本来の|偽の白磁《ダミードール》
「あっさり終わらして、ゆっくりするよ」
僕の声に、嬉しそうにスーツを揺らすミホ。
突然の攻撃に慌てて自分の機体を起動させ始めている二人を見ながら僕は目の前の敵に集中する。
魔力砲の赤い光が弾け飛ぶ中、もう片方の敵が、銃を持ち上げるのが遠距離ながらもうっすらと見える。
「来る!砲撃魔力1万8千!」
「余裕!」
ミホの声に咄嗟に返事を返しながら、二撃目の攻撃も魔力盾であっさりと受け止める。
バチバチと周りの地面は反射した魔力砲の残滓でいやな音を立てているが、気にもならない。僕の機体の腕がバリバリと音を立てているのはまぁ仕方ない。
カイダさんと、ユウキが銃を構えるのが見える。
「散開、、してほしいな」
ミホの呟きはそのまま僕の思いでもあった。
ミホの操縦ならまだしも、僕が動かす以上は、二人が邪魔になる時もありそうだ。
だけど、僕の魔力盾がある以上、二人は下手に動くという手は取らないと思う。
僕から離れたりしたら狙い撃ちされる可能性が高いから。
「この銃で、、狙えると思う?」
「無理。どんなに細くしても壊れる」
偽の白磁が持っている銃を持ち上げながら、ミホに聞いて見るもあっさりと否定される。
僕たちの機体の銃での反撃は無理そうだ。
相手の武器の方が何倍も高性能らしい。
少し残念に思っていると、突然、ユウキが反撃と言わんばかりに発砲した。
もちろん、まだ、当たるどころか、敵機に届く距離でもないのだが。
「ユウキ!早い!」
カイダさんの通信が聞こえて来る。
「シュウ君!強いのが来る!魔力砲2万!」
ミホが突然叫ぶ。
やばい。魔力盾で十分受け止められるけど、3回も受け止めれるだけの魔力を流し込むと、偽の白磁の腕が保たない。
僕は咄嗟に、銃を放り投げ。
両手に魔力剣を掴む。
「流し込む」
魔力剣に、細く細く。固く硬く魔力を込めていく。
「せいっ!」
僕が振るった魔力剣は、相手の魔力砲をあっさりと切り裂く。
拡散された魔力砲は辺りの地面を赤く染めていくが、僕たちの機体には一切触れる事も無く、魔力砲を切り裂ききったのだった。
「危なかった」
「敵機接近。Cランク下位の戦闘力。魔力斧装備」
僕が小さく呟くのと、ミホが敵の情報を教えてくれるのはほぼ同時だった。
「行くよ」
僕の声に。
ミホは頷くかのようにスーツを締め付けてくるのだった。
「なんだあれは?」
敵の自動機構兵器のパイロットは小さく呟く。
魔力の盾で受け止めるなど、今までなかった事だ。
だから敵の新型兵器かと思った。
しかし、今のは。
「切り裂いた、、、だと」
「魔力砲よ、、、最新鋭の、、」
接続者も、小さく呟くのが聞こえる。
「敵は手練れだ!十分距離を取りながら戦うぞ!」
その声に、反応した相方の機体が離れて行くのを感じながら、支配者は汗ばむ手でレバーを掴み直すのだった。
「ありえない!」
ユウキが思わず叫ぶ。
魔力で盾を作るなんて、考えた事も無かったのに。
さらには、魔力の砲撃を切り裂いて。
今も飛んでくる敵の魔力砲を軽々と躱して。
白い機体は無傷でそこに立っている。
「すごい、、、」
アカリが思わず呟いている。
それ以外、言える言葉も無い。
今、白い機体はゆっくりとその体を沈め始めていた。
「接敵まで、20秒」
ミホの報告が聞こえる。
2年前は、モニターの中にいろいろな数字がバラバラと出ていたが、今は全ての報告がカットされている。
敵の索敵、分析、機体の状況管理なんて、全部ミホに任せていられる。
目で見るより、直接教えてくれた方が早い。
さらには自分の頭の中にミホの解析した情報が直接流れてくる感覚もある。
僕の中にいるミホのナノマシンがそれを可能にしてくれるのだから。
ただ、ミホの感情も流れこんでくるけれど。
「来る。魔力砲1万5千」
ミホの緊張を感じながら、右へと飛ぶ事でギリギリで魔力砲を回避する。
「接敵まで10秒。敵が止まった」
「遠距離から、ちまちま来る気だね」
咄嗟に、ミホから、作戦が提案される。
こちらの考えもミホに伝わったらしい。
戸惑いが帰って来たけど、最終的に納得したらしい。
「行くよ」
僕は偽の白磁をゆっくりとかがませ。
それだけ言うと、魔力の一部を解放する。
バリッと激しい音を立てて、飛ぶ白い白磁。
空中でさらに魔力を解放。魔力統制で使える中の一つの技。空中移動。
再びバリッと機体から音がする中。
一撃で逃げ回る敵機を切り落とす。
斬り落とした機体の上半身を蹴り、方向転換。
「何て速さだよぉぉぉ!こいつ、化け物かよぉぉぉぉ!」
そんな叫び声を残して。
もう一機の足を斬り落とす。
「ありがとう」
ミホが呟く。
あえてコクピットを避けた事が分かったらしい。
僕も積極的に人殺しなんてしたくないもの。
地面に落下する2機を見ながら、着地する。
バリっと鈍い音を立てて足の関節部分が壊れるのを感じる。
「やっぱり、無理だよね」
僕の声に、、、
「うん。。。シュウが動かす事が無茶な事なんだと思う」
ミホも、笑いを含んだ声で返事をしてくれる。
いや、、、苦笑いだと思うけど。
ギュッと締め付けてくるスーツを感じながら。
疲れた声をしているミホをねぎらうように、スーツの胸をさする。
派手に着地失敗して倒れ込んだ機体の中で、とりあえず生き残れた事に二人でほっとするのだった。




