだ。


「ご飯出来たよ」

ミホは笑顔で声をかけてくれる。

ミホもその名簿を見たのだが、すごく悲しい目をしていた。


「戦争、、、か」

棚の中に放り込まれたままになっている名簿を見ながら、僕は心底嫌気を覚えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ